変態らしくしてればいいのに…_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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変態らしくしてればいいのに…

16-12-25 11:20

私には、行きつけと言える風俗店がある。いわゆる、「M性感」というジャンルの、男が女性から責められるタイプの店だ。そこに在籍している、「みか」という名前の女性が私のお気に入りだ。彼女は、年は相当若いが、責めのテクニックはなかなか、というより、私の好みに合った責めをしてくれる女性だった。

数日前にも、私は彼女に会って、年甲斐もなく甘ったれた声を出しながら、彼女の手技で射精し、潮まで吹かされたばかりだった。さらに、何度もの寸止めにしっかりと耐えたご褒美に、と、プレイ後のシャワーでいわゆる「聖水」を浴びせてもらっていた。その後の、年相応の微笑みは、思い出しただけでも顔がだらしなくにやけ、股間にも反応があらわれる。

しかし今日は大事な仕事を終え、すぐに報告書をまとめなければならない。だから、私は近くのファミリーレストランに入り、さっそくノートパソコンを開いて資料の整理を始めた。ところが、うかつにも充電を忘れていたため、バッテリー警告が画面に現れた。慌てて周りを見渡すと、テーブルの向かい側の壁に、空いているコンセントを見つけた。勝手に使用するのは違法行為だと知ってはいたが、それほどの長時間ではないから、と自分に言い訳をするように一人頷き、アダプターケーブルを伸ばして、その店のコンセントから充電を始めた。

やがて、バイトの店員が注文を取りに、水の入ったグラスとおしぼりを持って、私のいるテーブルに近づいて来た。だが次の瞬間、彼女は私が慌てて伸ばした散らかし放題のケーブルに足を取られ、グラスの水を盛大に私のテーブルにぶちまけた。当然、私のノートパソコンは水浸しになり、プシュン……と音を立てて電源が切れた。

バイトの店員娘は茫然とした表情で、「も、申し訳ありません」を繰り返すのみ。軽くパニック状態に陥っていた。一方の私も、これまでの仕事も含めてすべて失わされたことに怒りを感じ、思わず感情的になり、呆然とするバイトの娘に怒鳴っていた。
「おい! どうしてくれるんだ!」
「ああ、すいません……いえ、申し訳ありません」
「あんたじゃ埒があかないよ。店長を呼べよ!」
「ああ……」

私は元来、滅多に感情的にならないし、怒鳴ることもない人間であった。社内でも家庭でも、温厚な人で通っているはずだった。「やっちまった」と思った頃には、バイトの娘は半泣きで下がっていき、私の視界から消えていた。

数分後、若い女性の「店長の柏木です、このたびは大変ご迷惑をおかけしました」という声が聞こえた。ノートパソコンがどうしても起動しないため、スマートフォンの小さな画面でなんとか報告書を作ろうとしていた私が、声のする方へ顔を上げると、そこに立っていたのは……

行きつけのM性感の「みか嬢」だった。目が合った瞬間にお互いがお互いに気づき、それまでの立場が一転したことがお互いの表情に表れていた……はずだ。

みか嬢、いや、柏木店長は再度私に向かって「本当に申し訳ありません」と頭を下げた後、バイトの娘に向かって「あなたは下がっていいわよ」と声をかけ、躊躇する女の子の肩を押して、半ば無理やり退席させた。この店の座席は、数卓ごとにパーテーションで仕切られているため、他からは様子が分からないぐらいにプライバシーは保てる空間になっている。

二人きりになると、柏木店長の表情と声はさらに変化した。もはや彼女は、完全に「みか嬢」になっていた。

「藤村さん、今回のことは確かにうちの子が悪いのですけど、聞けば、あの子はこのケーブルに足をひっかけたらしいじゃないですか」
「あ、ああ……そうみたいだね」
「これ、お客様用のコンセントじゃないんですよね……」そう言って、コンセントに刺さっていたプラグを抜いて、彼女はそれをテーブルに置いた。
「無許可で電力を使うのって、泥棒ですよね……? じっさい、『盗電』って、窃盗と同じ扱いらしいですし……」
「あ、ああ……そうなんだ」
「さっきの怒鳴り声で、帰っちゃったお客様もいるんですよ……これって、営業妨害じゃありません?」
「……分かりました。こちらもパソコンを壊されたことは不問にしますから……これでチャラですよね?」
「チャラ? うちの電気を勝手に使って、ケーブルでうちの店員の業務を妨害して、さらに売り上げも落としておいて、チャラ?」
「……」
「……法的手続きを取らせてもらってもいいんですけど」
「そ、それは……困ります」
「そうですよね、困りますよね……」
「じゃ、じゃあどうしたらいいって言うんですか?」
ここで、彼女の顔が店で見せるような小悪魔な微笑に変化した。一瞬だったが、確かにそんな表情が見えた。
「……少しお待ちください」
そう言うと、彼女は一度私のテーブルから去って行った。

すぐに戻ってきた彼女の手には、大きな空のワイングラスの載ったトレイがあった。そのグラスをテーブルに置くと、「お詫びの印に、スペシャルドリンクをサービスいたします。これを飲み干していただけたら、今回のことはなかったことにいたします」と真顔で私に向かって言った。
「スペシャルドリンクって……空じゃないですか」
「今、お注ぎいたしますね」
そう言うと彼女は、グラスを手に持つと自分の脚の間にグラスを差し入れた。数秒後、グラスは薄い黄金色に輝く液体で満たされ、私の目の前に差し出された。
「これって……」
「そうですよ、藤村さんの大好きなドリンクですよね。さあ、私が見ている前で飲み干してください」
「ええっ……そんな……」
「飲まないのなら、けっこうですけど……?」
「わ、分かりました……」
私は必死の思いで、グラスを空にした。
「ふふ…お代わりをどうぞ」
 そう言うと彼女は、私がグラスを取り上げるより一瞬早くグラスを再度手に取り、再び聖水で満たして私の前に置いた。半ば茫然の態で、私は2杯目も空にした。この屈辱的な状況にもかかわらず、股間は少し勃起していた。
「変態は変態らしくしていればいいのに…」
そう言って彼女は、グラスを取り上げると、去って行った。

『了』


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