その日は一日中仕事に身が入らなかった。仕事が始まってしばらくは、麻美と真弓が揃って欠勤しているのを職場の上司や同僚が不審に思っていやしないかと気掛かりだったが、誰もそんな事を気にしておらず、いつもと変わらない職場風景だった。ただ、梓だけは文代が近くを通ると警戒するような表情になるのだった。文代の方は梓を狙っていながらも表面上は彼女に無関心を装っていた。そして机に向かって働いている間時々手を止めて、梓をアパートに連れて帰る計画を立てたり、今夜後輩三人と思い切り戯れる事を想像してパンティを濡らした。 昼休みに社員食堂で一人ぽつんとうどんをすすりながら、アパートに残してきた麻美と真弓の事を思ってほくそ笑み、又、やや離れ!
席で友人たちと喋りながら食べている梓を見ては鼓動を感じた。食べ終わってから梓に話し掛けようかと思ったものの友人たちの目があってやめる事にし、昼の勤務時間中にトイレで捕まえて今夜の件を脅迫しようと決めた。 梓は、文代先輩が再び自分を襲ってくるのではないかと内心警戒しており、トイレへ行くにも先輩の隙を見てからにしていた。事情が事情なだけに誰にも相談出来ず、忌まわしい記憶に悩まされるばかりだった。同僚の真弓と麻美が先輩のレズの毒牙に掛かり、そのアパートに監禁されているとは夢にも思わず、せめて二人が職場に居てくれれば・・・と残念がった。ただ、川口の存在はせめてもの慰めで、彼とは今夜洒落たレストランで夕食を共にする予定!
になっていた。お互いに気ごころが知れてい!
上に相手はどうやら自分に気があり、こちらも憎からず思っているのでこの関係は今後も続きそうで、もしかしてゴールインするかもしれないと思うのだった。女の幸せを掴もうとしている時にあんな変態婆あに邪魔されてたまるか!と思い、文代を心の中で罵倒した。 終業時間近くになっても梓を脅迫出来ず、文代は焦っていた。トイレ内が駄目なら・・・と、メモ用紙に、[仕事が終わったら私の所へ来なさい。従わないと、あんたがレズだと言いふらす]と脅迫文を走り書きして梓の事務机にこっそり置いた。それを読んで梓は先輩を睨み付けたが、文代は傲然と笑みを浮べて彼女を見返し、梓は思わず拳で机を力いっぱい叩いた。その音で職場内の皆が驚いてそちらに目をやっ!
た。「何だ、君!」課長に叱られ、他の社員たちからも変な目で見られて梓は怒りを鎮めるしかなかった。 終業のチャイムが鳴り、残業無しの金曜日という事で同僚たちは全員定時で仕事を終えた。文代は椅子に掛けて事務机の上を片付けながら時々梓の方を見た。梓は顔を強張らせて机に向かっており、一度だけ文代の方に視線を注いだ。そこへ川口良雄がやって来て、「さっきはどうしたんだい?びっくりしたよ」と真顔で尋ねた。「う、うん・・・」良雄を見ずに生返事をした。
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