この話はつづきです。はじめから読まれる方は「樹里のおもちゃ 1」へ
樹里が家で一番イライラする相手が、トモキさんにかわったの。
トモキさんが部屋に入っちゃったら、また彼女とメールしてるんじゃないかってイライラする。
時々、部屋の前を通ってるときに着信音が聞こえたりしたら、樹里はすぐに部屋に飛び込んでケータイを取り上げたくなっちゃう。
パパとママは相変わらずのんきだから、
「今度彼女も家に連れてきてあげなさい。うちに泊まってもらえばいいじゃないか」
なんて言って笑ってる。
「でもお部屋は別べつよ、」
なんて冗談までつけちゃって。
樹里は本当に心の底からムカついたけど、顔では笑って
「樹里にお姉さんもできたみたいで嬉しい」
って言っておいたの。
「今は受験でおたがい大変ですから…」
なんてちょっと照れたみたいに言うトモキさんに、樹里、叫びだしてしまいそうだったの。
彼女は学校で生徒会の副会長をやってるみたい。もちろん、トモキさんが会長で、学校ではお似合いのカップルって言われてたんだって。
クラブも樹里と同じテニスをやっていて、県大会で優勝するぐらい上手だったって。
勉強もできるから、来年は一緒の大学を受けて将来は結婚する約束もしてるみたい。
「トモキくんの奥さんになる人は、うちの嫁も同然だな」
なんてパパは笑ってるけど、冗談じゃないわ。
樹里だって勉強は学校で一番をとってるし、テニス部の部長もしてる。
パパとママが安心できるように、女の子の友達としか遊ばないし門限だってやぶったことないのに。
トモキさんの彼女っていうだけで、樹里の家族みたいに話すのやめてほしい!
夏休みの前には、樹里、だんだん笑ってることがつらくなってきちゃったの。
その日は最後の大会前の練習で疲れちゃって、樹里は早めに家に帰ったの。
パパもママも出かけていなくてお迎えがなかったから、駅から歩いて汗だらけ。
玄関からそのままお風呂に行って、シャワーをあびたの。
終わってから洗面所に出たのと、トモキさんが帰ってきてすぐの樹里みたいに顔中汗を流して洗面所に入ってきたのが同時だったの。
「あ!ごめん!」
トモキさんはびっくりしたみたいにすぐドアの向こうに消えちゃったけど、樹里にはすごく長い時間がたったみたいだった。
だって、トモキさんの目が樹里の顔を見たあと、胸を見て、それからおへその辺りを見たの、樹里、気づいちゃったから。
樹里、ぜんぜんイヤじゃなかった。
それどころか、もう一回トモキさんに見てほしいぐらいだった。
その時から、樹里の心臓がドキドキしてとまらなくなったの。
夕食の前に、パパやママに気づかれないようにトモキさんが謝ってきたの。
「樹里ちゃん、さっき本当にごめんね、誰もいないと思ってて。」
「ううん、びっくりしたけど…トモキさんすぐ閉めてくれたし…」
樹里、目は床にむけて話してた。だって、顔をあげたら嬉しそうにしてるのがバレちゃいそうだったから。
こういう時は困った顔をしないといけないのに。
樹里の心臓がドキドキしたまま止まらないの。
「もう絶対しないよう気をつけるからね」
トモキさんはもう1回真剣な声で謝ってから、ママの手伝いをしにキッチンに入って行っちゃった。
トモキさんの汗のにおい。横を通るときに樹里わかっちゃった。
樹里、それだけで顔が熱くなったの。
樹里とトモキさんの秘密ができたみたいで、心がどこかに飛んでいきそうなぐらいドキドキしたの。
でも夜になって、またトモキさんがメールしてるんじゃないかってイライラしてたときに樹里、ふと思ったの。
トモキさんは彼女の裸も見たことあるのかもって。
そう思いついたあとは、もう地獄に落ちたみたいにドロドロした気分になったの。
キスとかエッチもたくさんしてたのかもしれないし、もしかしたら樹里と彼女の裸を頭の中で比べてみたんじゃないかって…。
樹里、気が狂いそうになっちゃった。
胸がぎゅうぎゅう苦しくて、涙がどんどん出てくるの。
樹里、もうどうしていいのかわからなくなっちゃって、夜は全然眠れなかったの。
つづき「樹里のおもちゃ 3」へ
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