家出少女 5_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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家出少女 5

15-06-14 09:35

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「家出少女 1」へ

美月は、慎之介と婚約したことを何故か二人には話せないでいた。
「どうかしました?美月さん」
心なしか落ち込んでいるように見える美月に、星羅が声を掛ける。

「えっ、どうって、何が?」
「何がって、さっきからどう見たって塞ぎこんでるじゃない。
だから星羅だって心配してるんでしょ。何かあった?」
片付けをしていた春香も励ますようにフォローした。
「熱でもあるんですか?」
そう言いながら星羅が美月のおでこに自分のおでこをピタッと
くっ付けてきた。
「!!」
若い少女特有な爽やかな香りが鼻を掠めた。
「何でもないの。ただちょっと考え事をしていただけ。
本当に何でもないの」
慌てて美月は立ち上がるようにして、星羅の額から離れた。
心配そうに見つめていた目が瞬時にニコッと笑った。
「そう。よかった」
「あっ、うん。心配してくれてありがとうね」
「じゃあ、今日友達と買い物に行く約束しているから、
夜は遅くなると思う」
「うん、わかった。気をつけてね」
(あれ?何かいつもと雰囲気が違うような)
美月は星羅とのやり取りを冷たい表情で見守っていた春香に気付いた。
「ねっねえ、今日の星羅ちゃん、いつもと違う感じじゃなかった?」
「んっ?そっそうかしら?」
「あっ!服よ。そうだ。服装がいつものと違うんだわ。
高そうな服だったけど、買ったのかしら?
そう言えばあの子、家に来た時はほとんど荷物らしい荷物がなかったから。
服を買うお金持ってんのかしら?」
美月はこれまで大して疑問にも思っていなかったのが不思議なくらいだと首を傾げた。
(そう言えば、あの子のこと、私何も知らない。
どんな家で育って、どういった学生生活を送ってきたのか。
友達ってどういった友達なんだろう?親は心配してないの?
働いてる様子はないけど、今いくらぐらいお金持っているのかしら)
「さっ、さあ?あっ、洗い物さっさと済ませてしまおうっと」
明らかに春香は気まずそうにお茶を濁した。
(まさか春香があの服買ってあげたんだろうか?)
美月は洗い物をせっせとする春香の後姿を見つめた。

つづき「家出少女 6」へ


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