牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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15-06-14 04:31
かなり頭の中身がぶっとんでいる女が、中学~高校時代にいた。 裕子(仮)である。
朝、彼女は登校して教室に入ると 「うおーし!いっちょやってみっか!」 と、ドラゴンボールの孫悟空のモノマネをする。 彼女はお兄さんが上に3人もいて、趣味は男子と変わらない。 よく「女の子とは趣味が合わない」と言っていた。
彼女はゲームの「スパロボ」をこよなく愛しているようであった。 ロボットアニメのセリフを口にするのが好きである。 掃除の時間、ホウキを男子にむかって振り回し、 「ユニヴァアアアアス!」 と叫んでいた。
彼女は歌が好きだった。 声はハスキーだったが、どこか味のある声だ。 合唱でも、活躍していた。
ただ、彼女はよく休み時間に自分で作った歌を歌っていたが、その歌詞は凄まじかった。
♪愛してるの言ってたの~ 必ず捕まえるぜ スズメバチ! スズメヴァチッ! だって世の中 オーソンウェルズ♪
こんな調子だから、他の女子とはあまり仲良くなかったようだ。 男子の中にも彼女を「わけわからん」というヤツは多かったが、俺は好きだった。 なんといっても、可愛かったのだ。
彼女は、自分のセンスが怪しいことを自覚していた。 もしかしたら、ワザと変な行動を取っていたのだろう。 パーカーの紐の端っこの結び目を鼻の穴に突っ込んだり、 黒板に、やたら鼻の太いゾウさんの絵を書きなぐったり(そのまま授業に突入)。 たぶん、ウケを狙っていたのだろう。
中学時代のある日、裕子に手紙を突然わたされた。 「これ、渡してくんない?」 「誰に?」 「アンタんちの犬。」 家に帰って、その便箋をあけてみると、ルーズリーフにやたらリアルな骨の絵が描かれていた。
こんな裕子だが、成績は抜群によかった。 テストの度に、上位者ランキングに顔を出す才女だ。 おまけに、運動神経も凄かった。 バスケ部のエースで、球技大会では凄いドリブルを見せた。
高3の時、久しぶりに裕子と同じクラスになった。 放課後、教室では俺と裕子だけが勉強のために残っていた。
裕子「飽きた。疲れた。」 「俺も。」 裕子「骨の髄まで?」 「………いや、わからんよ」 裕子「勃起してろ、馬鹿!」 ―――と、全く意味の無い会話に突。
裕子「ドラゴンキッド知ってる?」 「なにそれ」 裕子「超イカスよ。プロレスラー。」 「お前、プロレスなんて見るのか。」 裕子「闘龍門なら見る。」 (どこかの団体だろうか?) 裕子「お前、今度の日曜ヒマだろ?」 「まあな」 裕子「プロレス見に行くぞ。」 「………」
どうやらデートの誘い(?)だと思う。
裕子「イヤだといっても、連れて行くからな。」 強引なヤツだ。
日曜日、裕子と駅で待ち合わせ。 あんなヤツと会うだけなのに、かなり緊張していた。 しばらくして、裕子登場。肩とか首元がよく見えるファッションだった。 やはり美人だ。
裕子「おせぇわ馬鹿。3時間も待ったぞ」 「嘘つけ!俺が10分も待ったわ!」 裕子「口だけは達者な………and you?」 「意味わからんし!」 ゲラゲラ笑いながら、プロレスの会場へ向かう。
裕子「兄貴の馬鹿が、チケット2枚も寄越しやがったんだ。」 「ふぅ~ん」 裕子「ソウルフルだよね」 「そうだなぁ。」
会場は物凄い熱気だった。 ドラゴンキッド登場。緑色のマスクをかぶった、背の低い選手だ。 試合が始まると、ドラゴンキッドは体操選手みたいに動き回った。 初めてプロレスを見たが、「スゴイ!」と思ってしまった。
裕子はずっと叫んでいた。 「おい!うおおお!やれ!!」 そして、ドラゴンキッドがロープの上に登り、ジャンプして敵に飛びつくと、すごい速さで回転して敵をなぎ倒した。 裕子「やった!ウルトラ・ウラカンラナ!」 ゴングがなった。裕子はずっとはしゃいでいた。
帰り道、裕子はずっと俺に絡んで、パンチとかしてきた。 興奮冷めやらぬ様子。
裕子「アルバトロス殺法!」 「痛いってば!ってか、恥ずかしいから!!」 駅前で、やたら目立ってしまった。
マックで食事。裕子と二人で、やっぱりドキドキ。 裕子「うん、まいう~。」 「?」
自転車で帰宅。 最後、別れる間際に、裕子は自転車を止めた。
「どうした?」 裕子「………ちょっと耳かせ。」
何だろうと思って、左耳を裕子に寄せる。 その瞬間、左の頬に何か当たった。 (!!) キスされたようだ。
裕子「お礼ね。」 「………」←恥ずかしくて硬直 裕子「勃起した?」 「うるさい!」 裕子「あははは!じゃねー」
そう言って、裕子はものすごい速さで自転車をこいで消えていった。 たぶん、アイツも恥ずかしかったのだろう。可愛いやつだ。
次の日、学校で会った。 俺は裕子の顔を見ると、恥ずかしくなって下を向いてしまった。
裕子「おい、昨日のは幻覚だからな!ホントはキスとかしてないぞ!指でつついただけだ!」 そう言うけど、俺の左頬は濡れていたんだよ!
裕子とは、二人で遊びに行くことが多かった。 彼女は相変わらず言動が怪しい。周囲から見れば、「変な奴」「痛い奴」だと思われているに違いない。 だけど、裕子のその態度は、演技なんだろうと僕は思っていた。 本当に頭のおかしい人間が、ふっと一人になった時に、あれだけ鋭い目線をするものだろうか?
裕子は、周りに友人がいれば、面白いことを言ってはウケを狙う。 その間は、ずっと馬鹿みたいに笑顔を振りまいたりしている。 だけど、その雑談が途切れた時―――授業中や、みんなが自習に取り組む放課後の教室では、裕子の目つきは少し怖いくらいに鋭いのだ。
裕子は、みんなに隠している、冷めた部分がある。 冷めた部分があるから、周囲の人間のウケを取ろうと演技している。 僕は、「素」の裕子を確かめたい気持ちもあって、接近することにはなんの違和感も持たなかった。
前にも述べたとおり、彼女は美人の部類に入る。 女の子らしく、身だしなみにも気をつけているようで、近づけばいい香りがする。それに僕がしょっちゅうクラクラしていたことは認める。
高3の夏休みになって、僕はやたら性欲が高まって自慰行為ばかりに勤しんでいた。 本来なら、受験勉強をしなければいけなかった身分だが。 どうしても、自慰の時に思い浮かべるのは裕子になってしまう。
そんな毎日で理性が崩れたのか、我慢ができなくなったのか。 僕は裕子を家に誘って、できることなら最後までヤリ遂げようという決心をした。
「映画のビデオをレンタルしたから、見に来ないか?」 と、メールして裕子を呼び出す。 『しょーがねー、行ってやるよん♪』との返信。 偉そうな文面だが、そういう女として今まで付き合ってきたのだから、違和感はない。
(ああ、アレだ。 今にして思えば、「猟奇的な彼女」のヒロインに通じるものがあったような気がする。)
コンドームをポケットに忍ばせて、裕子を待つ。 家族はみんな出かけている。準備は完璧のはずだから、あとは手順と裕子の反応しだいだ。
「ただいま」 玄関を開けると、僕の家なのにそんなセリフを言う裕子がいた。 白いワンピースである。肩の部分は紐だった。なかなかにセクシーでよい。
あまりベタな内容のビデオでは、狙いすぎだと思われてしまう。ラブロマンス過ぎてはいけない。 悩んだ結果、レンタルしたビデオは 「アンドリュー NDR114」 である。
Amazon.comの作品紹介の文章を引用すると ☆ 舞台は近未来。サンフランシスコ郊外に住むマーティン一家に家事専用ロボットのNDR14(ロビン・ウィリアムズ)が届けられ、アンドリューと名付けられる。しかし、人間的感情をもち備えているアンドリューは、やがて人間でありたいと強く願うようになり、自分と同じようなロボットを探す旅に出る…。 クリス・コロンバスがアイザック・アシモフの小説『バイセンテニアル・マン』を原作に製作・監督したヒューマンSF映画。S・スピルバーグ監督の『A.I.』に先駆けるかのように、200年の時の流れの中をロボットが苦悩しながらさまよい続ける。そんなアンドリューをR・ウィリアムスがいつもながらの芸達者な演技で体現。ジェームズ・ホーナーの感動的で麗しい音楽もすばらしい。(的田也寸志)
―――とのこと。 物語の最後のほうでは、アンドリューと人間の女性との永遠の愛がテーマになってくるという、それはそれは素晴らしい話だそうだ。
序盤はコミカルだったので、裕子も小さく笑いながら、黙々と鑑賞。 裕子がやってくる前に一回見ておいた僕は、裕子をチチラみながら雰囲気を伺う。 後半になるにしたがって、内容は「愛」が浮き出てくる。
映画のネタバレになってしまうが、ラストはアンドリューが一人の「人間」として認められ、アンドリューは死ぬ間際になって、長年一緒に過ごしてきた女性と結婚することができた、というものである。
感動的なラストであった。裕子にどうこうしようという下心を忘れてしまうくらい。2度目を見ても、感動してしまった。
「いい話だったなー」 エンドロールが流れている時、僕はとりあえずそんなセリフを裕子に言う。 「ねえ」 微妙に涙目になった裕子が返事してきた。 やはり、感動したのだろう。変な女だったら、ここで泣くことなんてあるのだろうか。
<続く>
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