この話はつづきです。はじめから読まれる方は「まちがい電話」へ
電話での再会とは云え余りにも残酷であった数十年振りに言葉を交わす同級生が、間違い電話を掛けられた営業マン方や間違い電話を掛けた誘拐犯、余りにも立場が違い過ぎた
「なぁ晴美ちゃん、今何処だ此から会わないか」
塚本は明るい声で言った
「えっ…会うの、だってわたし誘拐犯よ、一緒に居たら迷惑掛けるわ」
影井晴美は遠慮がちに答えた
「迷惑?、もう迷惑掛けられてるよ、1つ迷惑掛けられるのも2つ迷惑掛けられるのも同じだよ!今更遠慮するなよ、俺の事どっかで視てるだろ?」
「うん見てるよ!何処に居るか判る?」
「いや判らない、俺が判ったらよっぽどドジな誘拐犯だぜ」
塚本の言葉に影井晴美が笑った
「本当層ね、でも本当に会っても佳いの?」
「俺が会おうって云ってるだぜ、晴美ちゃんはうんって!云えば佳いだけなんだよ!」
晴美は少し間を起き
「うん…今からそっちに…行くね!」
晴美は涙声に成っていた、そして10分位が過ぎた頃走る足音が近付いて来た、塚本は足音の方を振り向いた、其処には昔の面影が残る影井晴美の姿あった晴美は息を切らし塚本に駆け寄って来た
「塚本!あんた肥ったしょ!」
屈託無い笑顔で晴美が言った、塚本は照れ臭そうに頭を掻き
「いきなりそれかよ!でも晴美ちゃんは変わらないな!、羨ましいよ!」
「えー変わったよ~おばさんだし、それに…誘拐犯だし…」
俯き言った
「(深い溜め息を吐き)なぁ晴美ちゃん、子供は何処に居るんだい」
晴美は首を振った
「例えどんな姿であれ、親御さんに帰してあげよう、なぁ晴美ちゃん!!」
塚本は晴美を諭しながら言葉を選びながらゆっくりと時間を掛けて説得した
「(頷き)うん…判った、案内するから一緒に来て呉れる」
晴美が説得に応じたのは太陽が沈み満月の月が登っていた、塚本は晴美を営業車に乗せ晴美の道案内で2階建てのアパートに着いた、晴美は鉄骨の階段を登り一番奥の部屋の扉の鍵を開けた塚本は後に就いて行き最悪な事を頭に想定しながら部屋に入った、部屋の中では1人の老婆が粗末な台所で洗い物をしていた部屋中にカレーの匂いが立ち込めていた、傍らでは幼い2人の女の子がテレビに夢中に成っていた、振り向いた老婆が覚悟した顔で濡れた両手を前掛けで拭きながら塚本に土下座し身体を小さくさせながら
「申し訳ありません!本当に申し訳ありません!」何度も床に額を擦り着け塚本に謝罪し続けた
「母さん、違うのこの人は警察の人じゃ無いの」
晴美の言葉に老婆はそれでも謝り続けた
「晴美、やっぱり辞めよう!典子ちゃんを帰そう!もぅ…昔の事は母さん言わないから…だからこの子を彼奴の所へ帰そう!」
晴美の母親は晴美にすがり着き何度も同じ言葉を繰り返した
「何方か存じませんが、この子を親御さんの元へ送って貰えませんか」
晴美の母親は土下座し横で晴美が泣き崩れた
「お母さんどうしたの、なんでお母さん泣いてるの」
「亜紀子…ごめんね…」
つづき「まちがい電話(5)」へ
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