この話はつづきです。はじめから読まれる方は「願望が現実に変わる時」へ
秋村和恵は翌日平常心を装いながら出社し何食わぬ顔で業務を着実に遂行していく、あの忌まわしい過去のDVDを渡した山森達生は同じセクションに居るが何も秋村和恵には声を掛けてこない、そして何も起こらないまま1日の業務が終わり秋村和恵は家路へと向かいマンションの入口に入りエレベーターの前に立った時背後から声を掛けられては
「秋村主任!」
声の主は山森達生であった、和恵は山森達生の突然の出現に心臓が口から飛び出す程に驚いたが平常心を装った
「何故此処に居るの?」
和恵の声は震えていた
「何故って、其れは昨日のDVDの事ですよ!」
山森達生の悪びれる事のない態度と言葉に和恵は怒りを覚えその感情のまま睨み付け
「DVD?、あ~まだ見てないわ」
素っ気ない態度で答え山森達生の存在を無視する様に扉の開いたエレベーターへと乗り込もうとした
「あっそうですかまだ見てませんか」
山森達生が閉まり掛けた扉を両手で押さえ妨害した
「山森君!ちょっと止めなさい、人を呼ぶわよ!」
和恵の荒げた声に山森達生はおどける様に怯えた振りをし
「構いませんよ、人を呼びたければ呼んで下さい、その人にもコレをプレゼントしますから」
山森達生は背広のポケットからDVDを一枚取り出しニヤリと笑った
「さぁ早く人を呼んで下さいよ」
ニヤリと笑い凄む山森達生に和恵は唇を噛んだ、その姿に山森達生は軽く笑いエレベーターの中に入ると同時に扉が閉まり2人を乗せたエレベーターボックスは和恵への部屋までと運んで行った
「秋村主任、本当は見たんでしょ、コレ」
DVDを和恵の顔の前でチラ付かせ笑う山森達生に和恵は背を向けた
「秋村主任そんな態度とって良いんでしか?」
気味悪く笑う山森達生に和恵は渋々答えた
「何処でこんな物見つけたのよ!」
「矢っ張り見たんですね、さっきは知らないとか言ってたクセに」
山森達生は笑いながら和恵の顔に息が掛かる程顔を近づけてきた
「最低ね!」
和恵がそう言うと同時に扉が開き、和恵は足早にエレベーターを降り部屋の玄関前まで向かった、無論山森達生もその後を追った
「秋村主任、部屋に入れてくれますよね、コレの事も話さなきゃ成りませんから」
嬉々と笑う山森達生に和恵は渋々部屋に入れるしかなかった。
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