タチとネコの関係 11_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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タチとネコの関係 11

15-06-14 10:57

この話はつづきです。はじめから読まれる方は「タチとネコの関係」へ

その日、凛は焦っていた。なかなか仕事が捗らない。今日中にどうしても
仕上げておかなければならない仕事があるのに、上手く事が運ばない。

そしてこういう日に限ってみんな帰りが早かった。初音も実家に用があるらしく、
早々と帰っていった。何時しかオフィスは凛だけになってしまった。
そうなってみると今迄の不調が嘘のように不思議と仕事が捗った。集中力が漲り
面白いように仕事が進んだ。昼間、あんなにいい天気だったのにいつの間にか
外は大雨になっていることすら気付かなかった。

ピカッ!ゴロゴロゴロゴロ~

突然の雷にようやく外が荒れていることに気付いた。
(やだ。ちょっと怖い。早く終わらせなきゃ)
オフィスで一人きりでいることに少し不安なった。もう時計は9時を指している。
気味の悪さを感じつつも残りが見えてきた時、突然扉が開いた。
ビクッ
思わず体を飛び跳ねるように驚き扉の方に目を向けた。
「あら、まだ残ってたの」
びしょ濡れの田所部長だった。

田所の視線が痛いほど突き刺さる。
帰ってきて自分の部屋に入るわけでもなく、水野主任の席に座り濡れた髪を
タオルで拭いている。そして先程から無言のままジッとまるで語りかけるような
視線を凛に送ってくるのだ。二人がベッドを共にしたのは2週間前のこと。
あれ以来、田所から誘ってくる気配もなく、凛も必要以上に田所に近づかなかった。
だが今は夜のオフィスで2人きり。恋人では決してないが、つい最近肉体関係を
結んだ者同志、この状況を意識しない方が不自然だった。妖しい視線に凛の
危機感が徐々に増してくる。かなりやばい雰囲気に思わず声が上ずってしまった。
「何ですか?何か御用でしょうか?」
パソコンの画面を見つめたまま、凛は出来うる限りの冷静な口調で田所を牽制した。
「・・・」
その問いに答えず、目を細め微かに口元を緩ませたかと思うとそのまま田所は
自分の部屋に入っていった。
(ホッ、意識し過ぎだったようね)
早く終わらせようと再び仕事に集中した。
凛がようやく仕事を終えようとした時、部長室から自分を呼ぶ声がした。
「一の瀬さん、ちょっとこっちへ」
警戒しつつそのまま帰るわけもいかず、凛は部長室に入っていった。
「何でしょうか。私もそろそろ帰ろうとしていたところですので」
「昨日出してもらった計算書、まだまだ甘いわよ」
「えっ?そんなはずは・・・」
扉のすぐ側に立っていた凛が、立派な椅子に座った田所の方へ歩み寄ろうとした時、
それより一瞬早くスッと立ち上がった田所が、凛に見えるように書類を突き出したまま
近付いて来た。そしてあまりの勢いに思わず1歩退いてしまった凛を扉に追い詰めると、
空いている方の手でさり気なくそのドアをロックした。

つづき「タチとネコの関係 12」へ


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