それは残暑の厳しい昼中だった。僕は、昭代と前もって決めておいた通り、予定の時間に喫茶[ロマン]に着くよう愛車のベンツを走らせていた。狙っている相手がたとえやり手のキャリアウーマンでも、俺に掛かったら必ず落ちると自信はあったし、それが楽しみではあったが、細かい計画に沿って行動するのは結構神経を使うものだ。母さんがいなくなった穴埋めを充分にしなければ気が済まない、と意気込んでもいた。 名古屋市内の街中は平日でも車が多く、幹線道路ではスムーズに走っていても、目的地に近付いて狭い道を進むようになるとしばしば渋滞気味になり、苛立ちもした。皆、金も無いのに車に乗りやがって・・・などと一人で不満をぶつけながら走らせた。[!
マン]には二、三回行った事があるので場所はわかっている。 予定より少し遅れてその店の駐車場に車を停め、中に入って行った。比較的広い店内には客が多く、昭代たちがどこに居るかわからずにきょろきょろ探していたら、窓辺で手を振る人が居る。昭代だ。ほっとしてそちらへ行った。「遅かったのね」彼女は社長として貫禄のある態度で言い、僕は、「すみません。道が混んでいたので」と謝った。それから昭代は、向かい側に座っている瑠璃子に、「こちらが甥の雄一君」と僕を紹介した。瑠璃子は僕に向かい、軽く愛想笑いを浮べて会釈した。僕も黙って頭を下げた。それはイメージしていた以上に知的で冷たく取っ付きにくい雰囲気の女で、いかにも!
キャリアウーマンという感じだ。「この子を!
せば、頑固な吉川さんでも要望を聞いてくれるから。何せこの子に甘くてね」「そうですか」瑠璃子は社長の話をすっかり信じている様子で、吉川が架空の人物だとも知らず、この機会を利用して自分の更なる出世を企んでいるのだろう。ウエイトレスにクリームソーダを注文し、昭代の隣の席に座ってこの馬鹿な女を観察した。瑠璃子は上下グレーのスーツを身にまとい、背が高くて中肉、顔の彫りが深くてりりしい。男をいっさい寄せ付けずに仕事一筋で来ている為、女の色気に全く乏しいが、胸は結構大きい感じで、それが目立たないように敢えて押えている。三人共喋っていない間も僕がじろじろ見るものだからさすがに変に思いながらも彼女は強いて愛想を良くしていた。 !
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