牝獣(ひんじゅう)となりて女史哭(な)く牡丹の夜 ——日野草城
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25-11-05 11:20
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「ちょっ、ヒナちゃん、待って、シャワー浴びてないよ!」 鈴木くんの慌てた声が響く。 「そんなの良いから、早くハメてっ!」 愛里沙は、イラッとしたような声で言う。こんなにも火がついてしまっていることに、ただただ驚かされた。 「う、うん。コンドームは」 彼が言い終わらないうちに、 「そんなの良いから、早く入れてっ!」 と、愛里沙は焦れきったような声で指示をする。もう、命令しているような口ぶりだ。 「は、はいっ」 「うぅっ、あぁ、これ、これが欲しかったのぉ」 「あぁ、ヒナちゃん……凄い……」 想像していたものとはまるで違う音声だ。これでは、まるで愛里沙が本気になっているみたいだ。営業活動……常連にお金を使わせるための、枕営業……そんなことだと思っていた。 「動いて、メチャクチャにして」 愛里沙は、今までに聞いたことのない声色で指示をしている。甘えたような、媚びたような声だ。 「う、うん」 鈴木くんは、圧倒されている感じだ。この前まで童貞だったので、女性に対して慣れていないのだと思う。 「あっ、アンッ、すごいっ、もっと強くっ!」 愛里沙は、あっけなくあえぎ始めた。僕とセックスしているときとはまるで違う声だ。気持ちよさそうで、切羽詰まったようでもある。 「ダ、ダメです、もう出ちゃいそう」 鈴木くんは、あっさりと限界を迎えたようだ。 「出してっ! 中に出してっ! 好きっ、鈴木くん大好きっ!」 「あぁ、ヒナちゃん、夢みたいだよ。大好きだ」 二人は、こんなにも激しいセックスを続けていく。悪夢としか言えない状況に、僕は脚が震えてしまった。今日、帰宅したとき、愛里沙はいつも通りだった。怪しいところなんてなかったし、良い笑顔で出迎えてくれた。 まさか、数時間前にこんな酷い裏切りをしていたなんて、とても信じられないと思ってしまう。 「好きっ、出してっ! 鈴木くん、大好きっ!」 とろけきった声で叫ぶ愛里沙。そして、鈴木くんはうめきながら射精を始めた。 「ヒィッ、うぅ、あぁ、出てる、熱いよ……好き、早く抱いて欲しかった……」 愛里沙は、甘えたような声で言う。とても演技とは思えないし、枕営業でここまでする必要もないと思う。 「お、俺もだよ。会いたかった。夢みたいだ。ヒナちゃん、ありがとう」 鈴木くんは、感動しているような口ぶりだ。無理もないと思う。推しの女の子にここまでしてもらえたら、男として最高の気持ちになるはずだ。 「愛里沙って呼んでほしい……本名だよ」 「う、うん。愛里沙ちゃん、好きだよ」 「愛里沙って呼んで」 「えっ、うん。愛里沙、大好きだ」 「私も大好き。とおる君って呼んでも良い?」 「もちろん!」 「フフ、大好きだよ」 二人は甘い会話を続ける。これは、これまでとは違うと思う。明らかに感情が入ってしまっている。止めないと……そう思っているのに、どうしても興奮が大きくなってしまう。 本名まで教えてしまった……明らかに今までの枕営業的なものとは違うと思う。やっぱり、本気になっている? 不安な気持ちばかりが膨らんでいく。 「じゃあ、お風呂入ろっか」 「うん」 そう言って、会話が聞こえなくなった。一緒にお風呂に入っている……嫉妬で身もだえしてしまいそうだ。愛里沙は、彼のどこがそんなに気に入ったのだろう? この前のネットカフェでのやりとりを見ている限り、最初は愛里沙もそこまで彼のことを好きではなかったと思う。 他の常連と同じように、お金を搾り取るための下ごしらえをしていた感じだった。でも、セックスをしたことで、急に態度が変わったように思える。 でも、セックスが良かったくらいで、そこまで一気に堕ちるものだろうか? 彼のルックスは、ブサイクではないが取り立ててイケメンでもなかった。親の遺産があるのでお金は多少持っている感じだったが、それでも愛里沙がこんなにも彼に夢中になるのが理解出来ない。 しばらく無音状態が続く。イチャイチャしながら、一緒にお風呂に入っているのだろうか? 愛里沙と一緒に風呂に入ったのなんて、もう何年も前だ。嫉妬で胸が苦しい。 さすがに少し早送りをして音声を探った。すると、二人の声がまた聞こえてきた。 「なにか飲む?」 鈴木くんが優しい口調で聞く。すっかりと落ち着いた感じになっていて、さっきまでのオドオドした雰囲気はない。 「大丈夫。それより、エッチしよ」 愛里沙は、まだ興奮した声だ。 「えっ? お風呂でもしたでしょ? 少し休まない?」 鈴木くんは、結構驚いている。無理もないと思う。 「来て……今度は後ろからして欲しいの。もう無理って言っても、そのまま犯して……とおる君、本当に大好きだよ」 愛里沙は、すっかりと声が発情しているような雰囲気だ。どこまで本気なんだろう? 「愛里沙……俺も大好きだよ。こんな事が出来るなんて、夢みたいだ」 「あぁっ、固いっ、とおる、もっとっ! 奥まで突き刺してっ!」 愛里沙は、泣いているような声で叫ぶ。かすかに肉がぶつかるような鈍い音も聞こえてくるし、鈴木くんの荒い息遣いも聞こえる。 「愛里沙、好きだ。もっと感じてっ!」 鈴木くんも、興奮状態になったようだ。 「あっ、アンッ、そこっ、もっとっ! うぅっ、イクっ、イッちゃうっ、とおる、イッちゃうっ!」 愛里沙は、すぐにオルガズムに達した。もう、身体中が敏感になってしまっているみたいだ。僕とのセックスの時も、気持ちよさそうにあえいでくれる。 でも、鈴木くんとのセックスと比べると、圧倒的に負けている。愛里沙は、彼に本気になっているのではないか? 僕への愛情は消えてしまったのではないか? そんな心配で汗が噴き出てくる。 「イクっ、イクっ、とおる、愛してるっ!」 愛里沙は、そんな言葉まで叫んでしまった。 「愛里沙、愛してる。夢みたいだ」 鈴木くんも感動したような声を漏らし続けている。こんなに簡単に、愛里沙は心も身体も堕とされてしまったのだろうか? いっそ、これが枕営業であってほしいと思ってしまう。 「イクよ、出すから。愛里沙、愛してる」 「来てっ! とおる、愛してるっ! 溢れさせてっ!」 愛里沙は声が震えている。そして、鈴木くんがうめきながら射精すると、愛里沙のくぐもったようなうめき声が響いた。あまりにも激しいセックスだと思う……。そんなに違うのだろうか? 「大丈夫?」 「大丈夫じゃない……腰抜けちゃった」 「なにか飲むもの持ってくるね」 「うん……」 二人の甘い会話が続く。 「愛里沙ちゃん、俺の恋人になってくれるの?」 鈴木くんが、恐る恐るという感じで聞く。 「もうなってるよ。愛里沙はとおる君の彼女だよ」 「ほ、本当に?」 「うん。私じゃ嫌かな?」 「そんなことない! 嬉しいよ!」 「良かった……愛してる」 「俺もだよ。愛してる」 聞いているのが辛い会話だ。二人は、本当に恋人になってしまったみたいだ……。 「愛里沙ちゃん……他のお客さんとも会ってるの? お店の外とかで」 鈴木くんが不安そうに聞く。 「うん。でも、エッチしたのは鈴木くんだけだよ」 「良かった……」 愛里沙は、あっさりとウソをついた。愛里沙は、どうするつもりなんだろう? 僕と結婚しているのに、彼とはどうやって付き合っていくのだろう? 「あっ、愛里沙ちゃん……そんな」 戸惑ったような彼の声。 「もう充分だよ……ありがとう」 「ダメ。まだ足りないの。ねぇ、キスしながらして。最後まで、キス止めちゃダメ」 愛里沙の甘えた声が響く。 「わかった。愛里沙、愛してる」 「うぅっ、あぁ、本当に素敵だよ。こんなの初めて。今までで一番だよ」 愛里沙は聞きたくないような言葉を口にしている。本気なんだろうか? そして、会話は消えて愛里沙のうめき声やベッドがきしむような音だけが響く。映像が見たいと思ってしまうが、見られなくて良かったのかもしれない……。 ひときわ大きなうめき声が響き、ベッドがきしむような音が消えた。 「すごかった……キスってすごいんだね……」 愛里沙の甘えたような声がする。 「大丈夫? 腰抜けてる?」 心配そうな彼。もう、何回セックスをしたのだろう? すっかりと、彼は彼氏気取りだ。と言うか、本当に彼氏なんだと思う。僕との結婚のことを隠したまま、彼と交際するのだろうか? 「大丈夫だよ。お腹空いたね。なんか食べよっか」 「うん。メニュー持ってくる」 二人は、ごく普通の恋人同士みたいな会話を続ける。会話は、基本的には愛里沙が話しかけることが多い。やっぱり、鈴木くんは女性との交際経験もないみたいだ。 「付き合うって、どんな風にしたらいいのかな? 俺、経験ないから……」 鈴木くんがそんな質問を始めた。 「ラインしたり、休みの時にデートしたりで良いんじゃないかな?」 「毎日会えたりするの?」 「毎日は難しいかも……。お店もあるし、お客さんとも会ったりしてるから」 「そ、そっか、そうだよね」 「他のお客さんと外で会うの、イヤ?」 「それは……そうだけど……」 「じゃあ、徐々にやめるね。お客さん少なくなっちゃうかもしれないけど、その分とおるとエッチ出来るしね」 「うん!」 嬉しそうな鈴木くん。やっぱり、結婚のことは隠し通すみたいだ。そんなことが出来るんだろうか? そして、僕に隠し通せるものなんだろうか? この先のことを考えると、やっぱり不安だ。でも、興奮してしまう気持ちを抑えることが出来ない。 二人は、楽しそうに会話を続けている。録音は、唐突に終わってしまった。バッテリー切れ? 録音が続くと、意外に駆動時間が短いみたいだ。 僕は、グッタリとしてしまった。もう、どうしたら良いのかアイデアも出てこない。そっと寝室に戻り、愛里沙の寝顔を見ながらベッドに潜り込んだ。 朝になると、 「おはよ~。今コーヒー淹れるね」 と、愛里沙は今日はツインテールだ。メチャクチャ可愛くて、朝からドキドキしてしまう。小柄でロリっぽい体型の愛里沙は、23歳の実年齢通りに見られることが少ない。 とくにこんな風にツインテールにしていると、学生にしか見えないと思う。 今日も可愛いねと言うと、 「へへ、嬉しいな。直弘も格好いいよ」 と、良い笑顔で言ってくれる。正直、まったく怪しい部分がない。まさか、こんなにも可愛らしくてあどけない彼女が浮気しているなんて、普通は見抜けないと思う。 僕は、今日は早いの? と聞いた。 「え? どうして? いつも通りだと思うけど」 愛里沙は、特に動揺もなく答える。僕は、外食しようかと伝えた。愛里沙を奪われるかもしれない危機感で、そんなことを言ったのだと思う。 「うん。良いね、楽しみ!」
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