願望成熟_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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願望成熟

15-06-14 09:29

石村徳満は取引先の事務所で叱責され萎縮していた、いや本心から萎縮しているのではなく表面的にそう演技しているだけでもあった、徳満の前には仕入部部長の早河早苗が椅子に座り徳満を見下す眼で提出された見積もりをまるで汚い物でも触るかのように指先で摘み見ていた

「ねぇ石村さん、あんたの所さぁ、内の会社を馬鹿にしてない?」

早河早苗は見積もりひらひらさせ徳満になじる様に話し摘んだ見積書を床に投げ捨てた

「あんた所ねぇ、いつでも切ったって佳いのよ、大体こんな高い単価出して来てこれでお願いしますってどういう意味?、本当内の事馬鹿にしてるでしょ」

早苗は溜息を1つ吐くと徳満の方に目線を向け鼻で笑った

「ふんっ、こんな単価じゃ全く無理ね、悪いけど今回は違う所で仕入れさせて貰うわ!」

早苗は吐き捨てる様に言うと椅子から立ち上がり去ろうとした

「ちょっと待って下さい」

徳満が声を震わせ言った、その言葉に早苗は冷たい目線で徳満を見た

「何、まだ話しが有るの?、悪いけど私には用が無いんだけど」

早苗の態度と言葉に徳満は表面的な萎縮を止め素の感情を表せたそれは徳満のもう一つの顔でもあった

「早河部長、確かお約束した単価が有りましたね」

徳満の言葉に早苗は軽く笑い言葉を無視しようとした、しかし徳満の次の言葉に早苗は表情を一変させた

「確か約束した単価を出せば一年間取引すると仰って呉れましたね、何故ここに来て再見積もりを出させるんですか?」

「…えっ、あんた何言ってるの?、そんな話しそこら辺に幾らでも有るでしょ!、企業が生き残る為には安い所から仕入れする、当然でしょ?」

一瞬強張った表情から蔑む表情へと変え早苗はその場から立ち去ろとした

「そうですか、仕方有りませんね」

力無く答える徳満に早苗は軽く笑った

「判って呉れたみたいね」

「ぇぇ、よく判りました、只1つだけ良いですか?」

徳満の言葉に早苗は見下す眼で見た

「まだ有るの?」

「早河部長、夜は気を付けて下さいね」

徳満の言葉に早苗は怪訝な顔をした

「何?、脅しのつもり?」

早苗の言葉に徳満は不気味にニヤリと笑い後を惹く様に早苗を睨み付けたままオフィスを出て行った、早苗は徳満の態度に不快感を露わにした、しかし徳満の言葉が単なる脅しでない事を知るのはその日の事とは早苗には知る由もなかった、早苗は徳満の腹立たしい態度を我慢しながら1日の業務をこなし会社を出たのがいつもより遅い午後10時を過ぎていた、その頃になると早苗は徳満の言葉など既に忘れいつもの地下鉄に乗りないつも寄る弁当屋へ入りいつもの弁当を買い住むマンションの敷地内に入った途端背後から羽交い締めにされた、突然の事に早苗は声すらも出せず只手足をバタつかせるしか出来ずにいた、早苗はそのまま引き摺られワゴン車の中に連れ込まれた、其処で漸く悲鳴を挙げようとした時、鼻と口に何かで塞がれそのまま気を失った、ワゴン車は後部座席に早苗を乗せ暗闇の中に消えていった。

つづき「願望成熟(2)」へ


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