牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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17-03-29 03:24
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暢気な大学生をしてた頃の話 地方都市に進出してきた大型スーパーでバイトをしていました。 基本は飲料水なんかの品出しとか重いもの中心 スポーツとバイクが大好きでそのための資金を稼ぐのが目的。
身長が185cmあるんでパートの叔母さん達には「ケン君背が高いねぇ」とか言われて高い所の荷物をひょいと降ろしてやるとなぜか拍手して喜ばれた。
休憩中とか 「ケン君彼女居るの?」とか「体も大きいからアソコも大きいでしょ」みたいな、笑いながらセクハラしてくるおばちゃん達も結構多くて、嘘か本当なのか「いつでも良いわよ」みたいな事を言う人も多かった。
ただ、まあそういう人は見るからにおばさんというか、もう御婆さんなので勿論、笑って流すだけ。 個人的に年上は嫌いじゃないけど年上過ぎるし下品な感じの人はNGだったしね。
そんな時に一人綺麗で大人しい人がレジ打ちの新人で入ってきた。
店長が「顔が良かったからw」と冗談半分で採用したようなこと言ってた。 確かに言うだけあって顔は凄い美人でナイスバディだった。 名前はマキさん年齢は35歳、俺と15歳差 見た目は全然20代後半で通用するし、何より20代にない独特の色気があった。 芸能人だと長谷川京子さんに良く似ている。
でもこの人、見かけによらず凄いドンくさい人だった。 レジも全然上手くならなくて、美人な事もあってレジ部の女性陣からすっかり浮いてしまっていた。
休憩室でも一人ポツンとしてて所在無さげ その日もお釣りの渡し忘れと、常連の口うるさい嫌味なババアなお客さんから遅いとのクレームで散々いびられた後だった。
肩を落として疲れきった背中を見て、これは長くないなとか店長と話してた。 因みに俺と店長は同じ大学の先輩と後輩ってことで意気投合 飲みに連れて行ってもらったり凄い親切にしてもらってた。
因みに凄い美人の奥さんがいて凄い愛妻家。可愛い娘さんも2人いる。仕事も出来るから凄い尊敬してる。
ある日バイト先に行くと店長が俺を呼び出した。 「すまんケン、今日から内沢さん(マキさん)お前の所(品出し)で教えてやってくれないか」 「えっ?」
話を聞くと、とうとうマキさんへの不満がレジ部で爆発。
「美人だから許されるのか」とか「マキさん辞めさせてください」とかまあ良くある話になったらしい。
店長はマキさんを辞めさせることも考えたらしいが 家の家計が厳しいマキさん。やっと見つけた仕事を辞めたくないらしくて泣きつかれたらしい。 女性の涙に弱い店長は苦肉の策で俺の所に振る事に下らしい。
「鮮魚部は気が荒い人ばっかりだし、惣菜部は時間までに仕上げないといけないからバタバタしてるからさ、お前のところならお客さんに直接急かされないから彼女もなんとか出来るだろ」
「でも、うちはうちで肉体労働多くてハードですよ?大丈夫ですか?」 「その時はその時で辞めて貰うよ」 「解りました」
という事でマキさんを呼んで紹介された。 挨拶はする程度だけど、直接話をするのは初めてだった。
「よろしくお願いします!」 15歳も年が違う年下相手に細い体を90度に折り曲げて挨拶するマキさん 人は良いんだろうなとは思った。
「とりあえず棚を見回って商品の前出しが基本です。」 「場所はやってるうちに覚えますから」 「はい」 「足りないものをメモにとってバックヤードに・・台車つかって・・重いものは無理に一人で運ぼうとしないでくださいね、怪我が怖いしお客さんにとっても迷惑で危険ですから」 と、仕事の基本を教えた。
まあ、ぶっちゃけ品出しは体力に自信があるならレジなんかよりよっぽど楽チンだ。 面倒なお客の相手をしなくて良いし、お金を扱わないからレジ部のようにギスギスしていない。
「大きなものは俺がまとめてやっちゃうので、細かいお菓子とかお願いしますね」 「はい!」
マキさんは仕事は真面目だし丁寧だが、確かに致命的に遅かった。 これじゃあレジは無理だわと思った。
品出し担当は大きな店の割りに数人しか居ない。 とにかく少人数でバンバンだして並べるので結構大きな店舗でも、そんなに大勢は必要ない。専門でやってる奴が入れば大概の場合平常時は一人で事が足りる。
なので殆ど俺がシフトの時は相方はマキさん一人だから必然的に2人で行動する事が増える。 マキさんは他の人たちが周りにいる時は硬い表情だけど、俺と2人でバックヤードにいる時はニコニコして冗談とかも言い合ったりしてた。
ただ、そういうのがまたおばちゃん達には面白くなかったんだと思う。 俺への態度は皆にこやかだけど 影ではマキさんへの陰口は酷くなった。
「店長に色目を使って残った」とか「ケンくんを今度は狙ってる」とか 「ごめんなさいね・・私のせいで変な事言われて・・」 「そういう噂を一々気にするのは良くないですよ、ソレより今日の仕事を確りこなす事ですよ」 「そ、そうですね・・ダメだな・・私・・」 「ほら、そういう落ち込みは今は必要ないですからこれ持って行って下さい!」 「はい!!」
仕事はきっちりやる主義なので仕事中は年齢は関係ない。 出来る奴が上を取れば良い、これは店長の主義でうちスーパーには年功序列はない。鮮魚部も若い兄さんがチーフやってるし、レジ部も仕事が一番速い20代のお姉さんが仕切ってる。 だから、仕事中はマキさんにあーだこーだ遠慮なく指示をだす。
マキさんはバタバタしながら毎日それを一生懸命こなしている。 多分、レジには向いていなかったんだろう。確かに機敏さは無いが、結構タフな人だった。 意外に品出しではへこたれずに仕事をしている。 この時間帯は此処が品薄になりやすいから補充を手厚く、みたいに目安を教えておくと結構忠実に覚えてくれていて丁寧にやってくれる。
こまごました作業は苦手な自分は大物担当で 小物はマキさんに振っておくようなチームワークで仕事をこなしていた。 仕事をちゃんとこなしているうちにマキさんも自信を持ってきたのか、少しずつ明るい表情でイキイキと仕事をするようになった。
お店の年末、店長が主催しての忘年会 パートのおばさんから惣菜部鮮魚部肉野菜冷凍レジの社員勢ぞろいで、色々ドロドロしたものもあるが、基本仕事に熱い人たちばかりなので飲み会はおおいに盛り上がった。
いつも仕事を2人でこなしていたので当然のようにマキさんは俺の隣に座り、俺は店長の隣なのでマキさんもいささか安心だったのかそれとも、店の店員の中にはマキさんを狙ってる人もいて、しつこく言われて困ってるといっていたからそういう人たちからも逃げたかったのだろう。
「ふう・・」 マキさんはあまりビールに強くないらしくチューハイをグラスに一杯目を握ったまま既に一口で赤くなっていた。胸元が大きく開いている服なので胸元が微かに赤く上気してるのが色っぽかった。
「マキさんお酒弱いんですね」 「ええ・・こういう席もあんまり経験なくて・・いつも家に居たから」
一次会が終わり二次会へカラオケに ただ、俺は大学の課題があったために今回はそこで帰ることに マキさんは唯一の話し相手である俺が帰るから心細いのだろう。
「あの、私もそれじゃあ帰ります。」と立ち上がる 「あれー内沢さんかえっちゃうの?」酔っ払った精肉部の人が絡んできた。 「はい・・夫が待っていますので」 明らかに困った顔のマキさん。
「えー良いじゃない~」としつこい そのうち周りの女性陣がその騒ぎを見「またあの人だわ・・」って感じに 「ほら、A君!二次会いくぞ!」
一瞬空気が悪くなるタイミングで店長がすかさず割ってはいり精肉部のAさんを捕まえる。
「それじゃあ店長お先します」 「おう!マキさんちゃんと送っていってくれ」 「はい」
そのままお店を後にして2人繁華街を抜けて駅に 俺とマキさんはお互い反対方向なのでそこで駅のホームを別々に 「じゃあ、俺こっちなんで、今日はお疲れ様、また明日からよろしくお願いしますね」 「はい此方こそ!」とまた丁寧にお辞儀
そのまま俺は別れて階段を上ってマキさんと反対のホームにでて電車が来るまで駅のベンチで缶コーヒーを飲んでいた。 ふと見るとなんとマキさんが駅の階段を上がってコッチに歩いてきた。
「どうかしました?」 「あの・・」 「?」 「・・・・・・・・・」 何か言いたげだが、なんと言うべきか迷うように何度も視線が地面と俺をいったりきたりしていた。
「あの・・ご迷惑じゃなければもう少し2人でお話できませんか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<続く>
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