この話はつづきです。はじめから読まれる方は「醜女の復讐」へ
「今ここに無いから私のアパートで渡すわ」「ええ?」「じゃあ行こう」文代は有無を言わさず立ち上がり、バッグと会計票を手にした。
先輩の勢いに二人は逆らえないまま後からレジに向かうのだった。
車は繁華街から落ち着いた住宅街へと進み、そこを五分程行った所の一棟の二階建てアパートの前で停まった。
両階共に灯りが点いている。
文代は内心緊張しつつも平静を装って車から降り、二人を後部座席から下ろさせた。
「ここよ」中へ入って行こうとしたが後輩たちは車から動かず、それに気付き、「何してるの?入って」と促した。
「・・・」麻美たちは仕方なく入口に向かった。
流し台に小さな冷蔵庫、もう一部屋には座卓や箪笥、テレビなどの他に雑誌が何冊も隅に置かれ、その近くの段ボール箱にはたくさんの郵便物が乱雑に詰め込んである。
麻美と真弓はその薄汚い部屋を見て嫌な顔をしたものの文代は後輩たちには構わずバッグを箪笥の上に置き、台所で水を飲んだ。
そして、「遠慮しないで上がってよ」とぶっきらぼうに勧めた。
「やっぱり、もう帰ります」麻美が不快を露わにして言ったが、文代は「何言っとるんだ、ここまで来て」と怒った口調で反対した。
「・・・」「先輩の言う事が聞けんのか?」「・・・」「さあ、早く上がれ!」文代の剣幕に押されて二人は靴を脱いで上がった。
陰険で不気味、怒らせたら何をするかわからない。
「もっと素直になれよ」座卓に向かって正座をしている後輩たちに文代はコーヒーを作ってやり、「ほら」と刺々しく言ってそれぞれの前にカップを置いた。
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