まちがい電話(3)_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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まちがい電話(3)

15-06-14 10:22

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「まちがい電話」へ

会社に行き朝の朝礼を終え、朝一番で住宅建設現場へ向かい現場担当者と資材搬入の打合せを終え、数件の顧客周りをし午前中が過ぎた午後からの予定は特に無く気に成る現場も無かったので骨休めでネットカフェに潜り込んだ、塚本は疲れが溜まるとネットカフェに潜り込み仮眠を取り鋭気を養う事にしていた

簡単に言えば単なる怠け者である、何時もネットカフェで何時もの個室に入りリクライニングシートを倒し毛布にくるまり深い眠りに就いた、そして突然ムクッと起き上がった、昨日の間違い電話が気に成った塚本はネットカフェを飛び出すと指定された河口公園へと車を走らせた、河口公園とは元々雑草だらけで何一つ整備されずに荒れ果てた川の土手を今から20年以上前に日本の政権が交代した時に各市町村にバラ撒かれた特別臨時給付金で整備された公園であった、特別な名前が無いのでいつの間にか河口公園と呼ぶように成っていた、塚本は公園の駐車場に車を停めエンジンを切った時計は午後3時に成ろうとしていた、塚本は周りを車内から見渡し不審人物不審車がないか周りを見た、他から見れば塚本が一番不審人物なのかも知れなかった、時計が3時を過ぎた時ダッシュボードの上に置いた携帯が鳴った、塚本は携帯を見ると昨日と同じ非通知着信であった、塚本は1つ深呼吸してから通話ボタンを押した
「もしもし」
塚本が声を発した
「約束通り来てるの」
女の声であった、昨日と違いコンピューター音声では無かった
「あの~…」塚本が間違い電話ですと言おうとした時
「喋らないで!佳いこと此からわたしの指示に従って、判った!」
女の声は少し震えていた
「じゃあ、佳い!お金をジャングルジムの真ん中に入れなさい!」
女の指示に塚本は車から降りるとジャングルジムの方に歩きながら周りを見渡した、近くで子供を遊ばせて居る母親達数人とベンチに座る年寄り夫婦しか確認出来なかった、塚本はジャングルジムの前まで着いた
「さあ!ジャングルジムの中にお金を入れなさい!」
明らかに何処かで塚本の事を確認している者が居るのは間違いなかった塚本孝史は女に向かって言った
「あんた、間違い電話してるぜ、俺には子供も居ないし嫁さんだって居ない独身者だぜ!」
「何ですって!?」
女は絶句した声を上げた
「俺はしがない営業マンだ、一億円なんて云う大金だって持ってない、悪い事は言わないからさ、子供を解放してあげなよ」
塚本の言葉に女は何も答えなかった
「警察には言わないからさ、誘拐した子供を親御さんに返してあげなよ、声の様子だとまだあんたは若いんだしやり直し出来るよ!」
塚本は額に汗を掻きながら女を説得した
「もう…遅いわ…遅いのよ!」
女の言葉に最悪な事が頭を過ぎった
「遅いって…まさか、まさかだろう!?」塚本の言葉が震えた
「大丈夫だよ!もし良かったら俺が一緒に警察に付き添おうか、まだ間に合うって!やり直し出来るって!」
必死に女を説得した
「貴男って佳い人ね、名前教えて」
「名前か?、直接会ったら教えるよ」
女がクスクスと笑った
「貴男ってわたしの知ってる男にソックリね」
「そうなの、どんな男なんだいその男って」
塚本も少し声が楽に成った
「中学の同級生なんだけどね、勉強は出来なかったんだけどね、優しい奴でさわたしが売春紛いな事をしようとしたらさ本気で怒ってさぁ、わたしに売春差せようとしたチンピラに土下座して手を切ってくれって…ボコボコに殴られてるのにずぅーと土下座してさぁ…チンピラわたしから離れて呉れたわ…」
女は少し涙声に成っていた、そして塚本が名前を言った
「もしかして、晴美ちゃん…影井晴美ちゃんなのか!?」
「…?…塚本、塚本孝史なの!?」
余りにも偶然で突然の再会であった

つづき「まちがい電話(4)」へ


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