兄貴の結婚式の受付にいた美樹さん2_ハッピーライフ-官能小説(happylives-novel)

牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城

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兄貴の結婚式の受付にいた美樹さん2

19-08-14 02:49

いま、考えると美樹さんの行動を見直すべきだったと後悔してます
『婚約破棄』
『クリスマスに出くわした友達への、とっさの嘘』
『先輩と飲んだ日の彼女の機嫌の浮き沈み』
そして
『クリスマスの俺のミス…』

あの時、自分勝手にせず
きちんと答えを出していたら
この後、あんな事にもならなかったし
いまも後悔する事はなかったのに…って…
30日のデートが美樹さんとの最後の楽しい思い出になるとは思いませんでした

大晦日の夜中、彼女と駅で待ち合わせし、地下鉄で初詣に向かいました
列に並び、甘酒を二人で飲み、順番を待つ中
携帯が鳴りました
美樹さんには彼女と初詣に行くと言ってあったし、
『彼女と居る時には連絡はしないからね』
と言ってくれていたので
着信は親か友達だと思い、彼女の前で堂々と携帯を見ると表示された名前は
『美樹』でした…
『美樹って誰?』と彼女に聞かれた俺は
『姉さんの友達
姉さんと連絡取れない時、たまに俺に電話してくるんだ
どうせ、姉さん何処に居るか知らない?って聞かれるだけだろうし』





『とりあえずシカトするわ』そう言いながら
俺は携帯をバイブにし、ポケットにしまった
彼女は一瞬、キョトンとするものの
その事には詮索してきませんでした

おさい銭を投げたり、彼女の合格祈願を祈ったり、おみくじを引いたり…
俺は約1週間ぶりに会う彼女との時間を楽しく過ごした
その間も時々、携帯は揺れてたが
俺は二度と彼女の前で携帯を出さなかった
お互い、あまり遅くなりたくなかったので
彼女をタクシーで家に送り届け
『じゃあ、またね』と、その日は帰しました
帰りの最中、携帯を開くと着信が10件ほどありました

全て美樹さんでした
約束を破ってまで、着信を残すなんて…
何かあったのかと心配した俺はタクシーの中、美樹さんに電話した
何度か掛けてみたけど、圏外…
その当時の携帯には、よくある事だったので
俺はあまり心配もせず、帰るとすぐ寝ました

次の日、珍しく美樹さんからの連絡がありませんでした
何度か電話するも、留守電に切り替わるだけ
『正月だから忙しいのかな?
それとも何かあったかな?』
少し心配にもなったが、美樹さんも実家暮らしだから、何かと忙しいのかと思い
俺は美樹さんから電話が来るまで待つことにしました

3日の日、家族全員が予定もなく家にいるんなら
『久しぶりに新年会でもやるか!』と親父が言い出した
俺はせっかくなので彼女を家に呼んだ
夕方、彼女を迎えに行くと彼女が少し緊張気味に待っていた
俺の親に会うのが初めてだった為だからだと思い
『ごめんな無理矢理呼んで、辛かったら理由付けて帰っていいからな』
『いいよ~、大丈夫。
でも急にだから少し緊張する(笑)』
家に戻るまでの間、彼女の緊張をほぐすように
俺は一生懸命彼女が笑ってくれるような話をした
家に着き、居間へ入ると親父と兄貴は飲み始めていた

彼女が溶け込めそうな雰囲気で安心した俺は
彼女をきちんと紹介し
席についた
『ん…席が余ってんな…』気になった俺は
『まだ誰か来んのか?』
俺の問いに答えたのは姉さんだった
『あ~ごめんね、姉さんの友達も二人呼んだの
美樹ともう一人ね
〇〇は、どちらも前に会った事あるでしょ』
…彼女と美樹さんに接点がないから、俺は絶対に鉢合わせなんてないと思ってた…考えた事もなかった…
酔っ払った親父が
『何?今日は若い女性がいっぱい来るのか?
楽しみだな~(笑)』とか言っている…
おい、ハゲ親父…俺は笑えないよ

彼女が横に居るから
きょどる訳にもいかなかった
30日以来会ってないし、連絡すら取れなかった美樹さんが何故、姉からの誘いを断らなかったのか気になったが
彼女に楽しんでもらう事にも集中しなきゃいけないので
俺は美樹さんの事をその場で、それ以上考えるのをヤメた…
来ると教えられてから、1時間以上経った頃
インターホンが鳴り、姉さんや母親は料理中の為
俺が玄関へ迎えに行くことに…
玄関を開けると、美樹さんとクリスマスに会った女友達が立っていた
美樹さんが少し態度が悪いので、機嫌が悪そうなのは、見てすぐわかった

二人が席につき
改めて乾杯をし、新年会が始まった
俺はなるべく彼女と美樹さんが接触しないようにしていたが、そんな時に
美樹さんが笑顔で
『〇〇の隣に居るのが噂の彼女さん?はじめまして、美樹ですよろしくね』と彼女に話しかけた
その笑顔…俺は怖かった
その後は何もなく時間は流れたが
時々、美樹さんが
『〇〇』と俺の事を美樹さんが呼び捨てにすることがあり、その度に姉と彼女は不思議そうに見ていた
美樹さんが俺を呼び捨てにするたびに、彼女の機嫌が悪くなっていってる気がした
俺は何となく美樹さんが怖くなってきていた…

気がつくと親父が居なくなってた
親父を見つけたのは彼女だった
トイレに行ったはずの彼女が戻ってきたと思うと
『あの…お父さん…トイレで寝てますけど…』
親父は美樹さんともう一人の女性の間でお酌され
限界を越えてまで飲んだらしく、便座を枕に寝てしまっていた
兄貴と俺で、親父を布団に運び寝かしつけ、居間へ戻ると、新年会も終わりの雰囲気だった
俺は車で彼女を送ることにし、家を後にした
『今日は色々ごめんな
せっかくだし少し夜景を見てから帰るか?』と聞くと
『見てみたい!〇〇の運転初めてだけど大丈夫なの~(笑)』

俺は車を走らせ、美樹さんといつも来ていた夜景の見える場所に向かった
車を止め、他愛もない話をし、時々キスをした
胸を触ると『車ではダメだよ』と言われ、キスだけだった
キスをしながら、彼女の方の窓の外を見てると1台の車が停まった
最初はあまら気にしてはいなかったが、よく見ると美樹さんの車に似ていた
俺は少し怖くなり
『そろそろ帰らなきゃな』と言い、車を出した
離れる間際、隣の車のナンバーを確認すると、やっぱり美樹さんの車だった…
『なんで?』
少し怖くなった俺は、その場を急いで走り去り、彼女の家に向かった

『何故いたんだ?どうしてわざわざ俺の横に来たのか?
美樹さんは誰かと一緒?それとも一人?』
俺は困惑していた…
そんな時に今度は彼女が
『ねぇ、今日新年会に居た美樹さんって、初詣での時に電話くれた人だよね?
なんで〇〇の事、呼び捨てなの?
そんなに親しいの?
なんか呼び捨てにする度にイラッとしちゃった』
やっぱり彼女はイラついてた
『あの人、遠距離の婚約者いるらしいよ
姉に紹介されて俺が通ってる歯医者の受付の一人なのさ
それで、何度か顔合わせるうちに親しくなっただけだよ
だいたい、年上過ぎるじゃん!(笑)』

『婚約者…歯医者…年上』
それを聞くと彼女は、その事には何も言わなかった
降りる間際
『これからしばらくは本当に会えなくなっちゃうけど、浮気すんなよ~
今度はドライブ連れてってね♪』
おやすみ♪とキスをすると彼女は帰っていった

考えたいことだらけだった俺は、真っ直ぐ帰らず、近所のファミレスに寄る事にした
正直、美樹さんの行動が不可解すぎて、理由を考えると眠れそうになかったから
『コーヒー1杯飲んだら帰ろう』そう思い
ファミレスに車を停め、車から降りると
『私も一緒にいい?』と声が…美樹さんだ…

『美樹…なんでここに?…』
『〇〇ん家から帰る途中、〇〇がここに寄るの見えたから…迷惑なら帰るけど?』

…さっき夜景の場所に居たじゃん…美樹さんは俺が気がついてないと思ってんの?
それとも俺の見間違い?…
言葉にしようとしたが、美樹さんが俺と連絡取れなかった理由…いや、取らなかった理由
それと今日の不可解な行動の理由を知りたかった俺は拒否はせず一緒にファミレスに入った

コーヒーが届き、ミルクを交ぜていると、美樹さんの方から切り出した
『ねぇ、彼女とは別れるつもりないの?
私は〇〇のなんなの?』

『私は〇〇との為に婚約者と別れたよね
だからね…〇〇にも彼女と別れて欲しい…
選ぶまでは二股でいいよって言ったのは私だけど
まだ時間が必要?
私だけじゃダメ?
私はもっと待ってなきゃダメなの?………』
美樹さんは言葉を並べると泣きだしてしまった
たぶん、会わない間、美樹さんはずっと考え、悩んでたんだと思った…
俺は返してあげる言葉すら思いつかなかった
さっきまで俺は美樹さんの事が怖いと思えていたのに、いざ別れなきゃいけない…と思うと惜しくなった…
別れの言葉ではなく、繋ぎ止める為の言葉を探していた…

『美樹の事は凄く大切に考えてます
でも…彼女とは付き合いも長い分、情もあるし…急に別れるのは…
美樹さんと彼女を比べるのは無理だから…
あれは美樹がいいけど、これは彼女が良いからみたいな選び方はできなし…
俺は何ヶ月か一緒に居て、最終的に一緒に居たい方を選ぶつもりでいました
美樹さんとは別れたくないけど、美樹さんが待てないなら仕方ないですよね…
僕はもう少時間が欲しかったです…』
俺はズルイ…
こう言えば、美樹さんの答えはわかっていたから…
美樹さんは少しコーヒーに口を付け、俺の方を見て話しだした…

『そうだよね…
〇〇はまだ若いんだもん、そんな早く決断できないよね…
逆に私は30手前だから、焦っちゃってて…
そんなに長くは待つ自信ないけど…
じゃあ、もう少しだけ待ってもいい?』
話が自分の思ってた方向へ進んでくれた
こんな事で美樹さんとの楽しい性活を失いたくなかったから、正直俺はホッとした
時間も時間なので、俺と美樹さんはファミレスを出た
別れ際
『さっき、二人でよく行く夜景の場所にいなかった?』と聞くと
『独りで行く訳ないじゃん…どうして?』と逆に聞かれた
やっぱり俺の見間違いだったのだろうか…

それ以降、しばらくは
美樹さんに目立った行動はなかった
美樹さんとは週2回程、夜中に会っていたが、少しの会話と車の中でのフェラだけだった
俺も美樹さんをイジりたかったし、エッチもしたかったが
『車は狭いから…またホテルでね』と言われ、度々誘うも断られ続けていた
その代わりにフェラされた後は家に帰ると
美樹さんは電話でオナニーを聞かせてくれた
オナニーを聞く時は、家の子機だったので
親機から家族の誰かに聞かれたら、どうしようかと俺は、いつもハラハラだった
美樹さんとは、そんな関係が一ヶ月程続いていた

彼女の受験も落ち着い頃
少し遅れたがバレンタインデーのプレゼントをしたいと彼女が言うので
俺は彼女を家に呼んだ
彼女が来る前に掃除をしようと掃除機を取りに下に降りると
居間には姉の友達が遊びに来ていた
姉に相談に来ていたらしく、何やら難しそうな雰囲気だった
『美樹が婚約者と別れた話聞いた?
去年の暮れ辺りにダメになったらしいよ…
ダメになった理由を美樹に聞いてみたんだけど、答えてくれないんだよね…
別れは仕方ない事だけど、美樹、もしかしたら妊娠してるみたいなのさ…』
二人の会話を聞いてしまった…
妊娠…?

確かに、美樹さんとはバレンタインデーに少し会ったっきりだった…
ここ10日程は
『体調が悪いから少しの間会えない』と言われ、会ってなかった…
『でも…俺の子か?たった4回しかしてないじゃん…やったのだって2ヶ月前だしさ…
美樹さんの勘違いじゃないの?
…でも俺、朝寝ぼけて中出ししちゃったよな…』
さすがに妊娠となると、彼女を呼んでる場合じゃなかった俺は
彼女に嘘をつき、ドタキャンすると、美樹さんの勤める歯医者に向かった
受付に急患のフリをし、診察券を出したが
まわりを見渡すと美樹さんの姿はなかった

居ないなら『来た意味がない』と思った俺は
受付をキャンセルし、美樹さんの携帯に電話した
『どうしたの?何かあったの?』
電話越しの美樹さんの声は普段と何も変わらなかった
『いや、美樹に会いたかったから、痛いフリして歯医者で受付したのに、美樹さん休みみたいだったから
よっぽど体調悪いのかと心配になって…』
さすがに妊娠の事を急には切り出せなかった…
『そっかぁ…嬉しいな…
しばらく会ってないもんね…
じゃあ、今から待ち合わせしよっか?』
電話を切ると俺は待ち合わせ場所の近所のファミレスへ向かった

30分程すると美樹さんがやってきた
『身体大丈夫なの?』と聞くと
美樹さんは
『そんなに病弱じゃないよ』と笑い、席についた
二人は会えなかった間にあった出来事を話した
少し落ち着いた頃
『二人っきりになりたくない?』との美樹さんの誘いがあり、ラブホテルへ向かった
入ったホテルは、できたばかりっぽく、かなり綺麗だった
俺の想像だと、ラブホテルはオッサンやオバちゃんががエッチする汚い場所ってイメージがあった
入り方にドキドキしたが、美樹さんが慣れた感じで入って行くので、俺はそれについて行くだけだった

美樹さんに妊娠の事を確認するつもりで会ったはずだったのに…
部屋に入ると料金を払い、俺はとりあえず風呂をためた
初めて入るラブホに興味津々な俺は、いたる所を開けてまわった
ベットに横になり、メニューに夢中になっていると
『大人のおもちゃ』のカタログがあった
食いつくように見ている俺に美樹さんは
『サービスタイムだから、まだ4時間位は居れるみたいだね
でも、そんなもの見に来た訳じゃないでしょ?(笑)』
俺の横に横たわり、そう話すと美樹さんの方からキスをしてきた
しばらくぶりのキスだった…

俺は美樹さんの唇に
むしゃぶりつくように吸い付いた
舌で唇のまわりを舐めたり、何度も何度も舌を絡めた
『がっつき過ぎだよ(笑)どうしたの?なんかあったの?』
美樹さんは、びっくりしたのか
俺から離れると、冷蔵庫に行くとビールに口を付けた
『おもちゃに興味あるの?美樹もあるけど、使った事ないさ(笑)
バイブって、女の子一人じゃ買えないしね
せっかくだし買っちゃう?もし買えば、美樹が普段使えるし、買ってもいいよ♪』
美樹はピンクローターを選び、俺は少し大きめのバイブを選び、それぞれ1つづつ買った

風呂に入り
二人で身体を流し合った
湯舟に二人で浸かると
キスをしながら、柔らかいオッパイに吸い付いたりした
でも俺はバイブが気になり、美樹さんより先に上がってしまった
電池を入れ、スイッチを押すと、部屋中に
『ヴゥィィーン』って音が響きわたり、クネクネ動いていた…
『先に上がったと思ったら、バイブが気になってたの?
美樹との久しぶりのお風呂タイムより大事なの~?』
美樹さんは俺に近づき、股間を軽くつねると耳元に近づき
『早く、美樹にそれ使って…気持ちよくさせてね…』と囁き、電気を薄暗くした

乳首にローターを軽く当てると
美樹さんは、ピクっとのけ反り、溜め息混じりの声を出した
俺は乳首を舐めながら
美樹さんの鎖骨から下へと身体の線を沿うようにローターを這わせていき
アソコのまわりを何度か這わせた後、ローターをクリに当てた
『ハァハァ…ん…ねぇ…もう少し軽く当ててみて…』
軽く当て続けると、どんどん美樹さんの声が大きくなっていった
『ィィ…凄い…ぃぃ…イイ…スゴイ変になっちゃう…あぁ~』
少しイジワルしたくなった俺は、ローターを一度クリから離し、アソコのまわりをゆっくりと這わせた…

美樹さんは小さくハァハァと息を切らしながら
『お願い…いじわるしないで…
イキそうだったの…
イカせて…お願い…最後は〇〇の舌でイカせて…』
俺はローターをアソコの奥に入れると
美樹さんの上に69の形で乗ると
ひたすら、唇で軽くクリの回りを吸いながら、舌で舐め続けた
『奥が変…あぁ…クリぃぃ…ぃぃ…イッちゃう…イカせて…お願い…イカせて…イク…イク…アッアッ…』
声が少し落ち着き、呼吸を整えていた
イッた事と思った俺は
ローターを抜かず、美樹さんに何も言わずに
体勢をずらし、美樹さんの中に入りこみ、激しく腰を振った

『アッ…え?何で?
…アッ…〇〇のまだ舐めてないよ…
アッ…ローター抜いてなぃ…奥気持ちぃぃぃぃ…
お願い…もっと奥ついて…』
ローターの振動が俺の先にも伝わった
いつもと違う感じと、美樹さんの言葉に俺は必死に腰を振る事だけに集中した
『美樹、俺、そろそろイキそう…イクよ』

『ねぇ、中にちょうだい…今日、大丈夫な日だから…絶対大丈夫だから…
ねぇ…中に出して…いっぱい出して…子宮にかけて…アッ』
中で俺が脈打つ…その度に美樹さんも身体をピクピクさせていた…
すぐには抜かず、俺は美樹さんを抱き、何度もキスをした

少し抱きあった後
俺が抜くとドロッと精液が出た
ローターは精液まみれだった
少し休み、二人で風呂に入り、上がると裸のまま、ベットの上で抱き合い、何度もキスをし、他愛もない会話をした
『ねぇ美樹のこと好き?』と何度も聞かれ
その度に『大好きだよ』と答えた

その日はそれ以上の事はなく、時間になるとホテルを出た

家に帰り、飯を食べた俺はすぐ部屋で横になった
『妊娠の事聞けなかった…でも、お酒も飲んでたし…生理来たのかな…
やっぱり本人には聞きづらいから…姉さんから聞きださなきゃ…』
その日は眠れませんでした…

実際、姉さんに
『美樹さん、妊娠したの?』
なんて、唐突には聞けなかった
こんな時こそ、兄貴に相談しよう…姉さんから話も兄貴なら聞きやすいだろうし…
『兄貴が帰ってきたら、相談しよう』
とりあえずは、何とかなるはずだし…
その事を頭の中で軽く整理した俺は次に彼女へ電話した
彼女は昨日のドタキャンに腹が立ったらしく、口かずも少なかった
俺がキレたらいけない…と思い、一生懸命謝ってみたが、彼女のあまりにも酷い傲慢な態度に腹が立ち、俺は途中で電話を切ってしまった

自分が悪いくせに…
二股なくせに…

その夜、バイトから帰ると
兄貴は寝てしまっていた
相談したくて、早く帰ってきたのに…
暇だな…
俺は美樹さんと話をしようと電話をした…
10分程話しをしてると
『会った方が早いね。迎えに行くから抜け出せる?』
家族も寝静まっていたので、抜け出すのは簡単だった
待ち合わせ場所に行くと美樹さんは先に待っていてくれた
いつもの夜景の場所へ行き、いつものようにフェラされた後、二人で話ていると
『ねぇ、そろそろ家捜しに行くんだよね?ついていっていい?』
『もしかしたら私も一緒に住むかもしれないしね♪』

断れなかった
次の日曜日、二人で物件捜しに行く約束をし
その日は早めに帰った

翌日、『昨日は怒りすぎてごめんね…』と彼女から電話が来た
『日曜日なら〇〇バイト休みでしょ? 遊びに行っていい?』
彼女に予定を見透かされてるようで怖かった…
『ごめん、日曜は兄貴と物件捜しに行く予定だ
兄貴の予定に合わせると日曜しかなかったから…
ごめん、遊べないかな…』
こじつけたような二つ目の言葉が悪かったのか
彼女は
『ふーん、何か〇〇、最近変だね
まぁ、お兄さんとなら仕方ないけどさ
なんか、最近、ずらされてる感じ…』

電話を切る間際
『〇〇、浮気したりしてないよね?
間違っても、しないでね(笑)』
彼女の言葉が痛かった…

兄貴の仕事が忙しいらしく
俺は兄貴に相談すらできないでいた…
日曜日、俺は専門学校のある付近のアパートを捜しに隣街に美樹さんの車で向かった
向かう最中
『ねぇ、最近、〇〇ん家にクリスマスにあった美樹の友達来てなかったかな?』
この質問にはびっくりしたが
『あぁ~あの人来てたよ~
何か、姉さんと深刻そうな話して帰ってったよ』
『あの人なんかあったの?』
お互い少し遠回しな言い方だけど、チャンスだと思った

『あの人に何かあった訳じゃないんだけど…
美樹がね…ほら、婚約破棄とかさ…
……ん~まぁ、ちょっとね…
〇〇にも落ち着いたら話すね』

『とか』が気になった…
…いま、聞き出さなきゃ…
『えぇ~落ち着くまで待てねーよ…いま話してよ
俺、そーゆーの気になってダメだからさ』
美樹さんは少しタメを作った後
『ん~でも、まだわかんないから…おばさんになると色々あるの!(笑)』
最後は笑って、ごまかされてしまった
でも、これ以上は突っ込んで聞けない俺は
『おばちゃんだからかぁ~(笑)』と話を合わせてしまった

5~6件見てまわり、俺はなりべく学校に近く気に入った物件を見つけた
美樹さんも不満はなさそうなのか口を出さないので、仮契約をすませ、自分の街へ戻ることにした
美樹さんが『少し寄り道してく?
近場に白鳥の見れる人気のない場所あるんだけど…』と言い、時間も早かったので行く事にした
着いた場所はかなり国道からはずれたとこで
駐車場の前に川のような小さな細長い池があった
『白鳥…今日はいなかったね…ごめん…せっかくだし、少し休んでから帰ろう』
と言うと二人でシートを倒し、手を繋ぎながら横になった

『ねぇ、どっちか決まりそう?…
美樹か彼女…』

『う~ん、まだ迷ってるよ…』
俺が答えると美樹さんはこちらを見ないまま話しだした
『あのね…元カレから…やり直したいってね、言われたの…
でも、〇〇の返事を待ちたいし…
他にもちょっと色々あって、どうしたらいいのか迷ってるんだ…
〇〇は本当に美樹の事好きなんだよね?
遊びじゃなく、迷ってるんだよね?…
大事に思ってくれてるんでしょ?』

途中からの口調が怖い時の美樹さんに変わってくのがわかった

『ちゃんと考えてます
そろそろ答え出さなきゃ…って…』

俺の言葉を聞くと、美樹さんは
繋いでた手をギュッと握りしめた
俺が美樹さんの方を向くと美樹さんは何も言わずキスをしてきた
少し切ない感じが伝わるキスだった…
そのまま、美樹さんは何も話さずに、俺の下半身を裸にすると
何も言わず、しゃぶった
いつもと違い夕暮れより少し前だったので
車の中でむしゃぶりつく、美樹さんの美味しそうに食べる顔、口の動き、舌使いは丸見えだった…
いつもと違う場所、違う時間だったから、俺は
『誰か来たらどうしよう…ここはすぐ横をたまに車が通るから…』
そう考えると余計に興奮した…

イキそうになり、先っぽが膨脹し始めた頃、美樹さんが少し吐きそうになっていた
『美樹どうした?大丈夫?』って聞くと
首を大丈夫と縦に振るだけで、美樹さんはそのまま続けた

ジュルジュル音が出ると同時に美樹さんの唇の動きが早くなる
『美樹、出すよ』
一言告げた後、俺は美樹の口の中にタップリ出した
受けた途端に美樹さんは、珍しく口をすぐ離し、車の外に吐き出した
『ごめん…まだ調子悪いの治ってなくて
〇〇の飲んであげられなかった』
俺は美樹さんの口をテッシュで拭いてあげた後
自分のも搾り出して綺麗にした

吐いたのが気になったが
俺の量が多かったんだと思った
美樹さんには普段から多いって言われてたから
少し遅くなってしまったので、美樹さんは俺に気を使い、二人で食事する予定もキャンセルし、俺を家に送り届けてくれた
家に帰ると母親から
『〇〇子ちゃんから夕方電話あったよ
何度電話してもアンタが圏外で繋がらないって言ってたよ
すぐ電話してあげなさいよ』

母親に余計な事は話してないか確認すると大丈夫そうだった…
『今日の事はバレてない』と安心した俺は、すぐ彼女に電話した
最初は圏外の事にブーブー文句を言っていた

愚痴が落ち着くと彼女が
『ねぇ、二人で卒業旅行行かない?
クリスマスはダメだったけど
今度は頑張るから…ねぇ?行こうよ』
嬉しい誘いだった
場所や日にちは決め、予約の手続きは彼女が仕切るとの事だった

ただ一瞬、美樹さんが頭に浮かんだ…
『1泊2日だし、バレないよな…』

それからしばらく、俺は彼女と旅行の為、バイトの日数を増やす事にした
給料日じゃ間に合わないので、親父に前借りする事にし、着々と旅行の準備をしていった
バイトを増やす事により、美樹さんと会える日も増やし、怪しまれないようにする事にした

彼女と約束してから数日後
兄貴と俺の休みが重なった
俺は『相談がある』と兄貴を外に連れ出し、ファミレスへ向かった

『あのさ…数日前に姉さんとその友達が
「美樹さんが妊娠した」
みたいな話をしてたんだけど、兄貴、何か知らない?』
兄貴は、あっけらかんとした顔で俺を見た後
『なんで、お前が気にする?ヤッたのか?いつよ?』急に口ぶりが変わった…
『クリスマスに兄貴に頼んで外泊した日…
俺、経験少なかったから、ミスしたのかって不安で…』
初体験に間違って中出ししちゃったなんて言えなかった…
兄貴は俺を睨みつけると

『テメー馬鹿野郎!
美樹ちゃんには婚約者がいるだろうが!あっ?
知ってて、テメーは何やってんだコラ!
しかもテメーにも〇〇子ちゃんが居るだろうが!』

…兄貴に相談するのは少し早かったかな…何も知らない感じだし…

『婚約は破談になったらしいよ…詳しくは知らないけど…
〇〇子が居るのに美樹さんに手を出した事は事情があって…』
『ごめん、兄貴…妊娠の話調べてくれない?』

兄貴は一言
『わかった』と言うだけだった
店を出た途端、ガツンと兄貴に殴られた
軽い小競り合いはあっても本気で殴られたのは、初めてだった

兄貴に本気で殴られて
初めて自分がどれだけダラシ無く、いい加減だったか身に染みた…
それから数日、兄貴とはすれ違いで家の中でも会えなかった…
美樹さんには家で色々あって…少し会えないと話し
彼女には、旅行に行く為にしばらく大人しなきゃいけないから少し会えないと話し
どちらとも会わず、バイト以外は部屋に引きこもり、二人の事を真剣に考えた…
彼女が好きだけども、美樹さんにした事、してきた事を考えると…妊娠の話抜きにしても、責任はあると思ってたから…
美樹さんにも彼女にも俺は酷い事をしてしまったから…

数日間、ただ働き、ただ寝るだけの数日だった
卒業式を間近に控えた頃
夜、帰ると居間に兄貴と姉、そして姉が呼んだらしく美樹さんが居た
『少し話がある』と言われた後
兄貴に『家の中じゃ話しにくい話だから出るか』と言われ、近所のファミレスへ向かった

席につき、最初に口を開いたのは美樹さんだった…
『あのね…もう聞いて知ってるかもしれないけど、妊娠したみたいなの…
たぶん…〇〇の子だと思う…クリスマスに中出ししちゃったよね?
私、妊娠に気付いてからずっと考えて、悩んでたんだけど…』
『…産みたいって思ってるの…』

背筋が凍る感じがした…
『責任』って言葉が
頭ん中でグルグル回ってた…
『おまえもガキじゃないんだから
中に出せば子供が出来るかもって、知ってるよな?
…若いから興味あるのも理解できるし
気持ちいいのを知ると初めは癖になるしのもわかる…
ただ、リスクもあるよな…おまえ、どうする気よ?
もうすぐ高校卒業して、来月からは専門学校行くんだろ?
美樹さんから聞いた話だと「おまえから美樹さんに婚約者と別れて欲しい
自分も彼女と別れるから」って言って、関係が始まったらしいじゃん
だったら何故、彼女と別れねーのよ?』

兄貴と姉は俺を睨みつけていた

…俺が別れさせた?…何その話?…美樹さん何言ってんの?…
俺は兄貴の話を聞き、美樹さんに裏切られ、騙された気分だった…

『ねぇ、義理の弟だから、あまり言いたくないけど
女にだらし無さ過ぎじゃない?
美樹は私の1番大切な友達なのに…
責任も取れないくせに、何やってんの?
あんたは若いからいいけど、美樹は真剣に結婚考えなきゃいけない年なんだよ?
美樹だって…結婚が目前だったところだったのに…
結婚が決まってる女まで騙して、別れさせてまで遊んで…
本当、何考えてんの?』

姉に言われた言葉は、どれも自分には辛かった
妊娠って事実がある以上
俺が美樹さんについた嘘を兄貴と姉に弁解したところで何も始まらない…
俺は何も言えなかった…

姉はさらに続けた…
『新年会の日だって、終わった後、美樹に夜景の見える場所で待ち合わせしようって言ったくせに
美樹がその場所へ行くと、彼女とエッチな事してたんだって?
美樹としといて、彼女ともしてんの?
女を馬鹿にしすぎじゃない?』
まだ続けようとする姉さんだったが
『いまは、とりあえず美樹さんのお腹の子の話だろ!』と兄貴が言い、姉の言葉は止まった

美樹さん…
あの時居たんだ…気のせいじゃなかったんだ…

『どうする?とりあえず、美樹さんと二人っきりで話すか?
それとも、第三者が居た方がいいか?』
姉さんがいると話がこじれそうなので、兄貴が気を使って案を出した
『とりあえず、二人で落ち着いて、話したい
それで、結論が出た時や余計にこじれた時に、また第三者として、兄貴に後日立ち合って欲しいな』
俺はこの場で、これ以上、美樹さんの嘘で話をこじらされたくなかったし、姉にこれ以上責められるのも辛かったので、二人を選び、兄貴達には先に帰ってもらった

二人になると、しばらく沈黙が続いた…
『あのね…』切り出したのは美樹さんだった
『あのね…〇〇の姉に言ったのは美樹じゃないの…
昨日、クリスマスの時の友達が来て…
しつこく妊娠や婚約破棄について聞くから…
私も誰かに相談したい位悩んでたから、つい話したの…
そしたら、〇〇の姉さんに全然違う話で伝わっちゃって…
ごめんね……ごめんなさい』

美樹さんの言葉…信じられるはずもなかった…

『じゃあ…何故、新年会の後の俺と彼女の行動すら、兄貴達は知ってるの?
ってか、何故、俺達の行動すら知ってんの?』

『美樹さん、やっぱり、あの夜…俺達の事覗いてたのか?』
強い口調で言ってしまった
『ごめんなさい、覗くつもりはなかったの…
ただ…二人が気になって…自分でも見たくなかったのに…』
そう言いながら、美樹さんは泣いてしまった
妊娠の話をしなきゃいけないのに…
全然、話が前へ進まない…
美樹さんが泣く事により
まわりがチラチラ俺達を見る…とても気まずく、居心地が悪かった…

また、しばらくの沈黙が続いた時、俺の電話が鳴った…彼女からだった…
俺は美樹さんを店に待たせ、外へ出ると彼女へ電話した

『こんな夜遅くなってからどうした?何かあったの?』
と聞くと
『あのね、旅行の日と場所が決まったから
早く教えたくて電話したの…
もう寝てた?普段なら〇〇起きてる頃だと思ったから、電話したんだけど…
ねぇ…何かなきゃ最近は電話もダメなの?
どうして最近冷たいの?
〇〇、やっぱり最近少し変だよ…
ごめん…
一緒に同じ位喜んでくれる話だと思ったから電話したのに、〇〇は嬉しくないみたいだね…
電話越しに車の音も聞こえるね…
隠れて、何してるの?…
やっぱり答えなくていい…
聞きたくないや…またね…おやすみなさい』

彼女に電話を切られてしまった…彼女が怒るのは当然…
やっぱり…ちゃんと、はっきりしなきゃ…
店に戻ると席に美樹さんの姿はなかった…
数分後、化粧をなおして、美樹さんは現れた
もう泣いてはいなかった
『電話は彼女の〇〇子ちゃんから?』

『うん…まぁ…』

『美樹には、しばらく電話できないみたいな事言ってたのに、彼女とは、その間も仲良く電話してたの?』
『いや、いまの電話はたまたまだし、彼女との電話も本当に久しぶりだよ…
はっきりさせなきゃって思って、ずっと二人と距離をおいて、考えてたから…』

『子供が出来たんだから
美樹を選んでくれるんじゃないの?
美樹におろせって言いたいの?
それとも、産みたいなら勝手に一人で育てろって言いたいの?
あれだけしゃぶらせて…あれだけ好きって言わせて…
いざ子供が出来たら面倒臭いからって、さよならする気?』

何も言えなかった…
美樹さんの言い分に間違いはなかったから…


『彼女と別れられないなら、直接彼女に会って言ってあげようか?』
私から「子供が出来たから、〇〇は私と一緒になります」ってさ…
『彼女の家の住所って、〇〇〇〇でしょ?
明日、私一人で行こうか?』

美樹さんが彼女の家を知ってるのが怖かった…

夜景の後にも、ついて来てたんだとわかった…
『美樹は何日も前に妊娠の事を知り、悩んで答えを出したから
今日、俺に話したんだろうけど…
俺はさっき知ったばかりなんだよ…
聞かされた次の瞬間に答え出せって言われても…』

『それに俺だって、美樹に聞きたい事がある…
なぜ「たぶん」俺の子なの?
たぶんって何?俺以外の可能性もあるって事?
もしそうなら、去年最後に会ってから、新年会で会うまでの間、4日間位音信不通な事あったよね…誰かと居たの?』
…美樹さんの表情が変わった

俺は美樹さんの顔色を無視し、話を続けた
『それにクリスマス前にも元カレに会ってたよね…
別に美樹を疑って、元カレを引っ張り出してまで責任転換するつもりじゃないけどさ…
それにさ…美樹が俺の代わりに彼女に別れ話をするって何?…
〇〇子の家を知ってたり…少し変だよ…』

それっきり美樹さんは、うつむいたまま、しばらく何も話をしてくれませんでした
互いに揚げ足ばかりの取り合いじゃ、前に進めないのは、わかってました…
ただ、美樹さんの表情が変わった事を考えると
『きっと何か隠してる…』
と考えずにはいられなかった…

『私…明日仕事だから…
そろそろ帰らなきゃ…
明日…また時間作って、会える?
少し冷静になりたいし…
〇〇も時間が必要だと思うし…』
美樹さんの言葉に俺は頷いた
俺も少し考えたかったし、兄貴達の誤解を解き、もう一度相談したかったから…
美樹さんが帰った後、俺も残りのコーヒーを飲み干し、家に帰り布団に入った

美樹さんの友達が招いた誤解なのか…美樹さんが兄貴達に直接嘘を吹き込んだのか…
美樹さんの妊娠は間違いなく俺の子なのか…
何故、ストーカーみたいな事までしてたのか…
そんな事を考えると眠れなかった…

次の日、目が覚めると昼を過ぎていた
彼女への誤解を解きたい俺は、すぐに彼女へ電話した
彼女は電話に出てくれず、俺は彼女に言い訳を聞いてもらう為に彼女の家へ向った
彼女の家に着くも、誰も出てくれず
留守のようだった…
むだ足になってしまった
仕方なく俺はバスで駅の方へ戻り、美樹さんとの待ち合わせまでの間、ふらふらと時間を潰す事にした
少しすると携帯が鳴った
彼女からだ…
『ごめん、いままで人と会ってて…
〇〇に話があるんだけど…今日休み?
今から会える?』
居場所を伝え、俺は彼女と駅で待ち合わせをした

待ち合わせ場所に来た彼女…
いつもと少し違う感じがした
『昨日はごめん…詳しく話したかったから
俺、〇〇子に会うのにさ、さっき家に行ったんだよ…
でも、〇〇子から電話来て良かった…
俺、てっきりさ…』
俺の言葉を遮るように彼女が言葉を被せた
『とりあえず、どこか話せるところに入ろう…』
そう言うと、彼女は足早に俺の先を歩きだした
今まで、どんなに喧嘩しても同じ歩幅で、隣を歩いてくれたはずなのに…
今日は違うのが少し寂しかった…
俺より先を歩く彼女の背中は怒ってる感じよりも
むしろ、少し淋しい感じがした…

彼女は適当に店を選ぶと
『ここでいいよね』
と店に入っていった
彼女が選んだ店は、殺風景な中に
小さな音でジャズが流れている少し感じがいい小さな喫茶店だった
『午前中にね…美樹さんが私の家に来たの… 』
彼女の言葉に俺はゾッとした
『〇〇の事で、話があるって言うから
家に上がってもらい、私の部屋で美樹さんと話した…全部聞いたよ…』

『美樹さんから何を聞いた?』
彼女は俺の質問にすぐには答えてくれなかった…
俺の顔色を伺うと彼女は
『美樹さんから聞いた話…本当みたいだね…
やっぱり会わなきゃ良かった…』

彼女は泣くのを堪えながら
『とりあえず旅行はキャンセルしとくね…』
といい、黙ってしまった

『なぁ、〇〇子…美樹さんから何を聞かされた?
何を聞かされたのか知らないけど、一人で結論を出すより
俺の話を聞くのが先じゃないのか?
俺より美樹さんを信じるの?』
俺は丁寧に優しく彼女へ話した

彼女が選んだ店が静かな喫茶店で良かった
もし大きな店や雑踏の中なら、俺の話を聞こうとしない彼女に対し、俺は怒鳴っていたかもしれないし
そうなれば、彼女も負けずに言い返してきただろうから、間違いなく大喧嘩になってたはずだから

『婚約者と別れて、俺と付き合ってくれって
〇〇に言われ、去年の暮れから付き合ってるんだけど
〇〇子ちゃんが俺と別れたがらないってね
彼が言うから、今日は私が直接、あなたに別れをお願いしに来たの…
もうしつこく付き纏わないで…
もう彼には会わないで欲しい』
って、美樹さんに言われたの…

私は
『そんな事実知らないし、…美樹さんと〇〇の関係も信じられなかったから
美樹さんに本当か確かめたんだけど…』
美樹さんから
『〇〇は優しいから言い出せなくて
彼女に別れを言えない事を…私に嘘をついてたのかもね…』って…

そしてね…
『でも…〇〇子ちゃんも私から話した事で、わかったでしょ?』
って、美樹さんに言われて…
…話してる最中、チャイムが鳴ったけど、〇〇だと思わなかったから出なかったの…
あと、帰り際に…
『昨日の夜中、〇〇は外に居たでしょ?
あれね、私と居たの。
彼、あなたからの電話、面倒臭そうにしてたわよ』
って言われて、美樹さんの話は本当なんだなって…
美樹さんから聞いた事が本当なら
〇〇が最近、冷たいのも、遊びもドタキャンした事も全て結び付くから…
それにさっきの困る〇〇の顔見て、間違いないんだなって…

美樹さんが彼女に言った事を聞かされ、愕然とした…
『あとは何を言われた?』

『あとは何も言われてないよ…それだけ言ったら、帰っちゃったから…』

…妊娠の話をしないんておかしいな…

『俺の話…聞く気あるか?』
彼女が小さく頷いた
『前にも話したけど…美樹さんとは姉さんの紹介の歯医者で知り合った
何度か食事に誘われて、会った程度で
俺としたら姉さんの友達にご飯に連れてってもらった程度
美樹さんがちょうどその時期に婚約者と別れたらしいんだけど、俺とは無関係だから…なんでもないから…』
心が痛かった…

俺と美樹さんの関係…
彼女に真実は言えなかった…
一生嘘を突き通してでも、彼女を失いたくなかったから…
これじゃ、俺のやってる事は美樹さんのつく嘘と一緒なのに…

『じゃあ…どうして、美樹さんは私のところに来てまで、そんな話をしたの?
何かあったからでしょ?』
彼女の質問に答える度に傷口が広がってく…
『何もやましい事はないよ…
何度目かの食事の時に
「彼女と別れて、私と付き合わない?」と言われたけど、きちんと断ったし
それ以降は会ってもいないし…』
こんな嘘で簡単に美樹さんとの関係をごまかせる訳なかった…

『それと美樹さんと昨日の夜中一緒に居たのは
二人っきりじゃなく、兄貴達も居たから…』
しばらく沈黙が続いた後
彼女が
『…何かね…聞いてると無理がある…気がする…
ごめんね…信じたいけど
〇〇が話す事が真実だとしても
今は無理かも…ただ、信じたいし…
美樹さんに言われた事を考えると少し変だと思えてきた…
けど、すぐに仲直りは無理…とりあえず、少し時間置きたい…
もう一度、話し合う時間は作るから…』
店を出ると
『一人になりたいから、ここで…バイバイしようね…また連絡するね…』
彼女は振り返らず帰っていった…

彼女が帰った後
俺は駅へ戻り、美樹さんへ何度か電話したが電話には出てくれなかった
家に帰った後も、美樹さんからの電話を待ったが
結局、その日、美樹さんから連絡は来なかった…

美樹さんの行動は、お腹に子供が居るのを知りながらも、彼女を選ぼうとした俺への
『宣戦布告』
のような気がした…

翌日、俺は仕事が終わった兄貴と居酒屋で待ち合わせた
姉さんを一緒に呼ぶと、ややこしくなる気がしたので
兄貴から姉さんにこの話をしてもらう事にした
俺は兄貴に正直に隠す事なく、今までに美樹さんとあった全ての事を話した…

兄貴は黙って俺の話しを聞いてくれた
そして…
『話は大体わかった…
美樹さんの行動や発言に多少奇妙なとこがあるってのも…
その事は帰ったら女房に話して、探ってもらってやる…
ただ、妊娠は事実だし、お前に責任があるかもしれないのも事実…
まずは冷静に考えた後、美樹さんともう一度ちゃんと会って話し合え
子供がお腹の中で大きくなった頃に結論出したって遅いんだからよ』
兄貴はそれ以上、この話に触れなかった
店を出た後、兄貴は真っ直ぐ家に帰ってた
俺はまだ家に帰りたくなくて…職場の先輩の飲んでる場所へ顔を出す事にした

教えられた住所に着くと
先輩の飲んでる場所はまたスナックだった
緊張しながらドアを開けると
酔っ払った先輩と店の女の子が二人しか居なかった
先輩の隣に座ると、先輩は目の前の女性と軽快に話していた

…先輩、今度はその女性に夢中なんすね…口が半開きですよ…

来てはみたけど、先輩に愚痴ったり、相談できる雰囲気じゃなかった
『久しぶりなんだし、今日は楽しく飲むぞ!』
先輩の言葉で気持ちが少し楽になった気がした
『そうですね~楽しくゴチになっちゃいます!』俺は先輩に答えるように
目の前に置かれたグラスを飲み干した

確かに美樹さんと関係を持ってからは
心休まる日もなかったし
性欲の処理以外は、つねに精神的に辛かった

俺はそのグラスを飲み干した後もガンガン飲んで、ガンガン騒いだ
気がついた時には自分のベットの上にいた
その夜の事を先輩に聞くと
客も俺と先輩だけで、いろんなゲームして、一気やエッチな罰ゲームで楽しんだらしい…
『おまえ、スナックの〇美ちゃんのオッパイ揉んで喜んでたじゃん(笑)』って聞かされた時は少しショックだった…

先輩に愚痴れなかったけど、愚痴った以上に気持ちがスッキリした

…美樹さんと話さなきゃ…

数日後、俺は姉さんを通して
美樹さんと待ち合わせした
自分が連絡しても無視される気がしたから…
夕方過ぎ、待ち合わせ場所に行くと美樹さんが居た
『いつも、ファミレスだから、たまには車で話さない?
車の中なら人を気にせずに言いたい事言えるし…』
美樹さんの案に賛成し、俺達は車で夜景場所へ向かった
『しばらく来てなかったよね…何かこうして二人で、この場所に居るのが懐かしく感じるね
懐かしむって事は〇〇との関係は終わりなのかなぁ…
子供の事話しに会ってくれたの?
それとも私が彼女に会い、ついた嘘を怒りたくて?』

『それとも…ただ別れたいって言われるだけなのかな…』
俺は美樹さんに会うまで、美樹さんの嘘を許せないでいた…
でも切なそうな美樹さんの仕種、表情、言葉を聞くと
自分が彼女へついた嘘を思い出し、自分も同罪なんだと…
美樹さんも俺との関係を繋ぎ止める為の嘘だったんだと気がついた…
怒るなんて…できるはずがない…
俺は数日間考えた美樹さんへの気持ちを口にした
『美樹さんが兄貴や姉さん、そして〇〇子にまで会いに行き、話した嘘を聞いた時は正直、腹が立ちました…
美樹さんの事、真剣に考えてたのに裏切られた思いでした…』

『でも今は…その気持ち…
多少は理解してるつもりでいるから…
問題は子供だと思うし…
もし俺の子なら…美樹さんが望むようにしたいと思ってる…
産むにしても、おろすにしても責任はあるから…
今日は、その事をきちんと話し合いたいと思ってる…』
俺が話しを聞き、美樹さんは泣いてしまった

『美樹ね…本当は話さなきゃいけない大事な事があるの…
実はね…〇〇が言ってた4日間の間に一度だけ、元カレに会ったの…
そして…その時にもゴム付けないでエッチしちゃったの…
だから…どっちの子かわからないの…』

最悪な状況な気がした…
『その時は〇〇も彼女と初詣に行って電話に出てくれないし…
淋しかったの…
それで元カレに電話しちゃって…
会った時に彼から寄りを戻したいって言われたけど
〇〇の事、好きだったから断ったんだよ…』
物件を二人で見に行った日に美樹さんから言われた言葉を思い出した…
『まさか…「妊娠」するなんて思ってなかったから…
ごめんなさい…ごめんね・・・』
責任の取り方がわからなくなってしまった…どちらの子かもわからないって…
『美樹は産みたいのかい?』
この質問が間を繋ぐ精一杯の言葉だった

美樹さんは小さく頷くと
『でも………』
「でも」に続く言葉が、泣き声混じりで聞き取れなかった…
責任取って産んでみたら元カレの子だった…なんて考えると俺には無理だった…
『美樹さん、間違いなく俺の子なら責任は取れるけど…
もし違ったらって考えたら
俺、自信ないよ…』
俺の言葉に美樹さんは何も答えてくれなかった
俺も続ける言葉がわからなかった
どちらも言葉にできないまま、沈黙が続いた
考えても考えても自分には無理な気がするだけで…
俺は次第に考える事をヤメ、美樹さんが話すまで黙っていた…

『この前ね…
元カレにも相談したの…
でもね
「他に好きな男ができたからって、婚約破棄までしたくせに
別れた時期に妊娠したから責任取れだなんて…
どっちの子かわかんねーんだろ?
俺が責任取る必要ねーだろ?
おまえは俺を捨てて、相手のところに行ったんだし
相手だって、おまえを受け入れた時点で全てを引き受ける覚悟くらいあるだろ?
新しい彼氏に正直に相談して責任取ってもらえよ」って言われて…』
美樹さんが重い口を開いて、発した言葉は、重く俺にのしかかってきた
元カレの言う通りのような気がした

『婚約破棄』
今頃になって、重くのしかかり、その事の重大さに気がついた気がした…
どんな始まり方であったとしても…
美樹さんが婚約者と別れて、俺と付き合ったのは事実だったから…
『私はね…正直産みたいと思ってるの…
酷い話、どちらの子だとしても、私の子だってのは変わらないし…
産婦人科に行くまでは、産むか迷ってた部分はあったけど
エコーで見せてもらった
この子は生きてたから…
ちゃんと私の中で生きてたから…
産んで育てたい…
〇〇と一緒に…』
返す言葉が見つからない…どうしていいのかすら、わからない…

返す言葉なんて途中から考えられなかった
美樹さんは少しの沈黙の後
『〇〇は今でも美樹の事が好き?』と聞いてきた…
美樹さんのこんな簡単な質問にさえ答えられなかった俺に美樹さんは
『とりあえず、また明日話そうよ
今日はもうこれ以上は無理でしょ?…
今度は「明日」って言って逃げたりしないから…』
美樹さんの優しい言葉にすら答えられなかった…
美樹さんは何も言わずに車を走らせると俺の家と向かった…
帰り道、何も会話のないのを気にした美樹さんが
ほんの少しだけ音楽のボリュームを上げた…
流れる歌が切なかった…


次の日、俺のバイトが終わると美樹さんが迎えに来てくれた
車に乗ると『お腹空いてるでしょ?
お弁当作って来たよ
今日はいつもと違う夜景見に行こうか?』
目的地に着き、弁当を開けると、いい匂いがした

『あんまり作らないから美味しいかわからないけど…
食べてから話をしたって遅くないでしょ?(笑)
美樹にも少しちょうだいね(笑)』
美樹さんは、俺が暗い事に気を使い、話をするまでの間、一生懸命笑顔を振り撒いてくれた
美樹さんにしても彼女にしても、必ず俺より気を回してくれる…
自分が凄くふがいなくて
情けなかった…

帰り道、何も会話のないのを気にした美樹さんが
ほんの少しだけ音楽のボリュームを上げた…
流れる歌が切なかった…

次の日・・・今日はいつもと違う夜景見に行こうか?』
目的地に着き、弁当を開けると、いい匂いがした
『あんまり作らないから美味しいかわからないけど…
食べてから話をしたって遅くないでしょ?(笑)
美樹にも少しちょうだいね(笑)』

お弁当を食べ終え
少し落ち着くと今日は俺から話し始めた
『昨日、帰ってから、ずっと考えてた…
正直…元カレの子かもしれないって可能性はあるけど
あの頃に妊娠したのなら
俺の可能性の方が高いと思うし…
美樹さんが産みたいなら、責任は取るべきだと思ってるよ…
でも、まだ18だし、来月からは専門学生だし、美樹さんと子供を養っていけない…
学生をヤメ、働くとしても養うだけの給料をもらえるのか…わかんないし…』

…正直、もし元カレの子なら責任は持ちたくないと考えていたが、美樹さんを直接目の前にすると言えなかった…

『美樹…今日会えば…
〇〇に断られると思ってた…そしたら美樹…一人でこの先、育ててくつもりでいたから…
うれしい…ありがとうね…』
美樹さんは涙を浮かべながら、俺の首に腕を回し、抱きついた…

…言ってしまった以上、もう後戻りはできない…
専門学校を断念する事…これから先の事…
そして…彼女を諦めなきゃいけないこと…
辛い事ばかりが頭に浮かんだ…

しばらく抱き合った後、美樹さんは仲直りを求めるかのようにキスを求めてきた…何度も何度も…
こうなってしまった以上、俺も美樹さんに答えるように何度もキスをした…

『ねぇ…しばらくしてあげてないね…
いっぱい溜まっちゃったでしょ?』
美樹さんは、そう呟くと、俺の返事を待たず股間へと手を伸ばした
『今日は〇〇のしたい事、したいだけしてあげるね…』
美樹さんは自分の手に唾を垂らすと、俺のをシゴき出した…
内心…精神的に立たないよ…
って思っていたが、見つめられながら、いやらしい音を聞かされ、シゴかれると、そんな事は関係なしに俺は勃起してしまった
『先っぽ…いつもよりデカくなってるね…
どんな事して欲しいの?
美樹に教えて…』
耳元で囁くと同時に、美樹さんの手が止まった

軽く撫でながら
『ねぇ気持ちいい?
しばらくしてあげてない間は、どうしてたの?
我慢してた?
それとも〇〇を想いながら一人でしてた美樹みたいに
〇〇も一人でしてたの?』
美樹さんが俺の目を見つめる…
『我慢してたよ…
ねぇ、美樹…それより早く…しゃぶってよ…』
少し笑みを浮かべると、美樹さんは俺のシートを倒し、手のスピードを上げた
『久しぶりなんだもん
口じゃなく、美樹の中にちょうだい…いいよね』
美樹さんは乾いてきた俺のモノを濡らす程度に口に含み濡らすと、スカートの中のパンツだけを脱ぎ、俺の上にまたがった

美樹さんは自分の手へ
よだれを垂らすと今度は自分の股間をそのよだれで濡らし、俺を迎え入れた
俺の手を頭の上ど押さえつけると
腰を回すように動き始めた
クチュ…クチュと音が聞こえ、美樹さんは身体を少し震わせると、腰の動きを縦に変えた
『〇〇の凄い気持ちいいよ…
おっぱいも舐めてあげるね…』
美樹さんは俺のシャツをめくり、乳首を舐めながら腰を振り続けた
『美樹、もう出そう…体位変えないと…』
俺の言葉を聞かずに、美樹さんは腰を休もうとせず
『中に出していいんだよ』
美樹さんが腰の動きを早くした直後、俺はイッてしまった

美樹さんは、しばらく抜こうとしないで、また何度もキスを求めてきた
抜いた頃には、俺の根元は互いの精液でグチョグチョだった
『ねぇ美樹の事好き?』
美樹さんがパンツをはきながら聞いてきた
精液を拭きながら、頷くと
『ずっと一緒に居ようね…』
と言い、美樹さんはまた俺に抱きつき、優しく微笑んだ
…もう絶対に後には引けない状況…俺は心から笑えなかった…

帰りの車の中で突然
『でも本音は…おろして欲しくないの?…おろした後も一緒に居てくれるなら、美樹、今回は諦めてもいいよ…』
美樹さんが話しだした…

少しの沈黙の後…
『でも美樹…お金ないから無理かな…
もし〇〇が自信ないなら…って話だけど…
もう少し考えてみたいなら、まだ少し時間あるから考えてみて…』
…突然の美樹さんからの言葉…俺にとって、降ってわいたような話しだった…
もし産んで違うよりは、今回は諦めてもらって、おろしてもらった方が…
お金が幾らかかるか、わからないけど、一人暮しの事を考え、少しなら貯金もあるし…
『美樹がそう言ってくれるなら…もう少し考えたい…
金なら少し位なら…俺、貯金あるからさ…
美樹は心配しなくていいよ…』

俺がそう言うと、美樹さんは軽く頷き…そして少し微笑んだ…
家に帰ると、俺の部屋のテーブルの上には兄貴の字で
『大事な話があるから、明日夜7時にいつもの居酒屋で待ってろ
それと〇〇子ちゃんから夜11時頃電話あったぞ』
とメモ書きがあった

その夜は、もし産むなら、美樹さんとの事を親に何て話したらいいのか…
子供を美樹さんが、今回は諦めてもいい…そう言ってくれるなら、おろすべきなのか…
彼女には何て説明したらいいのか…別れたくなかったな…
そんな事を考えると、なかなか寝付けなかった…

次の日の夜、居酒屋へ行くと兄貴は先に待っていた
姉さんもココへ来るらしい…
この前みたいになったら、もう嫌だな…
少し待つと姉さんが来た
3人揃うと兄貴ではなく、姉さんが話しだした
『この前はキツく言い過ぎて、ごめんね
美樹の事、調べてみたよ…
もし美樹の事が好きなら、かなり酷な話になるけど…大丈夫かな?』
何故だろう…姉さんが凄く気まずそうに話していた…
『おまえが大丈夫なら、話すけど、どうする?
大丈夫そうか?』
兄貴も聞いてきた…
『大丈夫だよ…もう何があっても平気な気がする…』

俺の言葉を聞くと
覚悟を決めたように姉さんが話を始めた
『あのね…私の友達が美樹の元カレと友達でね…
どうして、美樹と別れたのか聞いてもらったの…そしたら…』
姉が言葉に詰まるのを見ると兄貴が代わりに話しだした
『その理由がな…騙されたらしいのよ…
元カレに美樹さんが
「子供ができたけど、あなたと結婚する気はない…
おろしたいから、お金ちょうだい」って
元カレは「結婚して、産んで育てよう」って言ったらしいんだが
「絶対嫌…好きじゃないから…お金で精算して別れて」って言って、美樹さんは折れなかったらしい…』

『結局、元カレは費用を美樹さんに渡し
当日は美樹さんの病院へ付き合う約束をしたらしいんだけどな
いざ、当日になると
「ついてこられたら迷惑だから、もうおろした」って言いだしたらしいんだ…
それで元カレが、美樹さんを紹介してくれた人に事情を相談したらな…

「美樹さん…昔、中絶して…子供が産めないよ」
って言われたらしいのよ…
それを聞いて、元カレは美樹さんとは、金も取り戻さないで、別れたらしいんだけどな…
少し話が駆け足だったけど…大丈夫か?』
兄貴の話を聞きながら、俺は膝の震えが途中から止まらなかった…

『それと…美樹さん、婚約もしてなかったみたいだな…
元カレとは去年の暮れじゃなく…夏の終わりには別れてるらしい…』
想像してた以上の事実だった…
『ごめんね…美樹とは昔からの友達だったけど、そんな事知らなかったから…』姉さんは俯いたまま、顔を上げようとしなかった…

『おまえは金の話されてないか?』
俺は昨日の事は、まだ兄貴達には話さなかった…
騙されてたのかも…って考えたら悔しかったから…
昨日の別れ際の微笑みに裏があったのかと思うと…悔しくて、悔しくて仕方なかったから…
最初から…騙されてたのかな…

一人になりたかった…
兄貴達より先に店を出ると家まで歩いた…
道ばたの雪の塊を憎しみを込めて蹴るなんて初めてだった…
…本当に最初からなの?…
騙された事が、まだほんの少し信じられなかった…
だって…たくさん好きって言ってくれたから…
大切に想われてる実感があったから…
美樹さんと一緒に生きようと覚悟を決めてすぐに、こんな事言われても、信じられなかった…
聞きたくなかっかったな…
覚悟が大きかった分、ショックも大きかった…
もう美樹さんにも誰にも会いたくないな…
もう彼女からの電話の事なんて忘れていた…

少し遠回りして帰った頃には家の中は真っ暗だった
部屋に篭ると電気をつける気にすらならなかった…
騙されてるのか確認したくないな…

次の日から数日間、美樹さんとは電話で話す事はあったが、理由を作り会う事はしなかった
真実を聞く事もしなかった…
彼女に電話もしなかった…どんな話も聞きたくなかったから…

せっかくの卒業式は…彼女と何度か廊下で擦れ違ったりしたが、どちらからも目を合わせる事もなく、話す事もなかった…
その夜、行われたクラスの卒業祝いの飲み会へ、彼女は来なかった…
まわりの友達からの声が痛かった…

卒業式の次の日、バイト先の送別会の後、俺は美樹さんに会った…
時間は真夜中を回っていた…
『卒業おめでとう…
この前の話…考えてくれた?』
俺は最後まで美樹さんには知らないフリをしようと決めていた
『その事だけど…産んで欲しいと思ってて…
美樹さんさえ良ければ結婚しようよ…
俺が専門学校を卒業するまでは、兄貴が援助してくれるって言うから…
美樹さんもその方が幸せだと思うし…』
真実は直接聞けないけど、これでハッキリするはず…元々、結婚は覚悟してた事なんだから…
美樹さんの笑顔が少し引き攣っていた気がした…

『本当に産んでいいの?
どっちの子なんて、わかんないんだよ?
もし元カレのだったら、〇〇は一生、私を恨むでしょ…
そんなの私、嫌だよ…
そんなんなら産みたくない…』
美樹さんの声の質が変わっていた
『俺は恨まないし、後悔もしないよ…
美樹となら大丈夫だから』
美樹さんは、こちらを見ず、運転席から横の窓の方を向いてしまった…
俺に背を向けたまま、しばらく沈黙が続いた…

…やっぱり、兄貴達の話は本当なんだ…だから言葉に詰まったんだ…
最初に産みたいって言ってた美樹さんが黙る事で真実が見えてしまった気がした…

美樹さんの機嫌の悪さが車内に充満してるかのように空気が重かった…
『わかった…
〇〇は若いから、まだ事の重さが見えてないんだね…
自分の子じゃなかったら…って不安はあっても、子供を責任持って育てる事は、あまりにも非現実的で混乱してるんだね…
今日はもう帰ろう…もう一度考えてみて…
それでもダメなら、お姉ちゃんに第3者で仲介してもらわなきゃね…』
美樹さんは強気を押し通すと、俺を家に降ろし、帰っていった…
姉さんと美樹さんを直接合わせちゃ…イケナイ…
これ以上、ぐちゃぐちゃになるのは避けなきゃ…

翌日、引越しも近くなってきていた俺は、部屋の荷物を整理していた
途中、途中で手が止まる…
部屋のあちこちから出てくる物…

彼女から初めてもらったプレゼント…
授業中に回した手紙…
安物だけど二人で大切につけていたペアリング…
一緒に聞こうねって買ったCD…
彼女の忘れ物…
そして渡しそびれた合格祝いと卒業祝いを込めて彼女に買ったプレゼント…
込み上げて来る涙は、なかなか止まらなかった…
…〇〇子に会いたいな…
…けど、いまさら…どのツラ下げて会えばいいのか…
一言…ごめんって本心を伝えたかったな…

ある程度、箱に詰め終わり、休んでいると
部屋をノックするのと同時に兄貴が入ってきた
…ノック必要ねーじゃん…
『どうだ?あれから美樹さんと話せたか?』
俺は兄貴に、あの後にあった事を伝えた…
『知らないフリか…難しい事だぞ?大丈夫か?
言いにくいだろうが、ハッキリ言わねーと、このままズルズル、美樹さんに騙されるぞ?
ウチの奴と美樹さんを今、会わせる訳にもいかねーし…
上手くやらなきゃ、余計にまわりを傷付けるんだからな
わかってるだろうけど、上手くやれよ…』
兄貴は俺の肩をポンと一度叩くと部屋から出ていった

次の日、俺は友達と入学式に着る服を選びに街へ出た
『〇〇子と別れたのか?みんな気にしてるぞ』って言われたが、はぐらかした…
友達もそれ以上は追求してこなかった…
家に帰り、部屋へ入ると小さな見覚えのない段ボールがあった
箱を開けると彼女に貸してたりした物と
新品のネクタイが入っていた…
下に降り、姉さんに聞くと
『30分位前に来て
「これ〇〇君の物です
渡しそびれちゃったんで、渡しといてください」って置いてったわよ
美樹のことも大事だけど、〇〇子ちゃんの事、ちゃんと考えてる?考えてあげなきゃ、可哀相だよ…』

彼女が来ていた…
擦れ違ってしまったけど…
まだ可能性はあるのかな…
早く美樹さんとハッキリさせて、彼女ともう一度会わなきゃ…
俺は彼女からのネクタイを大切にクローゼットへ保管し、美樹さんへ電話し、待ち合わせた
会うと美樹さんは車をホテルへと走らせた
空いている部屋を適当に選び部屋へ入ると美樹さんは俺を後ろから抱きしめ
『会いたかった…いま、お風呂溜めるね』
と囁くと風呂場へと向かっていった

…今日で美樹さんと会うのは最後にしよう…もう終わらせなきゃ…
俺は煙草を吸い、気持ちを落ち着かせた

この頃には別れたい気持ちは固まっていた
ただ…最後に目茶苦茶にしてやりたいって欲求もあった…
どうせ妊娠しないんだから…

俺は美樹の居る浴室へと向かった
泡ブロの泡をシャワーで立てていた美樹さんに対し
『ねぇ…美樹、しゃぶってよ…』
俺は風呂のふちに座り、美樹さんにしゃぶらせ、立たせてもらうと、美樹さんに壁に手をつかせ、パンツを脱がし、バックから関係なしに入れた…
『痛っ』
美樹さんが小さく呟く…
『すぐ濡れるから大丈夫でしょ?』
俺は美樹さんを無視し、ひたすら腰を振り、イク事すら告げずに中に出した

『もう自分だけ気持ち良くなってズルイよ…
今度はベットでたくさんしてね…』
美樹さんは無理矢理した事には何も言わずアソコを洗い流すと部屋へ戻った
俺がシャワー浴び、部屋へ戻ると美樹さんはビールに口をつけ、手には新品のバイブを持っていた
『また買っちゃった
今度はこれで美樹をたくさんイジメてね』
ビールを飲み干し、美樹さんは電気を消した
俺は美樹さんをバックのスタイルにし、アソコにバイブをくわえさせると、自分の指をよだれで濡らし、美樹さんのお尻へ指をブチ込み、ひたすら動かし続けた

バイブと同時にしつこく動かし続けた
美樹さんがイッても無視し、叫ぼうとも動かした
声が枯れ、途切れたところで仰向けにし
何も言わずに正常位で入れた
明かりを少し上げると、美樹さんの口からは、よだれがこぼれていた
美樹さんの腰を押さえつけ、何度も出し入れしながら腰を振り続けた…
二度目も中に出した
美樹さんは俺のモノが動く度にビクンビクンと小刻みに震えていた
美樹さんの肩を抱き、少し休んだ後、美樹さんの作った泡ブロに二人で浸かった
美樹さんは俺の体を洗い流しながら
『よかったよ…』と後ろから抱きついた…

風呂から上がり、ビールを飲む美樹さんに俺は話を始めた…
『美樹…俺は子供を認知しようと思ったからこそ…
責任を取るつもりで、美樹を選んだ…
でも美樹が…おろしたいなら、恋愛は続けられない…
子供を育てるつもりはあっても、どちらのかも判らない子供を中絶する金を出す程、俺は優しくないから…』
美樹さんは俺の言葉を聞くと飲んでいたビールをテーブルに置いた
『もう知ってるんでしょ?
…昨日、元カレが会いに来たの…
「もう妊娠の嘘で金巻き上げるの…もうそんな馬鹿な事は、やめろって…」
〇〇は、いつから知ってたの?…』

俺の顔色を伺うと
『知ってたんだ…
知ってるから「産んで」って簡単に言えたの…?
それとも知らなくても覚悟してたの?
嘘って知りながら、どうして黙ってたの?
ねぇ「どうして?」って聞いてるの!
答えてよ!!』
その瞬間…美樹さんはテーブルに置いていた飲みかけのビールを俺の方に投げつけた
肩に当たったビール缶よりも、そんな美樹さんを見た事の方が辛かった…
美樹さんは冷蔵庫の方へ歩き出し、新しいビールにまた口をつけると
『知ってるんなら…どうして会ったりするのよ…
どうして、普段と変わりなく接してくれるの?』

美樹さんは答えようとしない俺に腹を立てていた
『…つい最近、姉さんから聞かされたよ…
でも、聞いた話の全てが真実だと思ってないし
他人の話よりも美樹と会ってる時の
美樹の言葉や優しさの方が、俺にとっては真実だったから…
他人の言葉よりも…ずっと身近に美樹が居てくれたから…
だから何も言わなかった…
…でも、妊娠してないのは真実みたいだね…
美樹の口から直接は聞きたくなかったな…』
俺が話す間、美樹さんは一度も目を合わせてくれなかった…
話の途中で、美樹さんはビールを飲んだまま、俺に背を向けてしまった…

背中を丸めながら、背を向ける美樹さんの態度が今まで1番辛かった…
『話が嘘でも真実でも…
本当は今日、美樹さんに
「さよなら」する覚悟で会ったんだ…
凄く辛い決断だけど、これ以上、ぐちゃぐちゃにしたくないし…
まわりの人に迷惑をかけたくないし…これ以上、傷付けたりしたくないから…
最後まで知らないフリをしてたかった…
1番……これ以上傷付いて欲しくないのは美樹さんだったから…
大切な女性だから…
年上の綺麗な…俺の憧れる女性の「美樹さん」のままで居て欲しかった…
こんな終わり方にしたくなかったし…』

『始まりが…あれだもん…綺麗に終われる訳ないじゃん…
子供なんていないよ…
でも…お金が欲しい訳じゃなかったの…
〇〇に振り向いて欲しかったの…
どんなに「好き」って伝えても、〇〇から返ってくる「好き」は気持ちが、こもってない気がしたから…

そんな時に友達が夏にあった妊娠騒ぎを今頃聞きつけ、〇〇の姉さんに勘違いして話したから…妊娠騒ぎを利用しちゃったの…

私は、ただ…〇〇に彼女と別れて欲しかったの…
ちゃんと美樹と付き合って欲しかったの…
ずっと一緒に居たかったの…
ごめん…ごめんね…ごめんなさい…』

俺も美樹さんも
しばらくは言葉を出しませんでした…
これ以上、俺が話せば揚げ足を取るだけだし
美樹さんが話せば、言い訳を重ねるだけだったから…
二人とも…これ以上、どんなに話しても終わりなんだなって…終わりを確信してたんだと思う…

着替えて、ホテルを出た後、美樹さんの車は俺が運転した
何も言わずに俺は、高速を走り、美樹さんといつか一緒に歩いた運河へと車を走らせた…
雪溶けの時期の運河は前より綺麗だった…美樹さんは何も言わず、車を降り、前に一緒に歩いた辺りをゆっくり、懐かしそうに、一人歩き出した…

『懐かしいね…
前は仲良く、手を繋いで一緒に歩けたのにね…
ごめんなさい…』
美樹さんは、俺のコートの袖をしがみつくように掴み、また一言
『ごめんね…』
と言うと小走りで車へ戻っていった…
俺が缶コーヒーを二つ買った後、車に戻ると、美樹さんは、まだ泣いていた…

自分達の住むへ戻ると、いつも一緒に見た夜景の場所へ車を走らせた…
雪が少し降っていて、夜景がぼやけていた…

最後は駅に車を走らせた
『ここで別れよう…
美樹さん…色々あったけど、この数ヶ月、楽しかったです…
じゃあ…元気で…
さようなら…』

俺の言葉に美樹さんが
泣き崩れたけど、俺は車をあとにした…
そこで、振り返ると情に流され、また許してしまいそうだったから…

翌日、俺は兄貴と姉さんに美樹さんと終わった事を伝えた…
姉さんから一言…
『美樹が迷惑かけて、ごめんね…』と言われた…

…迷惑かけたのは俺なのに…

それから5日くらいあとに、彼女の家に話をしようと彼女の忘れ物を口実に彼女の家へ向かったが、彼女はもう地元を離れた後だった…
忘れ物の中に彼女へのプレゼントを入れ、彼女のお母さんに渡し、彼女の家をあとにした…

彼女と連絡を取る方法は、いくらでもあったけど
本当のことを伝えられないなら、会っちゃいけない気がしたから…
俺から連絡は取らなかった…

美樹さんからは、あれ以来もう連絡が来る事はなかった…
結局、この数ヶ月…さみしさだけが残る恋愛になってしまった…

…いつかは…きっと…良い思い出に変わるのかな…

それから数日後…
…俺も地元を離れた…

そして…俺と彼女、そして美樹さんの三角関係も終わった…


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