第1章-クリムゾン・サンライズ
予定していた会議がキャンセルになったことが、気分と時間に余裕を生んだのだろう。 オフィス近くの書店でサッカーの雑誌を買い、お気に入りのカフェに立ち寄り、海外チームで活躍する日本人の特集を読む。
特集を斜め読みし、大きめのカップに半分残ったカプチーノが冷めた頃、モバイルを立ち上げ自らのブログに残されたコメントや訪問履歴をチェックする。
定期的に訪問する何人かのIDに混じり、最近良く目にし気になっていたIDを見つける。何故気になっているのか?アルファベットと数字の不規則な羅列のIDの中で意味を成す単語と数字の組み合わせのIDが目に付きやすかったのだろう。
「crimson_sunrise」-クリムゾン・サンライズ。 プロフィールを見ても女性であることを示す以外の情報は無いが、気になっていた。訪問頻度が高いことからブログの内容に関心があるのだろう。。。。ということはM性を持ってるのだろう、などと短絡的に考える。
そして、クリムゾン・サンライズと言うタイトルの曲を知っていた。バークリ-音楽院を卒業した実力派のミュージシャンで構成されるアメリカのグループの楽曲としてだ。
カフェを出て地下鉄を乗り継ぎ家路に付くと、何気無くパソコンを立ち上げメッセンジャーのオフラインメッセージを確認する。平日はほとんどしない行為であるが、なぜかクリムゾン・サンライズが気になっていたからだ。
予想が的中したのか、数行のオフラインメッセージが届いていた。正確に言えばリアルタイムに届きつつある。見ている間に行数が重ねられていたからだ。
『はじめまして、みほと申します。いつもブログを読ませていただいてます』
『グレッグ様はどんな男性なのか不思議です。乱暴な言葉遣いで悪ぶっているけど』
『ユーモアや知性も感じます、生意気言ってごめんなさい』
せっかくのリアルタイムだし、少しからかってみたい悪戯心が沸き上がった。
『それって、もちろん褒めてくれてるんだよな?』
『えっ、グレッグ様、いらしたんですか?』
『タイミングが良かったな。今、パソコンを立ち上げたばかりなんだ。それになんとなく予感がしたんだ』
『嬉しいです。ずっとお話したいと思ってましたけど、恥ずかしいのと勇気がなかったので』
『みほ、おまえのことはブログの訪問履歴で気になってた。おれをグレッグ様と呼ぶ女は、呼び捨てにされ、おまえと言われる。そのルールは知ってるな?』
『はい、ルールは知ってますし、私もグレッグ様にそう呼び掛けていただきたいと思ってました』
『そうか、それをおれに向かって言うのは私はM女と言ってるみたいなものだな』
『先程、予感がしたとおっしゃりましたが、どういうことでしょうか?』
『訪問履歴のクリムゾン・サンライズが気になっていた。近いうちにオフメが来るんじゃないかと思ってたんだ。だから予感と。。。。』
『何か心の中を読まれているようで嬉しいけど恥ずかしいです』
何気無い会話を重ねながら、みほの心を探り、望みを引き出してやろうと思っていた。
つづき「コンフェッション 第2章」へ
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