【可憐な一輪の花、玲菜】_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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【可憐な一輪の花、玲菜】

15-06-14 11:21

雨は時に人を・・・センセーショナルで甘美な感情を抱くものへと変貌させる魔力を秘めている―――

玲菜に初めて逢ったのは、真夏の暑さがねっとりと体に纏わりつく様な夜の、どしゃぶりの雨の日だった。
私は、深夜に何故かフルーツヨーグルトが無性に食べたくなり、近所のコンビニに軽装で出掛けた。

湿気を帯びた嫌な空気が急な雨を予想させたが、私は近所だからと高を括って傘を持たずに、ミュールをカンカンと鳴らして
アパートの階段を降りて行った。

無愛想且つ、マニュアル通りの口調でレジをこなす若い男性店員に心でため息をつきながら、お目当ての品を
手に家路を急いだ。

最初はポツポツと小雨が降ってきたなと思っていたが、それはやがてどしゃぶりとなって、私の足と共に、先に進む意思をもブロックした。

「もぅーーーなによっ!突然降り出すなんて反則じゃん!」
自分勝手な文句を吐き出しながら私はどこか雨宿りできる場所はないかと、キョロキョロと辺りを見渡し、羽織ってきたカーデガンで頭を覆い
ながら何とか高架下を見つけ、早足で逃げ込んだ。

「あーーあ・・・びっちょりだよぅ・・・さむっ!・・・早く雨、止まないかなぁ・・・」
そんな他愛無いことをぼんやり考えながら、濡れた体をハンカチで拭っていた。
「あのぅ・・・もし良かったら、一緒にはいっていきませんか?」

美人と言うよりは、どこか愛らしさと幼さを残した20歳前後とおぼしき女性で、肩も腰も華奢で繊細な印象を受けた。
薄化粧だが、目や眉のくっきりした・・・それでいて人目を引くと思わせるだけの魅力に彼女は溢れていた。
淡いピンクのグロスだけが塗られた唇は妙に艶っぽく、同性から見てもドキっとさせられるほどだった。

「えっとぅ・・・いいんでしょうか?私としてはとっても嬉しいんですけど・・・あっと、私・・・あさみって言います。この近所にお住まいですか?」
「え?ええ・・・まぁ・・・。私は玲菜って言います。大学生してます。お姉さんも・・・この近所なんですか?これ良かったら使って下さい。」
そっとハンドタオルをさりげなく差し出してくれた。

片方の手で玲菜の薄手の真っ白なブラウスの中に息づく、形の良い柔らかな乳房を揉みしだきながら、
硬くしこった可憐な乳首を二本の指の腹で擦ったり摘んだりした。
「玲菜のおっぱい、可愛いね・・・ほら?もうこんなに乳首も硬くなって起ってるよっ!一杯感じてくれてるんだぁ・・・
気持ち良くさせてあげるからね!玲菜のいやらしいイキ顔見せて欲しいなぁ・・・」
私はぐちゅぐちゅと卑猥な音を一層加速させながら、蜜壷の中の指を一層激しく動かした。乳首への愛撫も
入念にしながら・・・
「もうっ・・・もうダメぇーーあんっ!玲菜・・・イキそうなの・・・気持ちいいのっ・・・あうぅぅぅ・・・・イクぅぅーー!!」
玲菜は何度もビクンビクンっと体を跳ねながら、生脚を痙攣させて達してしまった。

私は普段の清楚な彼女も、今目の前にいる妖艶な魅力に溢れた彼女も全てが愛しく、ずっとこの先も一緒に
彼女と時を重ねていけたらと、心の底から強く感じ余韻に浸っていた―――
不意に風に押されたのか、白く靄っていた霧が流されていった。
「大好きなあさみお姉さんには私の負の部分も含めて全てを知ってて
もらいたいから・・話しておきたい事があるの・・・」
戸惑う表情の中にも凛とした強い意志が垣間見え、楚々とした外見とは異なる彼女の潔さみたいなものに
私はきっと惹かれたんだな・・・とそう素直に思った。
「昔ね・・・玲菜が高校に上がったばっかの頃・・・姉の彼氏が学校帰りに車で待ち伏せしてたみたいで・・・
お姉さんの事で大事な話があるからって、でもワナだったんだ。そのまま強引に・・・初めてだったしショックも大きくて・・・
それ以来、男性が近寄るだけでもあの忌まわしさがフラッシュバックされて体が震えてしまって・・・」
そう俯きながら訥々と語る玲菜の瞳からぽろりと落ちた雫が、彼女の淡い桜色のスカートに小さな斑点を描いた。
そんな玲菜がたまらなく愛しくて・・・彼女が背負ってきた心の深淵を覗き見てしまったような錯覚を覚え、胸を
掻き毟られる程の痛みと衝撃を受けた―――
不意に、水面に波紋が広がった・・・徐々に小さな輪から大きな輪へと。私の玲菜への気持ちと連動するように・・・
水面に少し身を乗り出すように見入ってしまい、ボートがゆらゆらと揺れ、嫌々をした。
「そんな辛い過去があったんだね・・・正直に話してくれてありがとっ。凄く嬉しかった・・・これからは私が玲菜の
辛さも哀しみも全部背負っていってあげるから!二人一緒だったら乗り越えられるから・・・大好きだよっ!玲菜・・・」

群青色の湖面に咲いた可憐な一輪の白き花に、私は心からのキスを再び落とした。

蒼白い満月の淡い光の下、私は二人の確かで永遠の愛を密かに祈った―――

【了】                               七瀬涼香

「うん、そうそう・・・この格好見たら・・・遠くから来たって思えないよね?そりゃ・・・。タオル、ありがとね!たすかるわぁ・・・」
クスっと悪戯っぽく、可愛らしい笑顔を見せた彼女に、私は二度目のドキっを感じてしまっていた。
都会のカオスの闇に咲いた、可憐な一輪の白い花・・・そんな印象的な何かを彼女は持っていた。

「お姉さんって・・・運命って信じますか?いきなりですいません・・・」
「いいよぅー気にしなくて・・・運命かぁ・・・私ってこう見えて結構ロマンチストだったりするから、信じる方かも」
「私も・・・運命って・・・この世で起こる全ての事柄って、全て必然だと思うんですよね・・・シンクロニシティーって言うのかな?」
そう俯き加減で澄んだ声で呟く彼女には、まさに儚さと脆さが同居しているかに思えた。

「シンクロかぁ・・・そうだね。運命を自身の力でより良い方向に手繰り寄せられたら幸せな事だよね・・・最近いい事ないから・・・」
「同感です・・・ほんとに、既に決まってしまっている運命を自らの手で変える事ができたら・・・」
そう言ったまま彼女は黙り込んでしまった・・・・
「だいじょうぶ?ごめん・・・私、何か変な事言っちゃったかな?ほんと、がさつでダメなんだよねーー私って。」
寂しげな表情の彼女が何だか愛しいような母性本能がくすぐられたのか、彼女の栗色の柔らかそうな髪を優しく撫でて顔を近づけてみた。
柑橘系の爽やかな香が鼻腔をくすぐった―――

いつしか激しい雨は、弱々しい小雨へと変わり、優しい旋律を奏でる雨音に、私は安堵と入り混じって不思議な感覚に全身を支配されつつあった・・・・
玲菜の小花模様の乙女チックな傘に仲良くおさまり、私達は濡れたアスファルトの上をおしゃべりしながら
歩き出した。

「中々止まないね~、あっと・・・そこの角を曲がったとこが家だから・・・家って言っても一人暮らししてる、
質素なアパート暮らしだけどねっ。玲菜ちゃんのお陰でほんっと助かったよ!ありがとね。走ってくからもういいよ、
夜道は危ないから気を付けて帰ってねっ」
玲菜は何故か沈んだような、寂し気な表情で私の顔をじっと見つめていた。
「私・・・このまま家には帰りたくないです・・・お姉さんとこ寄って行ったらだめですか?・・・・」
アーモンド型の潤んだ瞳に私が映って、そのまま彼女の瞳の中に吸い込まれてしまいそうになった。
「えっとぅ・・・あのね、玲菜ちゃん。お姉さんとこ部屋汚いんだよね・・・とてもお見せ出来る代物じゃなくって・・・
ごめんね!今度絶対埋め合わせするから!約束するっ、またメールするね♪じゃっ・・・おやすみっ」
エイっ!と彼女の愛らしい傘から飛び出して、足元が濡れるのもお構い無しに、私は何かを吹っ切るように
後ろを振り返らずに駆け出した―――

角を曲がったところで、民家の塀からそーーっと彼女の様子を窺ってみた。
華奢な肩が小刻みに震えてるように見え、私は後悔の念で一杯になった。

(ごめん・・・玲菜ちゃん。もしあのまま・・・狭い部屋に二人っ切りにでもなったら・・・私のこのドックンドックン
鳴り響いてる心臓の鼓動聞かれちゃいそうで怖かったんだ。何でだろう・・・彼女は女で私も女・・・
なのに何でこんなにもときめいてる?どうかしちゃったんかな?私・・・)

ラビリンスに迷い込んでしまった私・・・・確かな答えなど見出せぬまま、出口を探し彷徨い続けて一夜が過ぎた。

数日後、私は一人ふらっとファミレスに立ち寄った。
窓際に腰掛け、私は何とは無しにぼんやりと窓の外を行き交う人々を眺めふぅーっと一つ深い溜息をついた。
目の前に置かれた、コーラの上に乗っかったまん丸アイスをストローの先で突っついてシュワシュワっと
泡立つ様を小首をかしげて眺めていた。

「れいな!ここにしようよっ・・・」
(うん?れいな?まさ・・・か・・・)
「まさと君ったら・・・そんな大きな声出したら恥ずかしいでしょ?」
ドンピシャだった・・・あの玲菜ちゃんが若く、いわゆるイケメンって奴と私の真横のボックス席に腰掛けた。
思わず顔面をプイっと窓側に方向転換させた。

(どうしようーー・・・ここは挨拶すべきか・・・しらんぷりすべきか・・・)
そんな事を想い巡ってると・・・・

「あれ?あさみさん?やっぱあさみさんだぁー偶然ですね!この前は楽しかったです、おしゃべり一杯できて・・・
あっと、彼は同じ大学の後輩で・・・まさと君。同じゼミ取ってて・・・単なる友人の一人で・・・」
「おいおい・・・単なるって酷いよなぁ~・・・少なくても俺は玲菜の事、ステディーな関係って思ってるんだけどなぁ~・・・ってか初めまして!お姉さんの事はこいつから良く聞かされてましたっ。」

(こいつって・・・マジむかつく奴。呼び捨てなんだっ・・・玲菜ちゃんの事。ふーーん・・・何かいやーーな感じ)

「ほんっと・・・偶然が続くよね~。これも例のシンクロってやつかな?玲菜ちゃんが言ってた・・・」
「玲菜、うれしい!・・・お姉さんあれ、覚えてくれてたんだ。やっぱ運命の出会いだったのよね♪ お姉さんとはっ」
心臓の鼓動が早鐘を打ち始めた―――

「ねーねー、お姉さん?そっちの席、移ってもいいですか?いいよねっ」
さっさと移動を始めるイケメン君。(だ~れがいいって言ったのさっ・・・)
「う・・・うん。いいですよっ。一緒の方が話しやすいよね・・・」
(心にも無い事言っちゃったぁ・・・でも、何で私ってさっきからこの男にいらついてるんだろ?嫉妬?まさかっ・・・)

玲菜はアイスレモンティーをストローを使って、品良く飲んだ。
伏し目がちになった彼女の長い睫毛が二三度微かに震えた。
マッチ棒何本乗るんだろう・・・羨ましい限りだ。 私のなんて・・・一本も無理か。


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