牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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15-06-14 10:59
片田舎の農村には若い男の姿がほとんど見当たらない。
農作業は老人とごくわずかな主婦となった今、将来の展望もなく寂れゆくのは目に見えていた。
夜近くなるとほとんど人影はうせ農家に灯されるわずかな明かりが寂しかった。
道村鈴江51歳、昨年夫を出稼ぎ先で亡く今は年老いた舅の正之助とふたり所帯である。
一人娘は埼玉の狭山に嫁がせた昭和40年6月の頃である。
ジャガイモの収穫に追われたこの日も、汗だくの鈴江は夕食を済ませて、もらい風呂へ向かったのは9時を廻っていた。
細い農道を少し歩けば隣の家はすぐである、ここには40ほどの目の不自由な男と老婆の八重であった。
「こんばんわ、お風呂戴きます」 「ああ、ごゆっくり」八重の声が帰ってきた。
田舎の風呂場は便所と納屋が隣り合わせである。
浴衣姿の鈴江は下駄を鳴らしながら風呂場に向かった。
風呂場の木戸を開けると脱衣場と洗い場が隣り合わせの狭い風呂である、檜造りの浴槽は相当古いものである。
鈴江は換えの下着をハコに入れると浴衣をさらりと脱いだ。
まばゆいほどの白い肌、はちきれそうな尻がわずかな風呂場の明かりで浮かんだ。
洗い場に方膝付いて、桶からかけ湯を流すと肌の脂にはじかれた湯が音を立てて流れた。
風呂桶に身体を沈ませると豊満な身体から溢れ出た湯が洗い場に流れて土管の吸い込み口に注がれていく。
「いい湯だわ・・・」
目を閉じて疲れを癒す鈴江は髪を丸め上げた。
洗い場の腰掛は鈴江が腰を下ろすと小さく見える、これも鈴江の尻の大きさからそう見えた。
石鹸で泡立てて首から胸、腿、背と洗い進める、そんな光景がガラス窓から見えるが覗き見る男が近所にはいない。
この家の男はそれが出来ない。
40ともなればまだまだ性欲の盛んな年頃である、だからこの男、こっそり納屋に忍んで音だけで想像するのである。
しかしこの男 正夫は、鍼灸の技とマッサージをたしなむ男である。
鈴江が腰痛で、もらい風呂の後に正夫の部屋に足を入れたのはその数日後の事であった。
つづき「後家の疼き 2」へ
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