牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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16-06-09 11:04
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ちょうど今から10年ぐらい前の夏かな? 僕は広告代理店に勤務するエリートサラリーマンで、週末になると都内にあるクラブに通っていました。 その当時、クラブの常連の女の子で狙っている子がいました。 沢尻エリカ似の美人だったので、エリカと呼ぶことにします。
エリカはいつもマサコという友達と一緒にクラブに来ていました。 マサコも割りと可愛かったのですが、エリカとは比べものになりませんでした。
エリカは24歳で、身長は170cm近くある長身美人。 健康的な小麦色の肌が整った美貌によく似合っていました。 僕は背が高い方なので違感はありませんが、普通の男だとエリカは近寄り難いタイプだったと思います。 あの涼しげで切れ長のクールな瞳で見つめられたら、普通の男なら圧倒されてしまうかもしれません。
エリカやマサコと直接話すようになったのはDJの知り合いを介してだったのですが、あとでDJに聞くと、エリカは今彼氏がいない、とのことでした。 僕が本気になったのは言うまでもありません。 それ以来、僕とエリカ、そしてマサコの3人はクラブで出会うとよく一緒に飲むようになりました。
僕は当時、かなり調子に乗っていたと思います。 働いてる会社も一流だし、背も高いし、顔も悪くない。 だからエリカくらいの美人を手に入れて当然なのだ、という思いがありました。 なので何回かデートをして、「付き合おう」と言ってもはぐらかすばかりでなかなか応じてくれないエリカに少しムカついていました。
「エリカはプライド高いからねー。でも私はKくん大好きだよ!」
そう言って、ほろ酔いのマサコは僕の腕に大胆にデカパイを当てて来ました。 カウンターでエリカが男に捕まって熱心に口説かれているのが見えました。 この男はEと言って、クラブの常連客です。 数回話したことがあるのですが、外見は若く見えても実は40歳近くの中年オヤジで、エリカに夢中のようでした。
(あんたに釣り合う女じゃねえよ・・・)
僕は内心そう思っていました。 身長も160cmくらいしかなく、エリカに対して媚びへつらうだけのEに軽蔑の目を向けると同時に、自分を放っといてEなんかの相手をしているエリカにだんだん腹が立ってきました。
あの時は僕も酔っていて、とにかくセックスがしたかったというのもあります。 僕はそのままマサコのマンションに行ってセックスをしました。 エリカを嫉妬させてやりたいという、今から思えば大いなる勘違いもありました。
次の週末、僕はまたクラブにいました。
「いいよなあエリカちゃん。あのカラダたまんねえよなあ・・・」
たまたま居合わせたEが隣のソファで貧乏臭くちびちびと酒を飲みながら、カウンターで談笑するエリカをじっとりと粘りつくような目で見ながら呟きました。 まるで涎を垂らさんばかりの猿を思わせるEの顔つきに、ぞっとするような嫌悪感と共に怒りを覚えました。
『お前みたいなチビのオヤジをエリカが相手にするはずないだろう』
そう面と向かって言ってやりたいのを必死で押しとどめました。
「Eさんと知り合いだったんだあ!」
そう言いながらエリカとマサコはグラスを片手にソファにやって来ました。 自然にマサコが僕の隣に座り、エリカがEの隣に腰を下ろしました。 それだけでも、僕の中にムラムラと嫉妬の怒りが込み上げてきました。 マサコがトイレに行き、エリカに頼まれて酒を注文しにEが席を立った隙に、僕はエリカを猛烈に口説き始めました。
「て言うかKくん、マサコと付き合ってるんじゃないの?」
それまで僕の話を黙って聞いていたエリカが、切れ長のクールな瞳で問いただしました。
「付き合ってねえよ。あれは酔った拍子でっていうか・・・」
ちょうどその時、マサコとEが席に戻り、僕はそれ以上エリカと話すことが出来なくなってしまいました。 隣からマサコが甘えてくるのが無性に鬱陶しくてなりませんでした。 しばらくするとEと一緒にエリカが席を立ち、僕はそのまま投げやりな気分で強い酒を飲んでいました。 そのうちマサコが酔い潰れて寝てしまい、何もかもバカらしくなった僕は、カウンターで相変わらずEに口説かれているエリカに近付きました。
「電話してくれよ。待ってるから」
そう言い置いて、そのまま店を出て、しばらく夜風の中を歩きました。 エリカが自分になびかない理由がどうしても判りませんでした。 付き合ってもいないのに、マサコのことを問いただされたのも癪に触りました。
(いい女はお前だけじゃないんだ。いい気になりやがって・・・)
タクシーを止めようと通りに立ち、しかし思い直してクラブに引き返すことにしました。 カウンターで最後にエリカに話し掛けた時、Eと話すエリカの表情に何か言いようのない悪い予感を感じたからです。
クラブの入り口が見えてきた時、タクシーに乗り込むマサコとエリカ、そしてEの姿が見えました。 なぜか目の前が暗くなるような不安を覚えたのを今でも思い出します。 僕はひとり残されて、走り去るタクシーを呆然と見つめるしかありませんでした。 その後、僕は何度もエリカの携帯を鳴らしましたが電源を切っているのか繋がりませんでした。
僕の脳裏に、最後に見たエリカの姿が何度もよぎりました。 その日はいつもより露出度の高いファッションをしていました。 体にぴったりと張り付くような胸の谷間が見えるほどの黒のニットに、小麦色の最高の太股と大きめのヒップを強調するデニムのホットパンツにブーツサンダル。 そこに、粘りつくような視線を這わせていたEのあの顔つきが重なっていきました。
「マサコと付き合ってるんでしょう?・・・」
そう言いながら、わざと僕に見せつけるようにEとねっとりとディープキスを交わすエリカ。
「ああ、このカラダ・・・たまんねえよ・・・」
黒いニットの上からバストを揉み、耳元で熱っぽく囁くEに身を任せて、僕を冷ややかに見つめたまま悩ましげな甘い媚声を漏らすエリカ・・・。 自分の妄想にうなされて、その夜は朝方まで眠れませんでした。 ようやく連絡がついたのはエリカではなくマサコの方でした。
「エリカならウチに泊まってさっき帰ったけど。Kくんちょっとひどくない?」
酔い潰れたマサコを置いて帰った僕を電話口で責める声が遠くに感じました。 安堵感で腰から力が抜けそうになりながら、僕は曖昧に応対して電話を切りました。
(そうだよな・・・フリーのプランナーだかなんだか知らないが、あんなオヤジにエリカがなびくはずないよな・・・)
僕は急に元気を取り戻して、月曜の夜、改めてエリカに連絡してみました。 しかしやはり、電源は切られたまま繋がりません。 火曜になっても繋がらず、ついに水曜になり、僕の中にまた不安の黒い雲が湧き上がってきました。 思い悩んだ末、マサコにもう一度連絡してみることにしました。 マサコは僕の気持ちがエリカにあることを知ってどうでもよくなったのか、先日比べてサバサバとした口調で話しました。
「エリカね、Eさんと3日間、温泉に行ってたんだって」
それを聞いた時、僕は一瞬その意味がわかりませんでした。
(Eと温泉・・・?)
「エリカとEさん、付き合ってるよ」
茫然自失して黙り込む僕に追い討ちをかけるように、マサコが話し始めました。 エリカはEの熱烈なアプローチについに根負けしたのだと言うのです。 今まで浮気性の彼氏と付き合っていたこともあり、自分だけを愛してくれる男を探していたエリカにとって、狂ったように自分を求めてくるEの情熱に次第にほだされていったらしいのです。
「まさか嘘だろ?俺に当てつけるためにそんなこと言ってんだろう?」
僕は電話口で捲し立てましたがマサコは笑って取り合いませんでした。
「しかもね、エリカ曰くEさんて絶倫で、しかも舐めフェチの変態らしいよ・・・」
それを聞いた時、僕は目の前が真っ赤に染まっていくような錯覚を覚えました。
「最初は1泊のつもりだったんだけど、『Eさんが離してくれない』って電話してきてさ。『妊娠したらどうしよう?』とか言ってんの。・・・すごくない?」
僕は脱力感のあまり、怒りや嫉妬を通り越して、もう笑うしかありませんでした。
「エリカってオヤジ好きだったっけ?そんなにすごいんだ?」
自分の声が異常なほど甲高くなっているのが分かりました。
「最初はタイプじゃないとか言ってたのにね。電話してきた時はもう、とろけそうな声出してたよ。いいなーエリカ・・・私も素敵なおじさまにおかしくなるくらい責められてみたいかも・・・」
マサコによるとエリカは元々年上の男が嫌いではなく、両親が早くに離婚したせいもあってファザコンの傾向があったようでした。 温泉宿という日常とは隔絶した空間で、3日間もの間、中年男のねっとりとしたセックスでカラダの芯から狂わされて、お互いにもう離れられないことを確かめ合ったのだと言うのです。
「だからエリカのことは、もう諦めたほうがいいよ!」
そう言ってマサコはあっさりと電話を切りました。
その夜、僕は夢を見ました。 クーラーをつけていても蒸し暑くて、なかなか寝付けなかったことを憶えています。 それは現実と見まがうほどリアルな夢でした。
夢の中で、僕は体を縛られていました。 温泉宿の和室に、ほの暗い間接照明の灯りだけが灯っています。 目の前の布団の上に浴衣を肌蹴た女が横たわり、悩ましげに身をくねらせています。 輝くような小麦色の肌にしっとりと汗を浮かべたその女は、もちろんエリカ。
「あッ・・・!」
切なげに眉根をキュッと寄せ、たまらない甘い媚声を漏らしながら、エリカは何かに太股の奥を吸われていました。 見ると、それは一匹の猿でした。 猿はエリカの太股の奥に毛むくじゃらの顔を埋め、ねっとりとエリカの太股を撫で回しながら、溢れる蜜を音を立てて舐めては吸い立てていました。
「ああ、それだめッ・・・!」
エリカはたまらない声を漏らしながら猿の頭を太股から引き離そうとしますが、舌はまるで吸いついたように離れません。 エリカが身をくねらすたびに、浴衣から肌蹴た果実のような双乳がプルンッと音を立てるように揺れています。
「イク、またイッちゃう・・・」
何かを吸いたてるような淫らな音とともに、エリカは猿の頭を太股で挟みつけたまま、泣くような悲鳴をあげながら二度三度と激しく腰を振り立てました。 ぐったりとカラダを弛緩させたエリカの太股から顔をあげたのは、Eでした。 猿の体をしたEの股間にはすでに赤黒いモノが天上を突き上げんばかりにそそり勃っていました。 僕は大声をあげて喚きましたが、二人には聞こえないようでした。 まるで催眠術にでもかかったようにエリカが身を起こし、たまらなそうな甘えっぽい声を漏らして男の腰にすがりついていくのが見えました。
「うンッうふンッ・・・!」
忌まわしい猿のモノを根元まで口に含み、音を立ててしゃぶっていました。 その瞳はまるで霞がかかったようにうっとりと濡れて、ゾクッとするような色香がありました。 まるで、逞しくそそり勃った獣の精力を賛美しているように見えました。 汗ばんで乱れた髪を掻き上げ、悩ましく身をくねらせながらエリカは布団の上に四つん這いになっていきます。 まるで無言のうちにEと意思を交換しているようでした。 しっとりと汗ばんで小麦色に光る尻を、誘うように差し出すエリカ。 Eはその尻に顔を埋めていきました。
「やあンッ!」
アヌスをねぶられ、エリカは自分の指を噛みながらいやらしく上下に腰を振り立てます。
「もうだめ。お願い、もう・・・」
甘えっぽく尻を振ってねだるエリカに吸い寄せられるように、猿の赤黒いモノがゆっくりと子宮の奥に入っていくのがわかりました。
「はううンッ・・・」
たまらない声を漏らしながら腰を敏感に跳ね上げさせるエリカ。
「お前は俺のもんだ。俺だけのもんだ・・・」
Eの口から獣じみた呻き声が聞こえると共にじっくりと腰が律動を始め、エリカの口からすすり泣くような声が洩れ始めました。
「あンッいやンッ・・・!」
パンッパンッという湿ったいやらしい音が部屋に響きました。 エリカのカラダを引き寄せて、後ろから抱きつくように双乳を揉みたて、玉の汗の浮かんだ背中に吸いついていくのが見えました。
「ああ、すごいのッ!」
子宮の奥を何度も突かれまくったエリカは布団の上に崩れるようにして昇り詰めていきました。 とろけるようになったエリカを仰向けに横たえ、覆いかぶさるようにしてねっとりと舌を絡めながら二人が延々と交わるのを、僕は静かに見つめていました。 Eはいつの間にか人間の姿に戻り、愛を囁きながらエリカの舌を吸っていました。 エリカの長い脚が男の腰に絡みついていくのが妙に生々しく印象に残っています。 忌まわしいはずの光景でありながら、そこには野生の美しさのようなものがあり、僕は目を離すことが出来ませんでした。 不思議なことですが、そこにはどこか儀式めいた聖的な雰囲気さえありました。
エリカがEと結婚すると聞いたのは、その夏から約1年後のことです。 クラブではもうエリカとマサコに出会うこともなくなり、Eにも会ったことはありませんでした。 DJの知り合いから聞いたのですが、Eは完全にエリカの尻に敷かれており、夜遊びは全くしていないとのこと。 僕にはもう嫉妬の気持ちはありませんでした。 あの二人には何かしら引力のようなものが働いていたのかもしれません。
一度だけ、銀座の街でエリカを見かけたことがありました。 その美しさは以前にも増して艶やかに感じられ、僕はそこになぜか、女が持つ魔性のようなものを感じました。
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