蝶 5_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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蝶 5

16-06-14 04:11

気付けばあの夜のレズビアンバーに足が向いて
いた。
「いらっしゃい。あら、何時ぞやの刑事さん」
敦子は軽く会釈をするとカウンターに座った。
「今日はなっちゃん来てないわよ」
「そうですか・・・あの、ビールを」
「・・・」
ママは無言で敦子にグラスを渡すと冷えたビー
ルを注いだ。
「あの・・なっちゃん・・夏菜さんってどう
いった方なんですか?」
「・・・気になる?」
「・・・」
「まあ、うちの常連で、週2~3回飲みに来て
くれるジャズミュージシャン。太鼓をひたすら
叩いてるけど女の扱いの方が何十倍も上手いっ
て話さ。まあ所謂二流ドラマーの、典型的な悪
女。あんたあれだろ。言ってみれば今世間を騒
がしてる政治家のスキャンダルの被害者だろ?
あの日あの子と何があったかは聞かないけど
さ。刑事さんみたいな人があまり深みに嵌らな
い方がいいんじゃないの?」
ママは再びグラスにビールを注いだ。
「そんなんじゃ・・・」
「・・・どうしてももう一度会いたいってんな
ら、今夜はあの子ステージに立ってるはずだ
よ。『リバー』ってジャズバーに行けばいるは
ずだから」
(リバー!)
敦子は夏菜の携帯番号が書かれたメモをそっと
取り出した。
自分の思いが理解出来ず、ずっとしまっておい
たメモをギュッと握り締めるのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

そこは大人の雰囲気が漂う空間だった。
その一角に静かな存在感を醸し出す、髪の長い
女性がいた。
夏菜だった。
久しぶりに目にした彼女は敦子の知っている夏
菜とは違い、魅力的で誇り高く理想の女性のよ
うに写った。
彼女もまた入り口に立つ敦子にすぐ気付いたよ
うで、視線があった。
曲が終わり、続けて次のナンバーがピアノから
始まる。
ジャズに疎い敦子でもどこか耳にしたナンバー
だった。
カウンターに座りワインを注文すると、少し耳
に違和感を覚えた。
バンドの演奏に僅かな乱れが生じているような
不安な耳障り。
だがそれもすぐに心地良い調和に変わり、耳に
馴染んでいった。
嘗て激しい一夜を過ごした彼女の凛々しい姿に
目を奪われる。
細い腕の動きが激しくなったり、小刻みに震え
たり、一挙手一動作目が離せない。
彼女の腕に抱かれ、導かれたあの夜の濃密な時
間が蘇ってくるようだった。
店に響き渡るメロディーが敦子の心に入り込ん
でくるような不思議な感覚。
いや、メロディーというよりもドラムが刻むリ
ズムに体が反応する。
夏菜はジッと敦子を射抜くように見つめてい
た。
(そんなに見つめないで。私を誘わないで。
何だろう、この感覚?こんなに距離が離れてい
るのに、まるであなたとSEXしているよう
な。あなたの視線とリズムに犯されているよう
な感覚。ああ、ダメっ、そんなつもりでここに
来たんじゃない!)
夏菜が自分を見つめながら繰り出す強弱を刻む
ドラムが、敦子の体が覚えているあの夜の緩急
交えた腰のリズムとシンクロする。
何時しか敦子の股間に動かし難い熱い思いが
湿っていた。


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