夜這い村_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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 夜這い村

16-01-09 11:12

 この村は明治から戦後にかけて性にまつわる風習が残っていた、人はその村を夜這い村と呼んでいた。
昭和25年まだ終戦の傷跡を残す山郷の村は戦争で夫を亡くした未亡人や徴用に出て亡くなった未亡人が相当存在していた。
浅井和子もそのひとり、夫 晋三を徴用で亡くした未亡人で今は息子達の援助で暮らす日々であった。
息子は大阪に出ていて和子はひとり小さな農家に住んでいた。すでに五十路を迎えた後家であった。
 性にまつわる風習とは・・・
夜這いする対象は四十路を越えた未亡人であり男はその年に成人を迎えた者とと還暦を迎えたヤモメ男にだけ与えられた特権ともいえる制度であった。
しかしその機会は大晦日の晩から元旦の朝までの限られた時間であった。
その年は三十名近い若い男と五名の還暦を迎えたヤモメ男であった。
対象の未亡人はその日、特別の止まれぬ事情がある場合以外の者は勝手場の施錠は外しておく事とされていた。
浅井和子を含め百名を越える未亡人がいたがほとんどがそれを受け入れた。

性欲に飢えた男達の顔は殺気立ち集合場所の寄り合い所でくじを引き優先順位が決められた。
くじを引くまでは男達の騒がしい声で噂話が飛び交っていた。
「オイ、オメェ誰にする」  「俺は決めてるあの後家よ、道子いいだろう」「絹江もいいぞ何と言ってもベッピンじゃ」
若い男達は少しでも若く美しい女性に集中していたが裕也だけは違っていた。
終戦の年 母を亡くして途方に暮れていた時、何かと気遣ってくれた年増の浅井和子を知っていた。
あの女性こそ母親代わりをしてくれた優しい女性、一度抱かれてみたい抱いてみたいと思っていた。
十月の秋深まった夕時に裕也は自転車から洗濯物を取り入れる和子を見たのだった、くたびれた野良着と対照的な色白のふっくらした女だった印象がまだ目に浮かんだ

「さあ、これからくじを引いていただきます」
村の世話役の男が男達に大きな声で叫んだ。
群がるように男達はくじを持つ男の周りに集まった。
「さあ順番に」
わずか数分の間にくじは引かれた。
「一番から並んで指名される方の名を書いて下さい、重複した場合はくじ番の若い順で決めます」
がやがやと暫らく騒がしかった。
裕也は八番くじを引いて迷わず「浅井和子」と書いて係員に見せた。
「残念です、四番さんの石井伝助さんが指名しています。」
「伝助・・・? あの酒くらいの男か」
裕也は愕然とした、よりにもよってあの伝助に
伝助は今年還暦を迎えたヤモメである、大酒呑みで女にだらしがない男として評判であった。
すでに酒が入っていて赤ら顔をしていた。
「みなさん今夜は10時からです、朝は6時明るくなる前に帰るよう願います」
そう言って男は寄り合い所を後にした。

大晦日、その晩の冷え込みは例年よりなく比較的暖かな晩であった。
和子にとって風習とはいえ不安な夜を迎えていた、できるなら私を外してほしいと願った。
自分は美人の方ではない歳も五十路に入っている、自分より若い未亡人はいる そう自分に言い聞かせた。
しかし昨年も若い男に抱かれた、今年もその可能性があるかも・・・・。
和子は九時には風呂に入って鏡台の前で化粧をしていた。
時計は十時まで後がない、しかたなく勝手場の戸の支えを外した。
寝屋場は六畳の間、せんべい布団に横たわった。
柱時計がボンボンと鳴って時を知らした。

その時であるガタガタ勝手場の戸の音が耳に入った。
暗がりにかろうじて灯るランプの明かり、伝助がフラフラした足取りで寝屋場を探しながら近づいてきた。
「ここだな・・・ウイ」
和子は布団の中で伝助の様子を伺った
来た
「へへェ・・・お目当ての後家さん、よろしくな」
伝助が布団に潜り込んできた
「温かいなぁ~、どうれ」
伝助の手が和子の八つ口から懐に手を忍ばせた
すべすべした懐の乳房を探り当てた
「ああ・・・」
                                      


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