牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
18時33分、仕事で疲れた体を引きずるようにして、いつもの車両に乗り込む。社会人になって3ヶ月…毎日の帰宅ラッシュにもそろそろ慣れはじめてきていた。車内に入って正面の開かないドアの脇に立つ。 そこがいつもの私のポジションだ。完全に許容量をオーバーしている電車のドアが無理矢理閉められ、ゆっくり動き出す。普段と変わらない日常。帰ったらシャワー浴びてビール飲んでご飯食べて寝よう。そんなことを考えていた。ふと、背後に妙な違和感を感じた。おしりに何かが触れる感覚…人の手だ。…ち、痴漢!?思わず体が硬直する。見知らぬ男の片手が、柔らかく包み込むように私のおしりをスカートごしに撫でている。あきらかに気のせいなんかじゃない。どうしよう…怖い…気持ち悪い…私は視線だけをそっと動かして下を見た。男は片手でおしりを撫で、もう片方の手に持った鞄を私の体に密着させている。横の人間に気付かれないように隠しているのだろう。車内は身動きがとれないほどに混雑していたが、私は何とか手を後ろにやり男の手を払いのけた。しかし、男は触ることをやめてくれはしない。顔をあげれば、ドアにうつる相手の顔が見えるはずだ。ちらっと視線だけで見上げると、男の鼻から下だけが見えた。30代のどこにでもいる普通のサラリーマン…男の口元がニヤリと笑った気がした。その瞬間、スカートの裾が持ち上がり、男の手が直に足に触れた。体がびくっと跳ねる。男の手には遠慮も躊躇もまったく感じられない。その手が徐々に前に周り、太もも全体をしつこく這いまわる。5本の指がまるでそれだけの生き物のように内ももをすーっと這いあがり、下着に到達した。嘘、やだ…っ!そんなの、聞いてない!以前、痴漢に遭ったことのある友達が「おしりを触られた」とは言っていた。でも、スカートの中に手を入れられるなんて…いやだ…怖い…ついに下着の上から指が押しあてられた。「ひっ」思わず小さく声が漏れる。周りに気付かれてはいないだろうか…。恥ずかしさのあまり俯いて必死に耐える。誰か助けて…!しかし、そんな心の叫びが伝わるはずもなく…1本の指が後ろから前、前から後ろへと何度も往復する。核心に触れるたびに小さな息が漏れる。私は立っているのがやっとだった。もう何も考えることはできなかった。男は私が抵抗できないと知って調子に乗ったのか、指の動きをどんどんエスカレートさせていった。爪をたて、突起の部分をひっかくようにして擦りあげる。相手が上手いのか、自分がおかしいのか、私は不覚にも感じてしまっていた。背後から回された男の腕にしがみつきながら、次々に迫り来る快感に耐える。既に液が溢れ出てきていた。その濡れた感触は、下着ごしに男の手にも伝わっているだろう。恥ずかしくて、情けなくて、でも気持ちよくて…もっと昇りつめたい、そう思ったとき、ふいに男の手が離れた。電車が駅に着いたらしい。背中のほうでドアの開く音がして、急に外の喧騒が流れこんできた。私はまだ頭がボーっとしていてそのまま立ち尽くしてしまっていると、耳元で初めて聞く男の声がした。「続きはまた明日ね」私は中途半端に放りだされた状態で3駅をやりすごし、やがて自分の降りる駅に着くといつもと同じ道を歩いて帰宅した。男の声が耳にこびりついている。続きはまた明日…怖かった。泣きそうだった。けれど…下着の上からしか触れてこなかった。丁寧で、けして乱暴にしてはこなかった。私はおかしいのかもしれない。また触られてもいい、触ってほしいと思ってしまっている自分がいた。とりあえずは早く家に帰って、疼く下半身を慰めたくて仕方なかった。そして…きっと明日も同じ電車に乗ってしまうのだろう。昨日は仕事で疲れていたはずなのに、興奮していたせいかろくに眠れなかった。家に帰ってすぐ下着を脱ぐと、まるでお漏らししたかのようにぐっしょりと濡れてしまっている。そしてその後、男の指の動きを思い出しながら2回もしてしまった。私おかしいのかな…。昨日のことを思い出してしまい、思わず赤面する。いけないいけない!仕事中に何てこと考えちゃってんの私!こんな日は時間がたつのが早く感じられるのは何でだろう。気がつくともう帰る時間だった。18時33分、いつもと同じ車両に当たり前のように乗り込む。この中に昨日の男がいる…?さりげなく辺りに視線を向けるが、いるかどうかはわからない。私はいつものポジションに立つ。すでに興奮している。今日は、昨日より少しだけ短めのスカートを穿いてきていた。ああ、何やってんだろ私…。ガタンガタン…電車が動き出す。昨日の男はまだ現れない。もしかしたら、今日は現れないかもしれない。ちょっとだけ期待してしまった自分が恥ずかしくなり、同時に安心したときだった。「そんなに触られたかったんだ?」聞き覚えのある低くかすれた声…昨日の男だ。言うが早いか、男は肩を使ってゆっくりと角に私を押し込め、昨日と同じ態勢になる。男の手が背後から下半身にのび…ると思っていた。しかし、予想ははずれた。男の手はシャツの裾から侵入し、ブラジャーを押し上げ、直に胸を包み込んだ。Aカップのほとんど無い膨らみを縦に横に揉みしだかれる。手つきは丁寧だったが、男は昨日よりずっと大胆だった。「ひ…ゃぁ」ため息と同時に小さな声が漏れる。男の指が胸の小さな突起に触れたのだ。やだ、他の人にばれちゃう…けれど、実際に周りの人はまったく気付いてはいないようだった。男は私の反応を楽しむように、つまんだり、つついたり、軽く爪を立てたりしてくる。すでに下半身が熱く疼きはじめていた。下も…触ってほしい…それが男にも伝わったのだろうか。男は胸を触るのをやめ、今度はスカートの中に手がのびてくる。私は、昨日とは違って強引な男の動きに何だか少し怖くなってきて、手を振り払った。いざとなったら逃げられると思っていた。優しくて紳士的なイメージを勝手に作り上げていたのかもしれない。けど…男は体全体で私を押さえこんでいて、男より小さい私は完全に角に隠れてしまっていた。逃げ場はすでにどこにも無かった。後悔してももう遅い。いつの間にか、男は両手で触っている。鞄で隠す必要はもうないのだろう。腰を掴まれ引き寄せられ、10本の指が下着の上から愛撫する。「ん…っ」息が荒くなる。男の腕にしがみつく手のひらにもじっとりと汗をかいていた。やがて男は片手で下着を横にずらし、直接触れてきた。うそ、やだ、ここ電車っ信じられない状況だったが、私はされるがままになるしかなかった。「こんなになっちゃって…いけない子だ」すでに液が太ももにまでつたってきていた。硬くなった部分を指の腹でこねくり回され、つままれ、爪を立てられ…私は電車内だということも忘れて叫びそうになった。「ぁ…ぅぁ…」あとちょっと、というところでふいに手が離れる。電車がゆっくり停車する。「今日はここまでだね」男が私の耳元でそう囁き、するり、と腕を抜こうとした。咄嗟のことだった。私は男の手を掴み、顔を上げ、ドアごしに男を見た。「行かないで…」私はほとんど無意識につぶやいていた。「続き…したいんだ?」私は頷いた。後ろでドアの開く音がして、人の波が動きだす。「おいで」着いていっちゃだめだ、と頭の中ではわかってるのに体がこのままではいられなかった。男は私を支えるようにしてゆっくり歩く。痴漢なんて最低な人間のすることだとずっと思っていたが、彼はそんな悪い人間には見えなかった。人気の少ない駅だった。駅員が見えなくなるのを待って、男子トイレに連れ込まれる。期待と不安とが入り交じる。今、この手を振り切って逃げることもできるはずだ。駅員に助けを求めようか…どうしよう…。悩んでいる間に個室に押し込められしまった。もう、後戻りはできない。鍵を閉めると男は私を座らせた。「随分えっちなんだね?」「昨日は帰ってからオナニーしたの?」「また触られたくって同じ車両に乗ったんでしょ?」私は必死に首を横に振る。否定できないことが恥ずかしくて、何もかも見透かされているようで、下腹部が熱く脈打つ。「どうしてほしいの?触ってほしいの?」極度の緊張と羞恥で言葉が出ない。「どうしてほしいのかちゃんと言ってごらん?」私は男のスーツの裾を強く掴んだ。「……って」「何?聞こえない」「……さわって…くだ…さい…」「じゃあ、自分で足開いて見せて」半分夢を見ているようだった。自分でスカートを捲くり、内股気味に小さく足を広げる。「どこを触ってほしいのか、自分で触って教えて」男の声や口調はとても優しいのに、従わざるをえない威圧感があった。私は早く触れてほしくてそっと自分の指を下着の上から這わせた。そこはすでに濡れて敏感になっていて、小さなため息が漏れてしまう。恥ずかしい。見られてるのに指が勝手に動いてしまう。「…ぁあ…はぁ…んっ…」「いつもそうやってしてるんだ?昨日は何回イッたの?」ふと我にかえる。「し…てないっ」嘘だってことは相手も気付いているだろう。「お、ねがぃ…早くさわって…ぇ」今まで扉に寄りかかって私を上から眺めていた男がようやく動く。私の額にそっとキスをすると、全身で覆いかぶさってきた。男の右手が下着ごしに触れると、体がびくっ、と跳ねる。布地を通して男の指の感触が伝わってくる。「や…ぁっ…ぁあぁぁ…っ」すでに限界が近かった私は、ほんの数秒で達してしまった。男は私の下着を取り外し、上も前をはだけさせられブラジャーが押し上げられる。半裸状態にさせられた私は、潤んだ目で男を見上げた。欲に満ちた男の目は暗く光っていて思わず恐怖を感じる。男の指が下半身の入口をこじ開ける。「ひ…ぁ」ぴちゃぴちゃと淫猥な音が響く。男は2本の指で中を激しく掻きまわす。「ぅ、あぅ…あぁっ」さらに男は胸に顔を寄せ、すでに尖っている突起に吸い付いた。「ひ…やぁあ…っ」上と下を同時に責められ、思考が麻痺していく。私は声を我慢することも忘れて男にしがみつき、快感の波に耐えていた。「たすけ…て…イッちゃ…う…よぉ」男はさらに激しく指を抜き差しする。足ががくがくと震え、瞬間私は大きくのけぞった。「んあぁあ…っ」達したばかりの体はぐったりと重く、乱れる息が止まらない。カチャカチャと男がベルトをはずす音が聞こえる。見れば、男の股間はスーツの上からでもはっきりとわかるぐらいに大きくなっていた。眼前に男のモノが突き付けられる。それは半端なく大きかった。私の動揺を無視して男は、すでに指で広げられた入口にあてがった。そこは充分に濡れていたが、反則に近い大きさのそれは簡単には入らない。「ぃやっ…そんな…の…入らな…いっ」男は指をクリトリスに這わせた。「ひゃ…ぅんっ」突然もたらされた刺激に体の力が抜ける。その瞬間を逃すまいと男は、腰をぐい、と押し付けてきた。男の熱く脈打つ欲望の塊が、メリメリと音を立てるように中に侵入してくる。「いゃああぁあ…っ」思わずばたつかせた手が男に押さえ付けられる。「これがほしかったんだろ?」「ちが…っや…いたぃ…よぉ…っ」「ほら、もっとほしいって言えよ」男は泣き叫ぶ私を無視して、ぐいぐいと自分の欲望を押し付けてくる。優しかった男の口調もいつの間にか乱暴なものになっていた。「ぃやあぁっ…苦しぃ…あっ…あっ」押さえ込まれて抵抗できない私はいやいやをするように首を振り、上半身を揺らす。「こんなに濡らしてヒクつかせて、いまさら暴れんじゃねえよ」男と繋がっている部分が見える。息もつけない早さで抜き差しされている。私は今、見知らぬ男に犯されている…。「あ…あ…あ…ぁあああああ…っ」裂けるような痛みまでもがやがて快感に変わり、私は大きく腰をのけぞらせて達した。同時に男のモノから熱い液体が迸しる。狭く密度の濃い空間に男女の乱れた息づかいだけが響く。男はトイレットペーパーで私を優しく拭き、乱れた着衣を元に戻す。「よかったよ」そう言って去っていく男の背中が見える。今ここで起きたことが、本当に現実なのかどうかもよくわからない。帰らなきゃ…。そう思ったが、私は座ったまましばらく動くことができなかった…。 ←クリックでランダムの記事が表示されます
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