ブライダル
それは突然の出来事であった、来家忠信が馴染みの写真屋に頼まれ結婚披露宴のスナップ撮影を頼まれ披露宴会場を走り回って要る時であった、突然悲鳴がし列席者はほぼ一様に悲鳴のした方へと視線を向けると、雛壇でさっきまでにこやかに幸せそうな笑顔を振り撒いていた新郎新婦がほぼ同時に床に倒れ込んでいた、来家忠信は事態の把握が出来ないまま新郎新婦の倒れた雛壇へと向かい人集りを押し退け、直ぐ後に披露宴会場のスタッフが駆け寄り倒れた新郎新婦に声を掛けるが2人共口から血を流し眼を白目を剥いていた、直ぐに新郎新婦はタンカーで医務室へと運ばれ直ぐ後に警察が遣ってきた、そして騒然としたまま披露宴は取りやめとなった、そしてその数日後に来家忠信は警察に呼ばれ簡単な事情聴取を受けた、来! 「すいませんな~、お忙しいのに」 老刑事は愛想笑いを浮かべ来家忠信を取調室へと招き入れパイプ椅子に座る事を促し、来家忠信が着座すると老刑事もパイプ椅子に座りスーツの内ポケットから年期の入った煙草ケースを取り出し煙草を一本抜き取り来家忠信に差し出したが来家忠信は断った 「おたく吸わないの」 老刑事の言葉に来家忠信は愛想笑いを浮かべ頷いた 「へぇ~、昔から吸わないんですか」 老刑事の自然な言葉に来家忠信は返事をした 「それじゃあ私も止めるかぁ」 呟く様に言い煙草をケースの中に仕舞おうとした 「吸っても構いませんよ、自分気にしませんから」 来家忠信は愛想笑いを浮かべ言った、その言葉に老刑事は軽く笑い 「悪いね~、それじゃあ遠慮なく」 軽く微笑み煙草を口に運び安物のライターで火を付け深く吸うと来家忠信に気を遣ったのか天井に向けて煙を吹いた 「あっ、その隅で座ってる若いの、私の部下でね調書を書く係なんだよね、まだ若いから聞き直ししたりするから悪く思わんでね」 老刑事はそう言いながら笑った、来家忠信も愛想笑いを浮かべ若い刑事に軽く会釈をした、しかし若い刑事は無愛想であった 「悪いね~無愛想でね、ちょっと真面目すぎんだよね~」 老刑事は軽くまた笑い 「さてと、まぁ~ちょっと永く成るかも知れんけど始めるかな~」 老刑事は独り言の様に呟き 「ところでおたくの名前ね、あんまし聞かん名前だね、フリガナをふってくれてるから判るけどさ、珍しい名前だよね」 老刑事は老眼鏡とおもしき眼鏡を掛けながら 「くるいえと書いて、きいえさんねぇ~、よく聞かれるでしょうなんて言うのって?」 老刑事は更に 「忠臣蔵の忠に信じると書いて、ただのぶさんねぇ~、まぁこれは普通かぁ~」 老刑事は独り言の様に言いながら何やらブツブツと言い 「ところで来家さん、あんたねぇ~私ら警察に隠し事をしとらんかね?」 突然目線を老眼鏡越に来家に鋭い視線を向けた 「隠し事ですか?」 来家はキョトンとした表情で老刑事を見た 「そうだよ、隠し事はいけないよ!」 「すいません、特に隠し事はしてないと思うんですが何か気に成る事でも有りますか?」 来家は素直に言った、すると老刑事はニヤリと笑い 「あんた真面目だね~、でもさぁ~ウチらも警察だからね、調べる事は調べてるのさぁ~」 老刑事は口に喰わえた煙草を指で摘み灰皿の上に置いた 「あんた死んだ新郎新婦と同級生だよね~」 老刑事の言葉に来家は普通に頷いた 「はい、仰る通りですが、でも逸れが何か?」 老刑事は来家忠信の言葉に眉間に皺を寄せ灰皿に置いた煙草を灰皿の底に押し付け火を消し 「う~ん、なんでこの間の調書の時に言わなかったのかなぁ~、忘れてたのかな?」 腕組みをし不帳面で言う老刑事は更に続けた 「小学校と中学校の同級生で、中学の時は2年間も同じクラスメートだったよね?何故話さなかったのかなぁ?」 明らかに老刑事は来家忠信を疑いの目でみていた、来家は頭を掻き少し困った表情を浮かべ苦笑いを浮かべ 来家の言葉に老刑事は軽く笑い 「重要だよ、何せ殺人事件だからね」 老刑事の言葉に来家忠信は素直に謝った、その素直さに老刑事は笑ったが直ぐに鋭い視線を向けた 「それともう一つ、おたくこの街に帰って来たのは逸頃なのかな?」 「逸頃?」 「そうだよ、逸頃なんだい?、確かにおたくはこの街にずっと暮らしてる事に成ってるけどさぁ、何故かこの街で仕事をしてる気配が無いんだよなぁ?」 老刑事の言葉に来家は苦笑いを浮かべた 「確かにこの街では働いては居ないですね」 来家忠信の返答に1つ溜め息を吐き 「来家さん、あんた拳銃撃った事有るよね?、それもかなりの数をね、違うかな?」 「あの、今回の事件とその拳銃を撃ったとか撃たないとかって関係有るんですか?」 来家は軽く笑いながら答えた 「一般市民が拳銃を易々と撃てるはずないのに、あんたは何故強く否定しないのかな?、確かにこの事件と拳銃の話は別だし、おたくを別件でしょっぴく気我々には無いんだがね、たださぁ、残念だけど来家忠信さんは善良な市民では無い様な気がしてねぇ」 老刑事の言葉はかなりの含みを持たせた言葉であった 「実はね、おたくがこの事件に関係無い事は明白なんだよね、ただね、只の殺人事件で無い事も確かなのさぁ」 老刑事は隅に座る若い刑事に目配せすると若い刑事は背広の内ポケットから茶封筒を取り出し老刑事に渡し、老刑事はその茶封筒の中身を出し来家忠信に差し出した 「あんた凄い事してるんだな?」 来家は差し出された中身の文面に目を通し一通り読むと軽く苦笑いさせた 「日本の警察も捨てたもんじゃないんですね」 「まぁな、ただ、初めてだよ傭兵とやらと対峙して話すのはな、あんた真面目そうに見えるけどね~」 老刑事の言葉に来家忠信は軽く笑い 「人生色々有るんですよ、それで、こんな物見せるのには訳が有るんでしょ?」 来家の言葉に老刑事は頷いた 「あんたに頼みが有るんだよ」 老刑事の言葉に来家忠信は首を横に振り 「悪いけど、殺しは請け負わないぜ、特に警察からのご依頼はな!」 「殺しの依頼と何故判る?違うかも知れんだろ?」 「違わなく無いだろ!、あの殺しには裏が有るんだろ?」 「何故そんな事が言える?」 「言えるさぁ、あんな披露宴会場で毒殺されたのに誰独り取り調べを受けてない、それに普通は検死解剖してから葬儀だ、それが翌日に通夜そして葬式だ、更に驚くのは両家がこの街から突然姿を消した、普通な話じゃない、違うかい?」 来家の言葉に老刑事は観念した様に笑い 「流石だな、あんた言う通りだ、この事件にはとんでも無い裏が有るしかしだなそれを今言う訳にはいかんのだよ」 「悪いが断るよ、俺は傭兵専門でな、人殺しは専門外でね、ましてや此処は平和な日本だ、そんな所で遣りたくはないんでね、帰ってもいいよな」 席を立ち出口へと向かった来家忠信の背中に老刑事が拳銃を向けた 「駄目ならあんたを此処で始末するしか無いんだが、理由は何だって付けれるしな」 「笑わすなよ、俺が今日この警察署から出て来なかったら或る国が動くぜ、そうなりゃあ、あんたとその拳銃持って震えてる若いのがクビに成るだけじゃ済まないぜ、下手すりゃ国際問題だぜ」 「馬鹿な事を言うな!」 老刑事は席を立ち拳銃を構え直した 「止めとけよ、俺は傭兵なんだよ、直接国を相手に動く傭兵でね、次の行く先も決まってる、当然俺には監視も就いてる」 その言葉を言うと来家忠信は軽く手を振り取調室の扉を開け出て行った、老刑事と若い刑事は構えた拳銃を下ろし力無く椅子に座った |
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