変態らしくしてればいいのに…
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私には、行きつけと言える風俗店がある。いわゆる、「M性感」というジャンルの、男が女性から責められるタイプの店だ。そこに在籍している、「みか」という名前の女性が私のお気に入りだ。彼女は、年は相当若いが、責めのテクニックはなかなか、というより、私の好みに合った責めをしてくれる女性だった。 数日前にも、私は彼女に会って、年甲斐もなく甘ったれた声を出しながら、彼女の手技で射精し、潮まで吹かされたばかりだった。さらに、何度もの寸止めにしっかりと耐えたご褒美に、と、プレイ後のシャワーでいわゆる「聖水」を浴びせてもらっていた。その後の、年相応の微笑みは、思い出しただけでも顔がだらしなくにやけ、股間にも反応があらわれる。 しかし今日は大事な仕事を終え、すぐに報告書をまとめなければならない。だから、私は近くのファミリーレストランに入り、さっそくノートパソコンを開いて資料の整理を始めた。ところが、うかつにも充電を忘れていたため、バッテリー警告が画面に現れた。慌てて周りを見渡すと、テーブルの向かい側の壁に、空いているコンセントを見つけた。勝手に使用するのは違法行為だと知ってはいたが、それほどの長時間ではないから、と自分に言い訳をするように一人頷き、アダプターケーブルを伸ばして、その店のコンセントから充電を始めた。 やがて、バイトの店員が注文を取りに、水の入ったグラスとおしぼりを持って、私のいるテーブルに近づいて来た。だが次の瞬間、彼女は私が慌てて伸ばした散らかし放題のケーブルに足を取られ、グラスの水を盛大に私のテーブルにぶちまけた。当然、私のノートパソコンは水浸しになり、プシュン……と音を立てて電源が切れた。 バイトの店員娘は茫然とした表情で、「も、申し訳ありません」を繰り返すのみ。軽くパニック状態に陥っていた。一方の私も、これまでの仕事も含めてすべて失わされたことに怒りを感じ、思わず感情的になり、呆然とするバイトの娘に怒鳴っていた。 私は元来、滅多に感情的にならないし、怒鳴ることもない人間であった。社内でも家庭でも、温厚な人で通っているはずだった。「やっちまった」と思った頃には、バイトの娘は半泣きで下がっていき、私の視界から消えていた。 数分後、若い女性の「店長の柏木です、このたびは大変ご迷惑をおかけしました」という声が聞こえた。ノートパソコンがどうしても起動しないため、スマートフォンの小さな画面でなんとか報告書を作ろうとしていた私が、声のする方へ顔を上げると、そこに立っていたのは…… 行きつけのM性感の「みか嬢」だった。目が合った瞬間にお互いがお互いに気づき、それまでの立場が一転したことがお互いの表情に表れていた……はずだ。 みか嬢、いや、柏木店長は再度私に向かって「本当に申し訳ありません」と頭を下げた後、バイトの娘に向かって「あなたは下がっていいわよ」と声をかけ、躊躇する女の子の肩を押して、半ば無理やり退席させた。この店の座席は、数卓ごとにパーテーションで仕切られているため、他からは様子が分からないぐらいにプライバシーは保てる空間になっている。 二人きりになると、柏木店長の表情と声はさらに変化した。もはや彼女は、完全に「みか嬢」になっていた。 「藤村さん、今回のことは確かにうちの子が悪いのですけど、聞けば、あの子はこのケーブルに足をひっかけたらしいじゃないですか」 すぐに戻ってきた彼女の手には、大きな空のワイングラスの載ったトレイがあった。そのグラスをテーブルに置くと、「お詫びの印に、スペシャルドリンクをサービスいたします。これを飲み干していただけたら、今回のことはなかったことにいたします」と真顔で私に向かって言った。 『了』 |








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