牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
しずかはトイレに篭り、自分の性器を震えた手でなぞる。今月も生理が来なかった。生理が来ない理由には単純に体調不良もありうるが、しずかは知っている。「妊娠」という可能性を。 事の起こりは三ヶ月前のことだった。潔癖ともいえる彼女は一日に何度も風呂に入り、その体の清潔を保つ。その日もまた風呂場で体を洗っていた。体の隅から隅まで垢を洗い落とし、いざ湯船に入ろうとしたとき背後からドアが開かれる音が聞こえた。「やあ、しずかちゃん」どこでもドア。現れたのは、のび太だった。「きゃあのび太さんのエッチぃ!」しずかは定番の台詞を吐き、のび太に湯船のお湯を思い切りぶっかける。しかし、のび太はそれに動じなかった。長い沈黙。水の音とのび太の体から滴り落ちる雫が落ちる音だけがあった。それに耐え切れずしずかは言った。「の、のび太さん出てって・・・」しかし、のび太は頭を振る。「知ってる?僕と君はね、将来結婚するんだ・・・」「何を言っているの?」「だからさ。将来結婚するなら今、君と一つになっても構わない、そう思わないかな?」のび太の口が不気味につりあがる。怖い、しずかは初めて目の前の少年に恐怖を覚えた。「わからない・・・言っている事がわからないわ!」「これからわかればいいじゃない。大丈夫、きっと気持ちいいよ」「来ないで!」近くの洗面器をのび太に投げつけ、しずかは抵抗する。洗面器はのび太の額に当たりのび太は「うっ」と小さく呻いた。しかしその抵抗はしずかにとってプラスにならなかった。痛みでうつむいたのび太の顔を再び見たとき、その顔は無表情で何の感情も無い人形のような顔に変貌する。口元だけが不気味につりあがったままだった。「初めてだから・・・優しくしてあげようと思ったのに・・・」怒りをかみ殺した声でのび太が呟く。「いや・・・ママ!ママぁ!」「叫んだって無駄さ。君のママは道具で眠っているからね!」つまり助けは来ないってことさ、と続ける。しずかは絶望に打ちひしがれた。「さあ一つになろうよ・・・。僕と君、一つになるんだ・・・」のび太は一歩また一歩としずかに近づき、しずかを湯船から無理やり引きずり出す。「いやあ!」しずかは叫ぶが、その叫びはもはやのび太の嗜虐心を煽るだけしかなかった。「騒いだって無駄だって言ってるじゃない。物分りが悪いなぁ」のび太は弾んだ声で言う。楽しんでいるんだ、この状況を!しずかはよく見知ったはずの幼馴染の顔が何か別の、人以外のものに見えた。「お願い・・・助けて・・・!」しずかは涙を流しながら助けを請う。しかし返ってきた答えはNOだった。「これ以上我慢しろというの?しずかちゃん、酷いよ」言葉のあとに胸元に強い衝撃が訪れる。胸を押され、押し倒されたのだ。「ママ・・・ママ・・・」「だからママは道具で眠っているって」ぎゅう、としずかの乳首をつねる。「いやあああああああああ!痛い!痛いい!」「あ、ごめんね。ちょっと強すぎたかなぁ」のび太は悪びれた様子も無く、言葉だけの謝罪を吐く。「本当にごめんねしずかちゃん。お詫びに・・・」「ひぅっ!?」のび太の舌がしずかの首筋をなぞる。まるでナメクジが這うような気持ち悪さにしずかはのび太を押しのけようと思ったが、恐怖の余り体が動かない。のび太はそれをしずかが受け入れたと勘違いしたのか、更に激しく舌を這わせた。「のび太・・さぁ・・・」気持ち悪いと思っていたのび太の舌が、それ以外の何かに変わる。まだ幼いしずかには判らなかったが、しずかはのび太の未熟な愛撫で「感じて」しまったのだ。のび太はそのしずかの様子に機嫌をよくし、舌をしずかの胸へと移動させる。「ふぁぁぁあ!」ぞくぞくっとした感覚がしずかを襲う。自分は知らない、初めての感覚。しずかは自分に何が起きているかわからず、戸惑った。のび太の舌はしずかの乳首の周りを執拗に攻め、しずかを焦らす。「のび太・・さぁ・・・あっ」「しずかちゃんの体、甘いなぁ・・・。体洗ったあとだからかな?」ちゅ、とのび太の口にしずかの乳首が含まれ口の中で転がされる。電気が駆け抜けるようなほどの刺激だった。「やあ・・ああああ!」しずかは快感の声を上げ、息を荒げる。その目は潤み、また息をするたびに上下するその胸は例えようのないエロスを感じさせた。「次は・・・ここだよしずかちゃん」のび太はしずかの足を持ち上げ、それを乱暴に開く。「やあぁ!」としずかから抗議の声がきたがそれを無視し、のび太は股に顔をうずめた。「女の子のここってこうなってるんだね・・・」のび太は感嘆の声を上げる。「やだ!見ないでぇ!」しずかは顔を真っ赤にしながら抵抗を始めるが、無駄だった。あの不気味な笑顔がのび太に戻り、しずかは再び恐怖した。「大丈夫だよ・・・僕は君が大好きだからね。だから気持ちよくしてあげる」少年とは思えないような冷酷な笑顔をしずかに向けると、のび太はしずかの股に口を近づけしずかの性器をなぞるように舐めた。「あああっ!」今までの中で一番強い快感。しずかの体はぴんと張り詰め、弓なりとなる。しずかは羞恥心から目を手で覆うが、ピチャピチャと舐める音だけが耳に入り、自分が一体何をされているのかわかってしまう。「あぁ・・・んぁああ・・・」次第にしずかの中から抵抗という文字は消えうせ、気づけばしずかはこの異常な状況を受け入れていた。もしかしたらこれは全て夢ではないか?しずかはそう思いもした。しかしその期待はのび太の次の行動で打ち破られる。ずん、と唐突に下腹部に鋭い痛みが走る。何か異物が入り込むような感覚。「ああああああああああああああ!!!」しずかは思わず絶叫した。「しずかちゃんの中・・・あったかいよ!」のび太は恍惚とした表情で言い放つ。しずかは自分の下腹部の辺りを見てみると、性器から赤い液体が流れている。生理?いや違う、「自分は女になってしまった」のだ。「痛い!やめてえええええ!!!」今まで生きてきた中で最大級の痛みに、しずかは暴れる。しかしのび太はそれを気にすることなく腰を動かし続ける。のび太の腰がしずかに打たれるたびに波のような痛みがしずかを襲い、しずかはその度に呻いた。「しずかちゃんいい!最高だよっ!」パン、パンと腰を打ち付けられその度に熱いものを下腹部に感じる。快感ではない、それ以外の何か。のび太は抜き差しをしながらしずかの中に射精をしていたのだ。のび太のペニスが抜き差しされるごとにのび太の精液はしずかから溢れ、風呂場の床に白い泉を作る。このときののび太に避妊、妊娠という言葉は一切消えていた。「もうやだぁ・・・ママ・・・ママ・・・!」「ママは寝てるって言ってるのに」パン!と更に強く腰を打ち付ける。この地獄はいつになったら終わるのだろうか?しずかは希望を失い虚ろとなった瞳で天井を見つめる。視界の隅にだらしなく涎を垂らし行為に夢中になるのび太が見えたが、しずかにとってどうでもいいことだった。ただ早く終わって欲しい・・・しずかの中に諦めという感情が強く出た。「しずかちゃん!出すよっ!」抜き差しの間にも射精していたにも拘らず、のび太は更にしずかの中に射精しようとする。その言葉に、しずかの意識は現実に戻される。「だ、だめぇ!赤ちゃんが出来ちゃうう!」その言葉にのび太は残酷な言葉を返した。「赤ちゃんが出来たら僕たちは夫婦だね。もう結婚できるじゃない!」体から血の気が抜ける感覚を知る。この少年は、狂っている。いや今まで巧妙に隠していただけでずっと前から狂っていたのかもしれない・・・。しずかはもう何を言っても無駄だと知り、今度こそ全てを諦めた。「いくよぉ!」パーン!と最後の一打ちをしのび太はペニスを深く差し込み、その中に精を放出した。抜き差しされている間とは比べ物にならないほどの量の精液がしずかの中に放たれ、溢れた精液はしずかからどろりと溢れた。「これで・・・僕たちは夫婦だね!」弾んだ声で言うのび太に、しずかはこう返した。「・・・そうね」幼い少女は何もかもを諦めたのだ・・・。それ以来、しずかは空虚な心を持って生きていった。当然のことながら自分を強姦したのび太と顔を合わせられるわけが無く、また男性そのものにも恐怖を抱くようになったしずかは学校にすら登校することが出来なくなってしまった。そしてそれ以上に恐ろしかったのは「妊娠」という可能性。少女にして男を知り、更に妊娠したと母が知れば母はどれほど嘆くのだろう。またそれを知った世間はどう反応するのだろう。しずかは部屋に引きこもり怯える日々を過ごした。そして今日、それは現実になったのだとしずかは認めてしまったのだ。のび太の子を妊娠・・・しずかまで狂ってしまいそうな現実。この事実を誰に話せばいい?誰に明かせばいい?誰が何とかしてくれる?「ドラちゃん・・・」万能の力を持った22世紀のロボットの名を呟く。そうだ!ドラえもんならば何とかしてくれるかもしれない!しずかはトイレから出てすぐに野比家に電話をすると、ドラえもんがすぐに出た。「あ!しずかちゃん・・・どうしたの?最近学校に来ないからのび太くんが凄く心配していたよ?」ここで全ての原因となった少年の名を聞きしずかの中に黒い感情が沸きあがるが、しずかはそれを抑えドラえもんに「ドラちゃんに会いたい」とだけ言った。「うん、いいけど・・・のび太くんも呼ぶかい?」「ドラちゃんだけに来て欲しいの。今すぐにでも」だけの部分を強調し、しずかは懇願する。「わかった。じゃあ今すぐ行くね。それじゃあ・・・」ガチャリ、と電話が切られしずかは部屋に駆け込む。どこでもドアがある彼の移動時間は一瞬だ。恐らく既に部屋で待っているだろう。しずかが部屋のドアを開けると案の定ドラえもんは部屋で待っていた。「しずか・・ちゃん?」ドラえもんは絶望の声を上げた。その目からは完全に希望を失い光を失った少女が目の前にいたのだ。あんなにも生気に満ち溢れ、魅力的だったしずか。しかし目の前の彼女は・・・。「ドラちゃん・・・よく来てくれたわね」ふ、としずかが笑う。その笑みはロボットのドラえもんでもゾクリとするような妖しさが含まれ、とても少女がする笑みとは思えないほど妖艶だった。「ぼ、ボクに用事ってなにかしら?」以前に比べとっつきにくい印象を持ったしずかに、ドラえもんは恐る恐ると尋ねる。しずかはドラえもんの言葉に笑みを崩し、息を呑んでから事実を言った。「私、妊娠しているの」「え・・・?」ドラえもんは大きな目を更に大きくし、驚愕する。「のび太さんとの子よ」更に事実を告げ、ドラえもんは動揺のあまりアワアワと慌てふためき、部屋の周りをぐるぐると駆け始めた。「3ヶ月前にね、のび太さんがお風呂場にどこでもドアで来たの」ぐるぐる、ぐるぐる。「当然怒ったわ。「エッチ!」って」ぐるぐる、ぐるぐる。「だけどね。のび太さんいつものように帰ってくれなかったの」ぐるぐる、ぐるぐる。「いきなり「一つになろう」って言われて・・・」ぐるぐる、ぐるぐる。「・・・無理やり犯された!」しずかが叫び、ドラえもんは駆けるのをやめる。「無理やり、何度も何度も・・・!私の中に何度も出した・・・!」「ま、まさかのび太くんは避妊を・・?」「ええ」「なんていうことを・・・」ドラえもんは立つこともままならず、その場にぺたりと座り込んだ。情けなくて、馬鹿で、我侭なのび太・・・それでも人の道を外れることはしないと信じていた。気づけばドラえもんの目からは涙が溢れていた。本当に泣きたいのはしずかのほうなのに、とドラえもんは溢れた涙を止めようとするが止まらない。ドラえもんは涙を流しながらしずかに「ごめん・・ごめん」と何度も謝った。「謝らなくてもいいわ・・・ドラちゃんのせいじゃないもの」しずかは優しい声でドラえもんを慰める。ああ、この子はやはりあのしずかなのだ・・・。優しく、皆をいつも気遣う優しい少女、しずか。だがそれを変えたのはあののび太。ドラえもんはのび太を止められなかったことと、のび太の異常に気づけなかった自分を嘆いた。「ボクは君にどうすればいい・・・?ボクは君に何ができる・・・?」「出来ることがあるからこそドラちゃんを呼んだの」ドラえもんはしずかの言葉に顔を上げ、尋ね。「何?」と。「私の赤ちゃんを・・・誰にも気づかれないように生ませて欲しいの」ドラえもんは再び目を大きくさせ、驚いた。「生む・・・のかい?だ、だって君は少女で、その子供は無理やりに・・・」「ええ。でも、殺すなんて出来ない・・・」「でも誰が育てるの!?まさか、君じゃないだろうし」「未来の私よ」まさか、とドラえもんは呟いた。「子供の私じゃきっと育てられない・・・でも、未来の私ならきっと・・・」「それじゃ未来が変わってしまう!」いや、でもまさか。いやまさかそんなはずが。―――この腹にいる子供こそがノビスケとなるのか!?「お願い、ドラちゃん」しずかは膝をつき、ドラえもんに土下座をする。もうドラえもんに選択肢など存在していなかった。また彼自身も、選択肢を作るのをやめた。「・・・わかった。ボクは君のためなら何でもするよ」しずかの顔はぱあっと輝く。そう、本当はこういう顔をする少女だったのだ・・・それがのび太の手によって壊されてしまった。このときドラえもんは二つの決意をする。一つはしずかの子供を誰にも気づかれぬように生ませ、その子供を未来のしずかに送り届けること。そしてもう一つは・・・。それから数ヵ月後、しずかは元気な子供を生んだ。腹のふくらみはスモールライトで胎児の大きさを調整することで解決し、つわりなどはお医者さんかばんの薬を飲むことである程度和らげることが出来た。そして生まれた子供は―――ドラえもんの予想通り、男の子だった。「ありがとう・・・ドラちゃんのおかげでこの子を産めた」「・・・ボクは当然のことをしただけだよ」ドラえもんは自嘲するように笑う。「あのね、もう名前は決まっているの・・・この子の名前は・・・」「ううん言わなくてもわかるよ。ノビスケ、だろ?」「あらどうしてわかったの?」―――それが変えられない未来だからさ、としずかに聞こえないように呟く。「何となくかな?さ、名残惜しいだろうけど・・・この子は未来に送るよ」「もう送ってしまうの?」「時間が立てばたつほど別れはつらいものだよ」ドラえもんの言葉にしずかは力なく頷き、生まれたばかりのノビスケを差し出した。「さようなら・・・ノビスケ。未来で会いましょう・・・」別れを惜しみ目に涙を溜めるしずかに背を向き、ドラえもんはどこでもドアで野比家ののび太の部屋へと向かう。しずかが見送る中、どこでもドアを開けるとそこには無邪気に眠るのび太がいた。自分が今まで慈しみ、守り、そして裏切った少年。ドラえもんはしずかにポケットから刃渡り30センチほどの刃物を取り出し、それをのび太に向けた。「・・・しずかちゃんの未来に君はいちゃいけない」振り下げた。「ノビスケー!遊ぼうよ!」「うん!」今より少しだけ未来になった世界で、しずかの子供はよい友人と共に外に遊びに出かけた。それを一人の女性が見送る。「いってらっしゃい」その女性の声を聞いたノビスケは笑顔でこう返した。「いってきます!ママ!」振り向いた先には、大人になったしずかの姿があった。 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