狂女36_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

ホームページ 戻る 

狂女36

15-06-14 09:10

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「狂女」へ

『無邪気でいいな』
僕は横になってぼんやりテレビを見た。
時間が経つうちにいつしか目を閉じ、テレビの音声だけが部屋に流れていた。

それからどれくらい経ったのか、人の声がするので起き上がり、居間の戸が開いて母さんと敬子おばあさん、勝叔父さんの三人が現れたので驚いた。
関係がばれたのでは、と緊張している僕に構わずおばあさんが、「加奈」と実の娘に向かって声を掛けた。
加奈さんは相手が誰なのかわからない様子でいる。
「やっぱり駄目だね・・・」
「おまえ、ちょっと自分の部屋へ行っといで」
母さんに言われて僕は居間を出たが、気になって戸越で聞き耳を立てた。
「今更病院へ入れても治らないだろ?」
おばあさんが聞いた。
「でも、このままじゃ・・・」
母さんが答え、テレビが切られた。「まあね、治る見込みさえあれば・・・」
「それとも、やっぱりお母さんの所で世話をする?」
「うちは・・・」
「じゃあ、どうするのよ?」
「やっぱり俺が面倒見るよ」
「あんたは駄目」
「勝に任せてばかりじゃ可哀そうだから。昭子、おまえも少しは頼むよ」
返事が無い。
「妹じゃないか」
「生活がきついから」
「ふん、元々そんな気が無いくせに」
叔父の声だ。
そんな取り留めの無い会話が続いて僕は階段を上がって行った。
自室のベッドに仰向けになり、両手を頭の下にやって天井を眺めた。
自分と叔母の肉体関係が母さんとおばあさんに気付かれていないようでほっとしていたが、この先加奈さんはどうなるんだろうという不安が頭から離れず、三人の話を思い出しては、彼らが加奈さんに対してどう思っているのかを考えた。
『結局皆自分の事ばかり思っているんだなあ。もっとも、俺もそうだが』

そうしているうちに時間はどんどん過ぎていき、用を足しに行きたくなっていた時、階下から皆の声がはっきり聞こえてきた。
「じゃあお母さん、頼むね」
「ああ」
「「ほら加奈、行くよ」
「ううん」
僕は思わず起き上って階段を下りて行き、皆がいる玄関の方へ行った。
加奈さんが敬子おばあさんに連れられて外へ出ようとしており、僕は何も言えないまま母さんと叔父さんの後ろで呆然と突っ立っていた。
そして加奈さんたちの姿が見えなくなると、ふらふらとトイレに向かった。
『行っちゃった・・・』
気が抜けたように便座の蓋を開けた。
『ああ・・・』
加奈さんがおとなしく母親に付いていった事が裏切られた気もしていた。
勝叔父さんはその後も帰らず、居間に戻って母さんと何やら話し始めた。
僕が居間に入ろうとすると母さんは険しい表情で、「お前は部屋に行ってなさい」と叱るので仕方なく階段に向かったが、気になるので居間の近くまで戻って又聞き耳を立てた。

つづき「狂女37」へ


コメント
お名前:
気持ち:

コード:

お知らせ

なし

小説を検索