牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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16-03-23 09:14
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大学に行ってた頃、住んでたアパートの斜め上に越してきた2つ年上の女と1年ぐらい付き合った。 同棲ってわけじゃなかったけど、半分そんな感じだったなー。 今はどうしてるやら。 きっといいお母さんになってるだろうな。
大学2年のころに住んでたアパートは、よくある2階建てのよくあるヤツだった。 そこにある日曜日、引越しの車がいたんだ。 見るとはなしに見てみると、若い女が越してきたのが分かった。
一応顔をそれとなく確認すると、美人とは言えないけど愛嬌のある顔をしてる。 その頃からそういう顔つきが好みだった(今もだ)。
もちろん「共同玄関、共同便所」といったアパートじゃないから、顔を合わせることはあんましないだろうな、と思っていた。 なんて思ってたらさっそくその夜、引越しのあいさつに来た。
「はじめまして、上の○○号室に越してきた××といいます」 「あ、あぁ、ご丁寧に。拓也といいます、よろしく」 てな会話が玄関先で行われたと思いねぇ。
ところでその頃住んでたアパートは、なぜか住人のほとんどいないアパートだった。 何でも改築予定だとか地上げにあってるとか言う話はあったが、よくわからなかった。 実際に住んでいるのは自分と彼女とせいぜい他に二部屋ぐらい(全8か10部屋だったと思う)。
「ここ、住んでる人まりいないんですか?」 「そうなんですよ、半分も埋まってないみたいです」 なんてことを話したりしていた。 その日はその程度だった。
ひと月ほどして、実は彼女とは帰ってくる時間がかぶることが多いことに気づいた。 通っていた大学は必修科目が多く、午後はほぼ実習だったけど、学生実習なんて大体時間通りというか、予定通りに帰れるものだ。
俺の帰ってくる時刻はおおむね一緒。 彼女は一般の事務員だったけど、後から聞いたら残業がほとんどなく、そのせいで帰る時刻が大体同じだったそうだ。
顔を合わせるたびに 『結構、いいなぁ』 と思い始めていた。
そんなある日、どうせ帰った後は晩飯を食うんだけど、彼女を誘ってみたらどうだろう、と思ったわけだ。
いまはすっかりオサーンになっているので、おにゃのこに 「飯、食いに行かないか?」 ぐらいはかるーく言えるのだが、当時はウブだったからねー。 そう思ってから実行に移すまでにひと月かかった。
そのひと月の間には「今日こそ」と思っていたら、顔を合わせなかったりなんていう間のわるいことも何度かあったが、チャンスは来た。
「こんばんはー」 「あ、こんばんは」 「あのー・・・もしよかったら、ご飯でも一緒に食べませんか?」 これを言うのに脇の下に汗を何㍑かいただろう?
そう声をかけると彼女はちょっと笑って 「あ、それいいね。どっかで一緒にご飯食べよっか」 というお返事。
自分はとりあえず断られなかったことにほっとしてから、徐々にうれしさがこみあげてきた。
「じゃ、どこ行きましょうか?」 「それも考えてなかったの?」 と彼女爆笑。 そういえば具体的なことを何も考えずにいたことに気付く。 アホか>自分
しかしそこはそれ、当時住んでいたところは案外食べ物屋の多いところで、それなりに雰囲気のいいところもあった。 ちょっと考えて近所のHという洋食屋さんを思い出した。
「Hに行ってみませんか?」 「あ、あたし行ってみたかったんだ」 とのお返事で、早速GO。
お店に着くと程よく混んでいる。 席に案内され、自分はポークソテーセット、彼女はハンバーグセットをオーダーした。
それからはお互い自己紹介から始めた。 考えてみたらマヌケな図だったと思うのだけど、お互いのことを話して聞きあうのが楽しかった。
そこでわかったこと。 ○彼女は二つ年上 ○出身は南に2時間弱の地方都市 ○短大卒 ○彼氏なし(ここ重要) ○長女 ○兄弟は弟と妹がいる 等々 自分もそれらの話をあれこれした。
正直その店はおいしいところだったのだけど、料理の味は覚えてない。 そのぐらい夢中で話した。
食事が終ってさて帰ろう、と、会計を済ませて一緒に歩いた。 正直、まだ話足りない気がしていた。
その時彼女が 「拓也君、まだ話したいね」 との発言が・・・。
「そうですね・・・どっか他のところに行きます?」 とは言ったものの、あまりその種の店を知らない。 行くなら喫茶店かなぁ、などと思っていたら 「じゃ、うちにおいでよ」 とのオコトバが!!!!!!
もちろんいやなわけはなく 「はいっ!!」 と即答。 「じゃ、着替えとちょっと片付けるから、○時ごろ来て」 と言われました。
いったん自分の部屋に戻ったのですが、落ち着かないことこの上ない。 あと○○分・・・あと××分・・・と時計ばかり気になる。 約束の時間がやっと来て、彼女の部屋の前に立ち、チャイムを押す。 ピンポーン♪
すると中から彼女の声が 「あいてるよー、入ってー(不用心だな、俺じゃなかったらどうすんだろ?)」 と。 中に入ってみると、作りは同じなんだけどやっぱり若い女性の部屋。 色はやっぱり暖色系で、カーテンなんかも自分の部屋とはぜんぜん違う(気がする)。
「まだ片付けきってないんだー、散らかっててごめんねー」 なんていうけど全然、きれいな部屋でした。 (自分の部屋が汚かっただけという話も・・・)
ワンルームでしたから、狭いのは狭い。 小さなテーブルの前に座らされ、お茶を出されました。 二人でお茶を飲みながら、今の学校や仕事の様子、生い立ちなどを話し続けました。 それこそ時間を忘れて話していた、というのが適切な表現でした、うん。
さすがに話し疲れてふと時計を見ると・・・ヒヅケカワッテンジャン。 「あー、もうこんな時間だよー、俺、戻らなくちゃ」 「そうだねー、あたしも明日仕事だし、休まなきゃね」 てな会話をして自分は部屋に戻ったのでした。
さすがにその昔のことで、この展開ですぐにセクロスには至らないわけです。 しかし帰るときに 「今度は休みの前の日に、徹夜で話しようか」 とのお誘いを受けました。 もちろんそれに強く頷いたのは言うまでもありません。
それからしばらくして徹夜の会話というのもあったが、関係はなかなか進展しなかったのでした。 (チキンな自分) まさにつかずはなれず、というか、友達以上恋人未満というか・・・。
それが急に展開したのは、自分が風邪をひいて寝込んでしまった時でした。 初めて一緒に飯を食って3カ月ぐらいのことでしたね。 珍しく40℃近い熱を出してウンウン唸って寝込んでいたのですが、その夜に彼女が電話をしてきたのでした。
「拓也(このころには姉さんぶってなのか、呼び捨てでした)、今日は忙しいの?」 「いやー、具合悪くてさー、寝てるんだ」 「え? そういえば声も変だもんね。ご飯は食べたの?」 「いや、食ってない。食欲ない」 「だめだよー、何か飲んだ?」 「いや、朝から何も口に入れてない」 「それはダメ! いまから何か持ってくから、部屋の鍵開けといて!! 少ししたら行くからね!!!!」 そういうと彼女は電話を切った。 自分は仕方なく玄関の鍵を開け、また改めて寝込んだ。
うとうとしていると、玄関の開く音がとおーくに聞こえます。 どうやら彼女が何か持ってきたらしい。
「拓也.大丈夫ー?」 なんて言いながら来るんで、眼を開けると心配そうな彼女の顔がありました。 お鍋と、いろんなものの入っているらしき買い物袋を持って。
彼女は背丈が小さく(確か147か8)、たくさんの物を持ってきたというより、荷物にぶら下がって来たみたいに見えて、具合悪い中、しかも彼女に失礼だったのだけど、思わず笑ってしまいました。
「なんで笑うのよー」 とちょっとだけ膨れた彼女をなだめたりして。
持ってきてくれたのは、たまたま作っていたスープ(これが鍋)と、ゼリーやプリン、清涼飲料水の類に果物。
なぜかビールが見えたので 「これもおれにくれるの?」 と聞いたら、照れ笑いしながら 「これはあたし用」 だって(かわいかったな、この表情)。
「何か口に合うもの、何でもいいから食べるなり飲むなりして」 というので、とりあえずゼリーを食べられるかな?と思って食べてみたら、これがうまくなくって、半分も食えなかった。 プリンも果物もほんの二口ぐらいでだめ。
「何か食べとかないとよくならないよー」 と、半ば叱るように彼女は言うのだけど、食えないものは食えないし、彼女は心配な表情を通り越して、何か泣きそうになってるし、最後に彼女のスープを飲んでみることにした。
なんとなくこのスープだけは残しちゃいけない気がして、味はほとんど感じてなかったけど、どうにかよそわれた分は飲むことができた。
「良かったぁー」 といった彼女のうれしそうな顔。
「飲んだらあとはあったかくして寝るんだよ」 といって自分に布団をかけ、 「それにしてもいっつも散らかってるよねー。ちょっと整理だけしてあげるからね」 と、散らかった本や資料なんかを片付けだしたのでした。
「ありがとう、でも風邪うつるかもしんないから、適当なところで部屋に帰ってね」 「わかってるよ。ゼリーとかは冷蔵庫に入れとくね」 そう会話した後、自分はまた眠りこけた。 安心したのかもしれない。
かなり時間がたって眠りから覚めた。 眠る前まであった具合の悪さがずいぶん楽になっていることに気付いた。 起き上がってふと横を見ると、壁にもたれかかって眠る彼女がいた。
自分がびっくりしていると彼女が目覚めた。 「あ、起きれるの? 具合よくなった?」 「具合はだいぶいいんだけど、それより帰らなかったの?」 「うん。心配だったしそれに拓也の寝顔見てたら、何か安心しちゃって、寝ちゃった。ははは・・・」
自分はその時ベッドを降りて、彼女のもとに行った。 たまらなく彼女を愛しく思えて、抱きしめたいって思ったんだ。
「汗臭くてごめん」 と言って彼女を抱き寄せて、抱きしめた。 彼女はそのまま自分に体を預けてきた。 小さな彼女の体は緊張しているようでもあり、でも安心しているようでもあった。
抱き合ったまま彼女と目があった。 そのまま自然にKISS。 一体何秒唇を合わせていたんだかわからないけど、唇を離した時 「ごめん、ろくに顔もなにも洗えてないから・・・」 と謝ると 「やっと拓也と通じあえた気がしてうれしいんだ」 とちょっと照れ気味に彼女は言った。
このときはそのままただひたすら抱き合っていた。 その先の行為を自分も彼女も気にしていなかったから、それだけで十分満足だった。 初めてその先に進むのはこの後さらに1カ月ぐらい後なんだけど、そこまではいまんとこ書く気になれない。
てなわけで彼女とはこの先1年ぐらい、半分同棲してるみたいな関係を続けます。 同じアパートに住んでいたせいで、ひとつ便利だったこと。 付き合い始めてすぐに自分も彼女もコードレスホンを買いました。 実はそれさえ持っていれば、どちらかの部屋にいたとしても、電話が通じるのです。 親から電話が来ても、まさに自分の部屋にいるかのように会話ができてしまう。 同じアパートのごく近い部屋だったので(あと、アパート自体のつくりも大したことなかったから)、そんな小ワザも使えました。 まだまだ携帯電話が行きわたるような時代ではない頃の話でした。
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