あやめの記憶 〜無言劇〜_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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あやめの記憶 〜無言劇〜

16-05-28 03:13

「あの、感じてますか…」

「えっ?いえ、感じてないです!」

利恵は多少焦りつつも強く否定した、が、当然ながら嘘である。
しかしあまりに強い口調で答えてしまったため、
その場を取り繕うように、

「でも腰の辺りが随分楽になりました、ありがとうございます。」

とごまかすように他愛のない会話を続けた。いや、続けようとした。

「すいませんでした!でも楽になったみたいで良かったです。」

理人の、これまでのきわどい雰囲気を断ち切るような謝罪の後、
マッサージの動き以外は、長い沈黙が小さな整体院の空間に漂う。
この沈黙に2人はどのように対処すべきか。

次第に、理人の全身は沸騰する程に熱を上げ、
額や腋の下からは、普段の施術とは明らかに異質の汗が滲み、
そして蜜蜂の太い針は、ズボンの上からもわかるくらい、
その存在感を増して来る。

利恵が、卑猥なあやめを、理人にさらしているせいだ。

彼の鼻息が、この静寂を支配し出す。
かと思いきや、利恵の、施術により漏れ出るわずかな吐息、
そこに時折混じるわずかな母音も、静寂のアクセントとなり、
しばらくの間、そのストイックな時間が続いた。

この間、2人は無言の会話を着実に重ねた。


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